【アナリスト水田雅展の銘柄分析】アルコニックスは日柄調整一巡、16年3月期業績増額含みも評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 アルコニックス<3036>(東1)は「非鉄金属の総合商社」を目指している。株価は日柄調整が一巡して1800円近辺でのモミ合いから上放れた。16年3月期業績の会社予想は増額含みであり、依然として指標面の割安感が強い。14年12月高値2107円を試す展開だろう。

 軽金属・銅製品(伸銅品、銅管、アルミフィンなど)、電子・機能材(レアメタル・レアアース、チタン・ニッケル製品など)、非鉄原料(アルミ・亜鉛地金など)、建設・産業資材(配管機材など)を取り扱う非鉄金属商社である。

 レアメタル分野に強みを持つことも特徴だが、中期成長に向けては商社機能と製造業を融合した「非鉄金属の総合商社」を目指し、M&Aも積極活用して、非鉄金属の周辺分野も含めた川上(製造)~川中(流通)~川下(問屋)を網羅するビジネス展開を推進している。

 13年1月金属・化成品メーカーの米ユニバーティカル社を子会社化、13年3月アルミ合金スクラップ販売の大阪アルミセンターを子会社化、13年4月産業機械用精密加工部品メーカーの大羽精研を子会社化、14年4月住宅建設関連資材メーカーのケイ・マックを持分法適用関連会社化した。

 14年11月には子会社アルミ銅センター(大阪アルミセンターが14年9月1日付で商号変更)が、稲田商会(福岡県北九州市)の銅リサイクル事業を譲り受けた。

 なお15年3月に非鉄金属専門商社の平和金属(大阪市)の株式60.5%を新たに取得(4月30日予定、現時点で1%を保有しているため今回の株式取得後の出資比率は61.5%)して連結子会社化すると発表していたが、4月28日に、株式譲渡契約書における具体的な詳細取り決めについて協議を継続中のため、株式取得時期が予定より遅れていると発表した。今後の株式取得時期等詳細については確定次第公表するとしている。

 5月15日に発表した前期(15年3月期)の連結業績は売上高が前々期比9.7%増の2015億43百万円、営業利益が同31.6%増の45億84百万円、経常利益が同44.6%増の52億05百万円、純利益が同11.5%増の35億05百万円だった。計画を上回る増収増益だった。

 配当予想については5月15日に期末4円を増額修正して年間40円(第2四半期末18円、期末22円)とした。14年8月1日付の株式2分割を考慮して前期の年間65円を年間32円50銭に換算すると、実質的に前期比7円50銭増配となる。配当性向は14.6%である。ROEは同2.5ポイント低下して14.9%、自己資本比率は同5.0ポイント上昇して29.3%となった。

 売上面ではスマホ・タブレット端末向け電子材料関連、海外の自動車関連や半導体関連などが好調に推移し、利益面では貸倒引当金戻入や基幹システムの減価償却終了による販管費の減少、ケイ・マックの持分法適用関連会社化に伴う負ののれんを含む持分法投資利益も寄与して大幅増益だった。

 セグメント別の経常利益は、軽金属・銅製品事業が持分法投資利益も寄与して同81.9%増の30億03百万円、電子・機能材料事業が連結子会社の収益増も寄与して同2.4%増の17億34百万円、非鉄原料事業が同4.6倍の2億68百万円、建設・産業資材事業が同8.1%増の2億07百万円だった。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)484億04百万円、第2四半期(7月~9月)485億96百万円、第3四半期(10月~12月)546億06百万円、第4四半期(1月~3月)499億37百万円、経常利益は第1四半期17億13百万円、第2四半期13億95百万円、第3四半期13億02百万円、第4四半期7億95百万円だった。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(5月15日公表)は、売上高が前期比7.2%増の2160億円、営業利益が同5.1%減の43億50百万円、経常利益が同7.8%減の48億円、純利益が同14.1%増の40億円、配当予想が同4円増配の年間44円(第2四半期末22円、期末22円)としている。

 売上面では自動車関連、半導体関連、IT関連を中心に好調に推移して増収見込みだが、経常利益に関してはケイ・マックの持分法適用関連会社化に伴う負ののれん発生益6億28百万円の一巡で減益見込みとしている。純利益については新たなM&Aによる収益増加が寄与して増益見込みだ。そして会社予想は保守的な印象が強く増額含みだろう。

 5月15日に新中期経営計画(16年3月期~18年3月期)を発表した。1年ごとに見直すローリング方式で、経営目標値として18年3月期の経常利益65億円超、純利益43億円超、ROE13~15%程度、NET/DER1.0~1.3倍程度を掲げ、3年間の投融資総額はM&Aを中心に200億円の計画とした。

 なおセグメント別には、軽金属・銅製品が売上高982億円、経常利益34億50百万円、電子・機能材が売上高1008億円、経常利益23億80百万円、非鉄原料が売上高360億円、経常利益3億10百万円、建設・産業資材が売上高180億円、経常利益3億60百万円としている。

 全体戦略としては、業容拡大に向けた川上・川中・川下等のM&A推進および新規事業投資案件の発掘推進、成長著しいレアメタルおよび電子・機能材料分野のさらなる強化、アルコニックスグループの商いの基盤をなすアルミ・銅分野の維持・拡大、環境問題に対応したリサイクル分野の強化、海外店ネットワークのさらなる充実による顧客ニーズ対応および地場取引や三国間取引の拡大に向けた商社機能の発揮としている。

 積極的なM&A戦略も奏功し、グループのシナジー効果を高めて中期的に収益拡大基調だろう。

 株価の動きを見ると、1800円近辺でのモミ合いから上放れて水準切り上げの展開だ。日柄調整が一巡したようだ。5月18日の年初来高値2031円から一旦反落したが、素早く切り返して25日は1988円まで上伸した。

 5月25日の終値1970円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS312円19銭で算出)は6~7倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間44円で算出)は2.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2053円83銭で算出)は1.0倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると26週移動平均線がサポートラインとなって強基調に回帰した。16年3月期業績は増額含みであり、依然として指標面の割安感が強い。14年12月高値2107円を試す展開だろう。

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