ジーニーは戻り試す、21年3月期2Q営業黒字転換、通期も黒字化予想

ジーニー<6562>(東マ)は、マーケティングテクノロジー事業で成長を目指している。21年3月期第2四半期累計は新型コロナウイルス影響などで減収・赤字だったが、第2四半期は売上回復と収益性改善で営業黒字に転換した。そして通期も黒字予想としている。収益改善基調を期待したい。株価は底放れの動きとなって年初来高値に接近している。戻りを試す展開を期待したい。

■マーケティングテクノロジー事業で成長目指す

 インターネットメディアの広告収益最大化を図る独自のアドテクノロジー(ウェブサイトやスマートフォンアプリ等に各々の閲覧者に合った広告を瞬時に選択して表示させる技術)をベースとして、事業領域拡大戦略およびサービス提供地域拡大戦略を推進し、マーケティングテクノロジー事業(アド・プラットフォーム、マーケティングソリューション、海外)で成長を目指している。

 収益面の季節特性として、広告主の予算配分の影響を受けるため、12月および年度末の3月に売上が集中する傾向がある。なお14年にソフトバンク(現ソフトバンクグループ)と資本業務提携し、現在はソフトバンク<9434>の持分法適用会社となっている。

■アド・プラットフォームはDOOH領域に積極展開

 アド・プラットフォームは、ネットメディア向けサプライサイドビジネスプラットフォーム「GenieeSSP」を主力として、広告主向けデマンドサイドビジネスプラットフォーム「GenieeDSP」および「GenieeDMP」も展開している。

 ネット広告取引市場では、RTB(広告枠を自動で瞬時にオークション形式で取引するシステム)によって取引されるが、同社独自の広告配信最適化アルゴリズムで効果的な広告配信を実現している。SSPサービスでは16年度から国内トップシェアを確立している。さらにビッグデータやAIを活用して、広告配信の精度向上や自動化に取り組んでいる。

 20年11月には「GenieeSSP」が、機械学習アルゴリズムを活用したモバイルユーザー獲得に強みを持つイスラエルのDSP「Persona.ly」と連携開始した。20年11月30日には高速・高精度検索エンジン開発・提供のビジネスサーチテクノロジを子会社化する。SaaSプロダクトの強化を推進する。

 事業領域拡大戦略で、DOOH(交通広告や屋外広告など自宅以外の場所で接触する屋外デジタル広告)領域に積極展開している。

 18年11月タクシー後部座席に設置されたデジタルサイネージ向け広告配信プラットフォームを開発し、19年2月にはDeNA<2432>のタクシー配車サービスでの本格運用を開始した。19年8月ジオネクサスにDOOH広告配信プラットフォームをOEM提供した。19年11月メディカルアシストTVと業務提携し、歯科医院デジタルサイネージ向けプログラマティックOOH広告配信を開始した。

 20年1月にはヒットと業務提携し、20年2月首都高速道路沿い大型屋外ビジョン向けプログラマティックOOH広告配信を開始、20年3月東京・渋谷ハチ公口および大阪・御堂筋沿いにプログラマティックOOH広告配信を開始した。

 20年7月には京王エージェンシーと業務提携してデジタル広告効果の可視化に向けた実証実験を開始した。20年8月にはユニカと業務提携してDOOH向け広告配信サービス「YUNIKA VISION DOOH」の提供を開始した。また20年10月には日本自動ドアおよびYmixと業務提携した。Fast Beautyが運営する全国約88店舗ヘアカラー専門店fufuに設置するタブレット端末への広告配信を20年12月開始する。

■マーケティングソリューションと海外も拡大

 マーケティングソリューションは、CRM(顧客管理)/SFA(営業管理)システム「ちきゅう」、マーケティングオートメーション「MAJIN」、チャットボットツール「chamo」を展開している。

 CRM/SFAシステム「ちきゅう」は、顧客管理CRMシステムおよび商談管理SFAシステムを一体化させたクラウド型サービスである。マーケティングオートメーション「MAJIN」は企業のマーケティング活動を自動化し、効率的に購買・契約等を行うためのプラットフォームである。19年9月には「ちきゅう」と「MAJIN」を連携し、ワンプラットフォーム化によってクラウドサービス拡大戦略を推進している。20年9月にはチャットボットツール「chamo」を大幅リニューアルした。

 海外は東南アジアを中心に「GenieeSSP」などを展開している。デマンドサイドは不採算案件の縮小など事業構造改革を推進し、ソフトバンクと協業してクロスボーダーサービスを強化・拡大する方針だ。

■22年3月期EBITDA30億円超目標

 中期経営計画では目標値に22年3月期売上高250億円、売上総利益60億円、EBITDA30億円超を掲げている。

 事業ポーフォリオマネジメントとKPI管理を強化しつつ、プロダクト間クロスセルの取り組み拡大、事業領域(事業軸)とサービス提供地域(地域軸)の拡大を推進する。マーケティングソリューションなど、利益率の高いプロダクトやストック型収益の構成比を高めて、中期的に収益力向上を目指す。

■21年3月期2Q営業黒字転換、通期黒字予想

 21年3月期の連結業績予想(期初時点では未定、8月12日公表)は、売上高が20年3月期比8.6%増の155億80百万円、営業利益が1億86百万円の黒字(20年3月期は91百万円の赤字)、経常利益が1億74百万円の黒字(同1億41百万円の赤字)、純利益が1億34百万円の黒字(同1億78百万円の赤字)としている。

 第2四半期累計は、売上高が前年同期比8.2%減の64億30百万円、営業利益が1億23百万円の赤字(前年同期は2億29百万円の赤字)、経常利益が1億40百万円の赤字(同2億46百万円の赤字)、EBITDAが47百万円の黒字(同79百万円の赤字)、純利益が1億19百万円の赤字(同2億39百万円の赤字)だった。

 新型コロナウイルス影響による広告需要減少や、海外の一部不採算事業の縮小などで減収だが、第2四半期から売上が回復傾向となり、収益性改善も寄与して赤字縮小した。アド・プラットフォーム事業は4.7%減収、マーケティングソリューション事業は30.0%減収、海外事業は26.5%減収だった。

 また四半期別に見ると、第1四半期は売上高が30億63百万円で営業利益が1億32百万円の赤字、第2四半期は売上高が33億67百万円で営業利益が9百万円の黒字だった。第2四半期は売上回復と収益性改善で営業黒字に転換した。

 通期は増収・黒字化予想としている。新型コロナウイルスの影響が一定程度残り、一定の投資も継続するが、重点分野のDOOH領域やSaaS領域の成長で営業黒字転換を目指す。売上総利益は25.5%増の27.8億円、EBITDAは2.6倍の5.4億円の計画である。

 なお下期が広告業界の需要期となるため、第4四半期の売上総利益は上場来最高となる10.2億円、EBITDAは3.4億円を目指すとしている。通期ベースで収益改善基調を期待したい。

■株価は戻り試す

 株価は底放れの動きとなって2月の年初来高値に接近している。戻りを試す展開を期待したい。11月27日の終値は922円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS7円48銭で算出)は約123倍、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS141円47銭で算出)は約6.5倍、時価総額は約166億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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