JSPは調整一巡、21年3月期は新型コロナ影響だが後半の需要回復期待

 JSP<7942>(東1)は発泡プラスチック製品大手である。中期成長ドライバーとして、自動車部品用ピーブロックなど高機能・高付加価値製品の拡販を推進している。21年3月期は新型コロナウイルスの影響で大幅減収減益予想としている。第2四半期累計の利益は計画に対して上振れたが、進捗率がやや低水準のため、後半の需要回復を期待したい。株価は安値圏でモミ合う形だが、調整一巡して出直りを期待したい。

■発泡プラスチック製品大手

 発泡プラスチック製品の大手である。押出発泡技術をベースとするポリスチレン・ポリエチレン・ポリプロピレンシートなどの押出事業(産業用包装材、食品用包装材、広告用ディスプレー材、住宅用断熱材など)、ビーズ発泡技術をベースとする発泡ポリプロピレン・発泡ポリエチレン・発泡性ポリスチレン製品などのビーズ事業(自動車衝撃緩衝材、家電製品緩衝材、IT製品輸送用通い函など)、その他事業(一般包材など)を展開している。

 20年3月期のセグメント別売上高構成比は押出事業35%、ビーズ事業60%、その他5%、営業利益構成比(連結調整前)は押出事業37%、ビーズ事業61%、その他2%だった。収益は販売数量、為替、原油価格、原料価格と販売価格の差であるスプレッド、プロダクトミックスなどが影響する。

■自動車部品用ピーブロック拡販など成長戦略推進

 長期ビジョン「VISION2027」で、目標値に28年3月期売上高1800億円、営業利益180億円、営業利益率10%を掲げ、成長戦略を推進している。

 基本方針は、差異化戦略(押出事業のスチレンペーパー、ミラボード、FPD関連保護材ミラマットエース、高断熱材ミラフォーム、ビーズ事業のピーブロック、エレンボールNEOなど)の推進、成長戦略(4つの成長エンジン=自動車部品、建築住宅断熱材、FPD関連保護材、新たな事業領域)の推進、人材育成やコーポレートガバナンス強化など経営基盤の強化としている。

 自動車部品用発泡ポリプロピレンのピーブロック(英名ARPRO)は、自動車軽量化要求に対応する製品として需要が急速に拡大し、日系自動車メーカーのシートコア材などへの採用が広がっている。中期成長ドライバーとして期待される。

 省エネ基準適合義務化対象拡大で需要拡大している「ミラフォーム」については、関西工場(兵庫県たつの市)の隣接地に新工場が完成(19年1月)して東西2大生産拠点体制を構築している。

 新製品ではミラフォーム畳(衝撃緩和型畳床)「ふわり」を発売し、デンカ<4061>と共同開発した建築構造物向け軽量・不燃ボード「スチロセメン」の早期製品化を目指している。

 また道路擁壁として多くの実績を積み上げている「J-ウォールブロック」は、NETIS(新技術情報提供システム)に登録された。サステナビリティ経営では、欧州の自動車メーカーからリサイクル原料使用の要求が強く、原料にリサイクルポリプロピレンを用いたARPRO REの採用が始まっている。

■21年3月期は新型コロナ影響だが後半の需要回復期待

 21年3月期の連結業績予想(7月31日に売上高を50億円下方修正、営業利益を2億円上方修正)は、売上高が20年3月期比11.8%減の1000億円、営業利益が37.1%減の32億円、経常利益が38.6%減の32億円、そして純利益が39.5%減の22億円としている。配当予想は20年3月期と同額の50円(第2四半期末25円、期末25円)としている。

 第2四半期累計は、売上高が前年同期比14.6%減の480億80百万円、営業利益が48.1%減の12億84百万円、経常利益が48.7%減の12億68百万円、純利益が52.6%減の9億08百万円だった。

 新型コロナウイルスによる世界経済収縮で、自動車分野を中心に需要が大幅減少した。ロックダウンに伴う生産活動への制約も影響した。特にビーズ事業が19.3%減収で63.1%減益と低調だった。押出事業は5.7%減収だが固定費削減効果で3.7%増益だった。なお計画値(7月31日に上方修正)の比較で見ると、売上高は未達だが、各利益は計画超だった。

 通期のセグメント別計画は、押出事業が6.8%減収で21.5%増益、ビーズ事業が14.6%減収で36.6%減益としている。下期は生活資材が前期を上回り、ピーブロックなど高機能材も回復傾向だが、産業資材や建築土木資材が引き続き低調見込みとしている。

 第2四半期累計の利益は計画に対して上振れたが、通期予想に対する進捗率は売上高が48.1%、営業利益が40.1%とやや低水準である。後半の需要回復を期待したい。

 なお11月18日に、欧州のグループ会社における資金流出事案(発生時期20年10月下旬から11月上旬)を公表している。犯罪に巻き込まれた可能性が高く、捜査に全面協力するとともに、流出した資金の保全・回収手続に全力を尽くすが、21年3月期業績予想の修正が必要となる見込みとしている。11月18日時点での損失見込額は最大約10億円としている。

■株価は調整一巡

 株価は安値圏でモミ合う形だが、調整一巡して出直りを期待したい。11月24日の終値は1547円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS73円80銭で算出)は約21倍、今期予想配当利回り(会社予想の50円で算出)は約3.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2729円87銭で算出)は約0.6倍、時価総額は約486億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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