ゼリア新薬工業は調整一巡、21年3月期2Q累計営業・経常減益だが通期増収増益予想

 ゼリア新薬工業<4559>(東1)は消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。21年3月期第2四半期累計は特にコンシューマーヘルスケア事業が新型コロナウイルス影響を受けて営業・経常減益だったが、通期は医療用医薬品事業の主力製品の伸長や新薬の上市などで増収増益予想としている。収益拡大を期待したい。なお自己株式取得期間を延長している。株価は上値を切り下げる形だが、調整一巡して出直りを期待したい。

■医療用医薬品事業とコンシューマーヘルスケア事業を展開

 消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。収益面では薬価改定、ライセンス収入・ロイヤリティ収入、研究開発費、広告宣伝費などの影響を受けやすい。

 20年3月期のセグメント別売上高構成比は医療用医薬品事業53%、コンシューマーヘルスケア事業47%、その他0%、営業利益構成比(連結調整前)は医療用医薬品事業28%、コンシューマーヘルスケア事業69%、その他3%だった。地域別売上比率は日本69%、欧州23%、その他8%だった。

 医療用医薬品事業は、潰瘍性大腸炎治療剤アサコール(協和キリンとの販売提携を終了して20年4月から単独販売)を主力として、H2受容体拮抗剤アシノン、亜鉛含有胃潰瘍治療剤プロマック、機能性ディスペプシア治療剤アコファイドなども展開している。子会社ティロッツ社は、アストラゼネカ社から炎症性腸疾患(IBD)治療剤Entocortの米国を除く全世界における権利を取得し、国内ではゼンタコートカプセルとして販売している。

 アコファイドについては、Meiji Seika ファルマとタイおよびインドネシアにおける独占的開発・販売ライセンス契約、スペインのFAES社とラテンアメリカにおける独占的開発・販売ライセンス契約を締結している。

 20年9月には鉄欠乏性貧血治療剤フェインジェクト静注500mg(ビフォーファーマ社から導入、開発コードZ-213、19年3月国内製造販売承認取得)を販売開始した。日本では18年4月から1年間に鉄欠乏性貧血と診断された患者数が約490万人と推計され、約220万人が鉄製剤(経口・静注製剤)の処方・治療を受けているが、日本の鉄製剤市場で販売されている注射剤は現在1剤のみで、治療選択肢が限られた状況となっている。本剤は新たな選択肢として期待されている。

 コンシューマーヘルスケア事業は、ヘパリーゼ群、コンドロイチン群、ウィズワン群を主力として、日本で初めて月経前症候群の効能を取得した西洋ハーブ・ダイレクトOTC医薬品プレフェミン、連結子会社イオナ インターナショナルの「イオナ」ブランド化粧品なども、全国の薬局・薬店・ドラッグストアなどに販売している。

 20年4月にはヘパリーゼ群の主原料である肝臓加水分解物の安定調達とコンシューマーヘルスケア事業拡大を目的として、日水製薬<4550>から日水製薬医薬品販売の全株式を譲り受けて子会社化(現社名:健創製薬)した。20年10月には、筋肉・骨・軟骨の構成成分を配合したビタミン含有保健剤「コンドロアミノCa錠」(指定医薬部外品)を発売した。

■消化器分野を最重点領域として新薬開発を推進

 消化器分野を最重点領域と位置付けて新薬開発を推進している。新薬パイプラインの状況(20年11月4日現在)は以下の通りである。

 鉄欠乏性貧血を適応症とするZ-213(ビフォーファーマ社から導入)は、19年3月鉄欠乏性貧血治療剤フェインジェクト静注500mgとして国内製造販売承認を取得、20年9月販売開始した。

 子宮頸癌を適応症とするZ-100(自社品)は第3相(日本を含むアジア共同治験)段階である。予定された患者登録をすべて終了している。第10次中期経営計画(20~22年度)期間内の日本での製造販売承認申請を目標としている。

 Z-338(自社品、アコファイド)は、日本では小児機能性ディスペプシア患者を対象とする第3相段階、欧州では機能性ディスペプシアを適応症として第3相段階である。

 高カリウム血症を適応症とするZG-801(ビフォーファーマ社から導入)は第2相段階である。米国では15年12月販売開始し、欧州では17年7月EMA(欧州医薬品庁)から承認取得している。

