クレスコは基本方針として「信頼と成長」を掲げ、前期業績は最高益更新を達成

■5ケ年計画の『次世代クレスコ』における最終年度の目標数値を1年前倒しで達成

 クレスコ<2162>(東1)は、前15年3月期、基本方針として「信頼と成長」を掲げ、前15年3月期業績は最高益更新を達成した。

 前15年3月期連結業績は、売上高250億63百万円(14年3月期比13.8%増)、営業利益20億13百万円(40.8%増)、経常利益22億40百万円(同33.6%増)、純利益14億05百万円(同49.3%増)。これまでの過去最高純利益は、05年3月期の9億66百万円。

 セグメント別売上高は、ソフトウェア開発事業では、金融・保険分野103億30百万円(同31.6%増)、公共・サービス分野50億47百万円(同1.3%増)、流通・その他の分野53億26百万円(同4.4%減)であった。
 組込型ソフトウェア開発事業では、通信システム分野9億64百万円(同9.7%減)、カーエレクトロニクス分野15億55百万円(同93.4%増)、情報家電等・その他分野17億20百万円(同4.1%増)。
 商品・製品販売1億17百万円(同18.6%増)。

 同社は2011年、次なるクレスコの成長ステージを目指して、5ケ年計画の『次世代クレスコ』を策定し、1)中堅IT企業トップリーグ入り、2)現事業での卓越性、3)オリジナル製品およびサービスの開拓、4)ユニークな子会社群による複合IT企業、5)営業拠点の広域化、6)海外進出、7)技術研究所設立、8)女性が活躍できる職場、9)人材育成のモデル企業、10)クレスコブランドの浸透の10項目にわたるテーマに取組み、改革を進めてきた。
また、『次世代クレスコ』では、クレスコグループの数値目標として、「売上高250億円、営業利益20億円」を掲げていたが、前15年3月期連結業績において1年前倒しで達成した。

前期の最高益更新の理由は、景気回復が後押ししたことによる受注増や稼働率増加の他、『次世代クレスコ』の推進や品質管理やプロジェクト管理を徹底したことによるプロジェクト収支の改善が大きく寄与している。また、グループ連携の強化も業績に大きく貢献している。子会社や持ち分法適用会社と協業し、新ソリューションの開発やクロス営業を推進するなど、良い方向で展開した。
受注増に伴うリソース(開発要員)確保は、重点課題であり、ビジネスパートナー(協力会社)との連携強化の他、ニアショア開発、オフショア開発に注力した。ニアショア開発拠点は、自社の開発センター(北海道)や九州、北陸の子会社を中心に行った。オフショア開発(海外分散開発)については、中国、ベトナムでの開発を行った。

■クレスコ単体の業況

 ビジネスソフトウェア開発では、金融関連の開発が好調であった。また、スマートフォン、タブレットPC関連の新技術を活用した案件が増加した。組込み型ソフトウェア開発は、国内メーカー向けのカーエレクトロニクス関連の開発が拡大した。デジタルテレビ関連は、メーカーはかなり厳しい状況であったが、その中で案件規模を維持したことでシェアはアップした。

オリジナル製品については、SAP業務アプリケーションのモバイル化対応のMobick(モビック)、AWSをベースとしたクラウドソリューションのCreage(クレアージュ)、ワンランク上のオンラインストレージサービス「インテリジェントフォルダ」の新製品「インテリジェントフォルダExpress」、Beaconを活用した点呼ソリューション「みんなのてんこ」などがある。クラウド関連のソリューションは、大きな数字が出るには至っていないが、将来的には市場の期待が大きい分野であり、今後も継続する。

 今期の課題としては、オリジナル製品・サービスの拡販、先端技術の取り込みと品質管理の徹底、開発要員の確保の3点があるが、今期もリソース不足が予想されることから、開発要員の確保は最重要な継続課題としている。

