【決算記事情報】科研製薬の16年3月期は増収増益・増配予想で利益は増額余地

 科研製薬<4521>(東1)の16年3月期は増収増益・増配予想で利益は増額余地がありそうだ。株価は4月の上場来高値4750円から利益確定売りで一旦反落したが、高値圏の4000円~4500円近辺で堅調に推移している。急伸後の自律調整局面だが強基調を継続している。中期成長力や積極的な株主還元姿勢を評価して上値を試す展開だろう。

整形外科、皮膚科、内科といった領域を得意として、農業薬品や飼料添加物なども展開する医薬品メーカーである。医薬品・医療機器では、生化学工業<4548>からの仕入品である関節機能改善剤アルツを主力として、癒着防止吸収性バリアのセプラフィルム、高脂血症治療剤リピディル、創傷治癒促進剤フィブラストスプレーなどを展開し、ジェネリック医薬品も急拡大している。

日本初の外用爪白癬治療剤クレナフィン(一般名エフィナコナゾール)については、日本では当社が14年7月に製造販売承認を取得し、14年9月に販売を開始した。海外ではカナダのバリアント社が13年10月にカナダで承認を取得、14年6月に米国で承認を取得した。

開発中のテーマとしては、歯周病を適応症とする「KCB-1D」の申請を準備中(申請予定を15年10月に変更)で16年承認予定だ。腱・靱帯付着部症を適応症とする「SI-657」(生化学工業と共同開発、アルツの効能追加)は16年承認予定としている。潰瘍性大腸炎を適応症とする「KAG-308」(旭硝子<5201>と共同開発の経口プロスタグランジン製剤)はフェーズⅡを準備中である。

また15年3月31日付で、米ブリッケル社が米国において原発性局所多汗症を対象に開発している「BBI-4000」(外用抗コリン剤)の独占的ライセンス実施許諾および共同開発に関する契約を締結し、日本とアジア主要国における独占的な開発・販売・製造の権利を取得した。

5月12日に発表した前期(15年3月期)の連結業績は売上高が前々期比5.6%増の938億89百万円、営業利益が同30.0%増の206億31百万円、経常利益が同31.4%増の203億94百万円、そして純利益が同24.5%増の121億22百万円だった。売上高、営業利益とも過去最高を更新し、中期的な数値目標としていた営業利益200億円を達成した。

配当予想は5月12日に増額修正して同11円増配の年間59円(第2四半期末27円、期末32円)とした。配当性向は40.6%で、13期連続の増配となる。なおROEは同2.2ポイント上昇して16.7%、自己資本比率は同3.0ポイント上昇して67.0%となった。

14年9月に販売開始した外用爪白癬治療剤クレナフィンの売上が想定以上となり、薬価改定の影響などを吸収して期初に発表した計画を上回る増収増益だった。売上原価率は47.7%で同3.1ポイント低下した。研究開発費は76億15百万円で同8.1%増加したが計画を下回った。

セグメント別売上高は、薬業が同5.8%増の914億58百万円、不動産事業が同1.3%減の24億31百万円となった。
主な医薬品・医療機器の売上高を見ると、関節機能改善剤アルツは数量が伸長したが薬価改定の影響で同5.7%減の302億59百万円、癒着防止吸収性バリアのセプラフィルムは新材形発売が寄与して増収だが、計画をやや下回り同0.6%増の107億91百万円、外用爪白癬治療剤クレナフィンは14年9月新発売で68億57百万円、高脂血症治療剤リピディルは数量が伸長したが薬価改定の影響で同1.3%減の43億73百万円、創傷治癒促進剤フィブラストスプレーは同7.3%減の35億11百万円、ジェネリック医薬品合計は既存製品の伸びに加え新製品も寄与して同12.8%増の123億80百万円だった。

四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)214億64百万円、第2四半期(7月~9月)227億68百万円、第3四半期(10月~12月)269億23百万円、第4四半期(1月~3月)227億34百万円、営業利益は第1四半期40億85百万円、第2四半期47億21百万円、第3四半期78億05百万円、第4四半期40億20百万円だった。

今期(16年3月期)の連結業績予想(5月12日公表)は、売上高が前期比4.9%増の985億円、営業利益が同1.8%増の210億円、経常利益が同3.5%増の211億円、純利益が同15.5%増の140億円としている。

外用爪白癬治療剤クレナフィンの収益寄与が本格化して増収増益見込みだ。利益面では、パイプライン充実に向けて研究開発費が増加(同48.4%増の113億円の計画)するため、営業利益は微増益の見込みとしている。ただし会社予想は保守的な印象が強い。外用爪白癬治療剤クレナフィンは想定以上に市場に浸透しているもようであり、増額余地がありそうだ。

医薬品・医療機器の売上高計画は、関節機能改善剤アルツが同1.1%増の306億円、外用爪白癬治療剤クレナフィンが同75.0%増の120億円、癒着防止吸収性バリアのセプラフィルムが同1.9%増の110億円、高脂血症治療剤リピディルが同2.9%増の45億円、創傷治癒促進剤フィブラストスプレーが同2.5%増の36億円、ジェネリック医薬品合計が同7.4%増の133億円としている。ジェネリック医薬品は6月に1品目の新発売を予定している。なおバリアント向けJublia関連売上は50億円の計画としている。

5月12日に単元株式数の変更と株式併合を発表した。15年10月1日付で単元株式数を1000株から100株に変更するとともに、中長期的な株価変動等を考慮しつつ投資単位を適切な水準に調整することを目的として、15年10月1日付で2株を1株に併合する。株式併合については6月26日開催予定の第95回定時株主総会に付議する。また本単元株式数変更および本株式併合に伴い、当社株式の投資単位は従前に比して5分の1の水準となる。

また5月27日に16年3月期配当予想の修正を発表し、第2四半期末34円、期末68円とした。5月12日発表の株式併合(2株→1株)に伴うもので、株式併合前に換算すると第2四半期末34円、期末34円の年間68円となるため前回予想(5月12日公表)と実質的に変更はない。また前期の年間59円に対しても実質的に同9円増配で、14期連続の増配予定となる。

株価の動きを見ると、急伸した4月の上場来高値4750円から利益確定売りで一旦反落したが、高値圏の4000円~4500円近辺で堅調に推移している。急伸後の自律調整局面だ。

5月27日の終値4115円を指標面(15年10月1日付予定の株式併合前)で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS168円97銭で算出)は24~25倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間68円で算出)は1.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS930円56銭で算出)は4.4倍近辺である。

週足チャートで見るとサポートラインの13週移動平均線近辺から切り返す動きだ。自律調整が一巡したようだ。強基調を確認した形であり、中期成長力や積極的な株主還元姿勢を評価して上値を試す展開だろう。

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