Jトラストは成長加速に向けて事業ポートフォリオ再編

 Jトラスト<8508>(東2)は日本、韓国・モンゴル、およびインドネシアを中心とする東南アジアで金融事業を展開している。新型コロナウイルスも含めた経済環境変化に対応して成長を加速させるため、Jトラストカードおよび韓国・JT親愛貯蓄銀行の譲渡など事業ポートフォリオ再編を推進している。20年12月期は子会社異動の影響で連結業績予想を未定としているが、中期的に収益拡大基調を期待したい。株価は水準を切り下げて軟調展開だが、ほぼ底値圏だろう。売り一巡して反発を期待したい。

■日本、韓国・モンゴル、インドネシア中心に金融事業を展開

日本、韓国・モンゴル、およびインドネシアを中心とする東南アジアで、金融事業(銀行、信用保証、債権回収、その他の金融)を展開している。グループビジョンに「既成概念にとらわれないファイナンシャルサービスを提供する企業体を目指す」を掲げ、国内外におけるM&Aも積極活用して、銀行業および債権買取回収事業を中核とする総合金融サービスの提供を目指している。

19年12月期(決算期変更で9ヶ月決算)のセグメント別営業利益は、日本金融事業30億85百万円、韓国・モンゴル金融事業75億円、東南アジア金融事業46億47百万円の赤字、総合エンターテインメント事業1億59百万円の赤字、不動産事業8億29百万円、投資事業17億68百万円の赤字、その他事業4億72百万円の赤字だった。収益はM&A・事業再編・不良債権処理などで大幅に変動する可能性がある。

■成長加速に向けて事業ポートフォリオ再編

新型コロナウイルスも含めた経済環境変化に対応して成長を加速させるため、事業ポートフォリオ再編を推進している。子会社売却に伴って増加する換価性の高い資産は、積極的なポートフォリオ再編に活用する。

日本金融事業は、日本保証の保証業務、パルティール債権回収の債権回収業務を両輪として展開する。日本保証は保証商品拡充に向けて、寄付型クラウドファンディング大手のCAMPFIREと融資型クラウドファンディングにおいて業務提携している。また12月21日には日本保証と財全グループの業務提携を発表した。パルティール債権回収は信販系大手カード会社等からの債権買取回収を推進する。

Jトラストカードについては、20年11月1日付でNexus Bank<4764>(旧SAMURAI&J PARTNERS)を株式交換完全親会社、Jトラストカードを株式交換完全子会社として株式交換を実施した。これによってJトラストカード、およびJトラストカードの子会社である韓国・JT親愛貯蓄銀行が連結除外となり、日本国内でのカード事業から撤退した。またNexus BankのA種優先株式を引き受けた。

韓国およびモンゴル金融事業は、韓国のJTキャピタルがリース・割賦業務、韓国のTA Assetが債権回収業務、モンゴルのJトラストクレジットNBFIが割賦業務を展開する。韓国の貯蓄銀行2行については、韓国・JT親愛貯蓄銀行を直接親会社のJトラストカードと一緒に売却、韓国・JT貯蓄銀行の全株式を韓国・VI金融投資に譲渡(21年3月末予定)して韓国の貯蓄銀行業から撤退した。

東南アジア金融事業は、インドネシアのJトラスト銀行が銀行業務、JトラストINVESTMENTSが債権回収業務、JトラストOLYMPINDOがマルチファイナンス業務、カンボジアのJトラストロイヤル銀行(19年8月に商業銀行ANZRoyalBankを子会社化して商号変更)が銀行業務を展開する。Jトラストロイヤル銀行はカンボジアの大手資金移動業者であるWing社との連携を強化し、金融インフラが十分に行き渡っていないカンボジアにおいて金融サービスの裾野拡大に貢献している。

投資事業はJトラストアジアが展開している。なおJトラストアジアは販売金融事業のタイGL社に出資したが、17年10月にタイGL社CEO此下益司氏がタイSECから偽計および不正行為で刑事告発されたため、現在はタイGL社、此下益司氏、およびGLの関連取締役に対して、刑事告発手続き、会社更生法申し立て・補償請求・賠償請求などの訴訟を提起している。

また20年12月に子会社の日本ファンディング(20年11月子会社化したプロスペクト・エナジー・マネジメントが20年12月商号変更)が、グローム・ホールディングス<8938>の子会社LCレンディング(LCL社)の株式を100%取得した。投資関連事業の拡大に向けてLCL社のクラウドファンディング事業とのシナジーを創出する。

非金融事業ではJトラストシステムがITシステム事業を展開している。

総合エンターテインメント事業のKeyHolder<4712>については、保有する同社株式の一部を、第三者(ミクシィ<2121>が設立したミクシィエンターテインメントファンド1号投資事業有限責任組合など5社)に譲渡(受渡期日12月23日)した。引き続き当社が筆頭株主となるが、KeyHolderおよび同社の連結子会社は持分法適用関連会社に異動する。

■20年12月期予想は未定、事業ポートフォリオ再編で収益拡大基調期待

20年12月期第3四半期累計連結業績(IFRS)は、営業収益が388億45百万円で、営業利益が12億24百万円の赤字、税引前利益が17億50百万円の赤字、親会社所有者帰属四半期利益が12億26百万円の黒字だった。

子会社異動でキーノート(現グローベルス)、Jトラストカード、韓国・JT親愛貯蓄銀行を非継続事業に分類した。9ヶ月決算だった19年12月期の4月~12月実績(非継続事業組み替え後)との比較で見ると、日本金融事業で保証業務と債権回収業務が堅調に推移し、本社費用削減やキーノート売却益なども寄与して営業赤字縮小し、最終黒字転換した。東南アジア金融事業は前期計上の負ののれん発生益が剥落したが、前期大幅に計上した貸倒引当金繰入額が減少して赤字縮小した。

通期の連結業績(IFRS)予想は、子会社異動の影響(Jトラストカードおよび韓国・JT親愛貯蓄銀行、韓国・JT貯蓄銀行、KeyHolder)で、9月23日に未定に修正している。なお配当予想は19年12月期と同額の1円(期末一括)としている。

新型コロナウイルスも含めた経済環境変化に対応して成長を加速させるため、事業ポートフォリオ再編を推進する。子会社売却に伴って増加する手元資金は、有利子負債の圧縮とともに、日本金融事業の更なる拡大など、積極的なポートフォリオ再編に有効活用する方針だ。事業ポートフォリオ再編推進で中期的に収益拡大基調を期待したい。

■株価は底値圏

株価は水準を切り下げて軟調展開だが、ほぼ底値圏だろう。売り一巡して反発を期待したい。12月22日の終値は197円、今期予想配当利回り(会社予想の1円で算出)は約0.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS944円61銭で算出)は約0.2倍、時価総額は約227億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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