 潰瘍性大腸炎を適応症とするZ-206(自社グループ品、アサコール)は中国で20年4月承認取得した。販売については、開発主体であるTillotts Pharma AGが、イタリアのMenariniグループの中国現地法人と独占的販売権供与に関する契約を締結している。

 なおベルフェミン(OTC医薬品、西洋ハーブ)については、20年9月に厚生労働省薬事・食品衛生審議会要指導・一般用医薬品部会において要指導薬としての承認が了承された。近々に製造販売承認されることを期待している。

■海外におけるアサコールとEntocortの市場浸透などを推進

 収益拡大に向けた重点施策として、医療用医薬品事業では潰瘍性大腸炎治療剤アサコールの情報提供活動強化、鉄欠乏性貧血治療剤フェインジェクト静注500mgの市場構築、海外におけるアサコールと炎症性腸疾患(IBD)治療剤Entocortの市場浸透、コンシューマーヘルスケア事業では主力製品に次ぐ製品群の育成、日水製薬医薬品販売とのシナジーによる事業拡大を推進する方針だ。

 また持続的成長に向けて、消化器領域および既存事業との親和性の高い領域の薬剤導入やM&A、自社製品の海外導出も検討する方針だ。

■21年3月期2Q累計営業・経常減益だが通期増収増益予想

 21年3月期の連結業績予想(期初時点では未定、8月4日に公表)は、売上高が20年3月期比0.9%増の610億円、営業利益が5.0%増の43億円、経常利益が0.5%増の39億円、純利益が12.8%増の33億円としている。配当予想は20年3月期と同額の34円(第2四半期末17円、期末17円)としている。

 第2四半期累計は売上高が前年同期比11.6%減の268億09百万円、営業利益が8.1%減の15億98百万円、経常利益が19.7%減の13億07百万円、純利益が12.9%増の13億88百万円だった。特にコンシューマーヘルスケア事業が新型コロナウイルスの影響を受けた。なおスイスフラン高で営業外費用の為替差損が拡大(前年同期は差損80百万円、今期は差損4億25百万円)した。特別利益では債務取崩益(6億71百万円)を計上した。

 医療用医薬品事業は7.6%減収だった。主力のアサコール(4.1%増収)は引き続き堅調だったが、Entocort(16.8%減収)が海外の一部で新型コロナウイルスの影響による出荷遅延が発生した。アコファイド(8.8%減収)は新型コロナウイルスによる受診行動抑制が影響した。

 コンシューマーヘルスケア事業は15.9%減収だった。殺菌消毒薬など衛生用品は好調だったが、新型コロナウイルスによる外出自粛で特にコンビニエンスストア市場が影響を受けた。ヘパリーゼ群は46.8%減収、コンドロイチン群は19.8%減収と急減した。

 第2四半期累計は特にコンシューマーヘルスケア事業が新型コロナウイルスの影響を受けて営業・経常減益だったが、通期は医療用医薬品事業の主力製品の伸長や新薬の上市(20年9月発売の鉄欠乏性貧血治療剤フェインジェクト)などで増収増益予想としている。Entocortは出荷遅延が解消して回復基調である。ヘパリーゼW群は年末年始の最需要期に向けて諸施策を強化する。通期ベースで収益拡大を期待したい。

■株主優待は年2回、9月末と3月末の株主対象

 株主優待制度は毎年9月末および3月末現在の株主を対象として、保有株式数に応じて自社グループ商品を贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は調整一巡

 なお20年5月21日発表の自己株式取得(上限80万株・17億60百万円、取得期間20年5月22日~20年11月5日)については、11月4日に取得期間延長(21年5月14日まで延長)を発表している。20年11月3日時点での累計取得株式数は15万4200株だった。

 株価は上値を切り下げる形だが、調整一巡して出直りを期待したい。11月24日の終値は1890円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS71円47銭で算出)は約26倍、今期予想配当利回り(会社予想の34円で算出)は約1.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1134円30銭で算出)は約1.7倍、時価総額は約1004億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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