■子会社の業況

 クレスコ・イーソリューションは、SAP関連のソリューション販売が伸び悩むなど、苦戦したが、今年4月1日、クレスコが100%子会社化したエス・アイ・サービスと連携し、ERP事業の更なる成長を目指している。ワイヤレステクノロジーとクレスコ・アイディーは、4月1日付で、統合して、クレスコワイヤレスに社名変更し、近距離無線通信技術の専門会社として新たなスタートを切った。アイオスは、収益性が向上、関西では、クレスコと協業している。クレスコ九州は、地場案件の他、クレスコのニアショア開発拠点として堅調に推移。クレスコ北陸は、クラウド提供型のシステム開発に着手し、外食向けのグーグルを使ったシステムのサービスを展開中だ。科礼斯軟件(上海)は、赤字幅縮小し、今期黒字化の見通し。制御系システムが強みのシースリーは、堅調も推移している。ネットワーク技術を売りとするクリエイティブジャパンは、子会社化して2年経過するが、増収増益基調で、貢献度が大きい。

■今期の取組について(代表取締役社長 根元浩幸氏 談)

2015年度は、次世代クレスコにつきましては、今期は、計画の最終年度にあたる5年目ということですので、ファイナルに相応しい施策を実行していきます。基本方針の中では、原点回帰、「強みの強化」と「お客様へ貢献」と謳っています。我々の強みとは、『技術と品質』というところですが、部門毎にそれぞれ特色を持っていますので、そこをもっと磨きをかけて、強みを更に強化し、お客様に貢献しようと思っています。これに加え、プロジェクト管理と品質管理の力量を磨き上げることで、収益性の更なる向上を目指します。
しかし、事業を拡大するにあたり、忘れてはいけないのは、内部統制とコンプライアンスの強化です。組織マネジメントの実践と適正な業務遂行を通して、社員にあるべき姿を伝え、強い会社に鍛え上げていきたい、と考えています。対処すべき課題は、たくさんありますが、私として特に意識して取り組むべきことは5点あります。

1点目は企業グループおよび他社との協業・連携強化です。我々の業界自体が、「協業・連携」によるビジネスモデルの強化に積極的になっています。自社単独では、ビジネスを大きくすることは出来ません。協業ビジネスは意識してやっていきたいと思っています。

2点目に、利益の出る体質・体制への刷新です。これには、ビジネスモデルの見直しが中心になります。我々は、知財、半製品、ツールといった資産をたくさん蓄えていますので、これらを活用して、付加価値を生み出すソリューションサービスを展開していきます。

3点目は、事業活動を支える人材の確保および育成です。特に、技術専門職の育成に注力していこうと思っています。ここ10年間位、プロジェクトマネージャーの育成に重点を置いてきましたが、先端技術や新たなテクノロジーは次から次へと変化しますので、技術専門職をもっと育てる必要があります。

4点目は、開発および営業体制の強化です。ニアショア開発、オフショア開発の継続はもとより、M&Aによる営業拠点の広域化や開発体制の強化を実施したいと思っています。

5点目は、第3プラットフォーム関連ビジネスの拡充です。現在、技術研究所を中心に行っています。ここ2年位は、IoTビジネスへの進出を目指し、近距離無線通信を核とした研究開発を行っています。今年に入り、今話題のBeaconやスマートフォンなどを使ったサービスをリリースしました。
しかし、Beaconをどのように使ったらお客様のイノベーションに貢献できるかは、未知数であり、まだまだ実験段階です。お客様との実証実験を繰り返しながら商用化を進めています。

3月にリリースした点呼自動化ソリューション「みんなのてんこ」は、今お話しした取組みの成果です。テレビ番組(テレビ東京ワールドビジネスサテライト「トレたま」コーナー3月11日放映分)でも紹介されました。今期、技術研究所の予算は、昨年度に比較して、1.5倍程度になっています。今後は、Beacon、IoTに加え、人工知能という機械学習のテーマにもチャレンジします。技術の進歩が著しいですので、後れを取らぬよう取り組んでいきたいと思っています。

■今期の見通し

 4月のスタートは順調に推移しています。今期16年3月期連結業績予想は、売上高270億円(前期比7.7%増)、営業利益22億円(9.3%増)、経常利益24億円(同7.1%増)、純利益15億70百万円(同11.7%増)と今期も最高益更新を見込んでいます。公表値は、売上高、営業利益共に2ケタ成長ではないですが、2ケタ成長を目指す勢いで全社一丸、頑張っていきます。十分に達成できる環境と認識しています。

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