【アナリスト水田雅展の銘柄診断】イーブックイニシアティブジャパンは電子書籍事業の成長力を評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 イーブックイニシアティブジャパン<3658>(東1)は電子書籍配信サービスを展開している。株価は4月の年初来高値から反落したが、切り返しの動きを強めている。電子書籍事業の成長力を評価して出直り展開だろう。なお6月9日に第1四半期(2月~4月)の業績発表を予定している。

 電子書籍書店「eBookJapan」の運営を中心に、パソコン・モバイル向けの電子書籍配信サービスを展開している。事業区分は、電子書籍配信事業(自社電子書籍配信サイト「eBookJapan」での電子書籍販売)、電子書籍提供事業(パートナー企業への電子書籍配信システム・書籍データ提供事業で、航空機内向けサービス等を含む)、プロモーション・その他事業(書籍の電子化受託、電子書籍配信プラットフォームの受託開発、eBook図書券の販売、コンテンツ/キャラクターを活用した販促プロモーションなど)である。

 漫画コミックで世界最大級の品揃えに強みを持ち、総合電子書店NO.1確立に向けて総合図書など取扱冊数を大幅に増加させている。15年1月期末のジャンル別取扱冊数は男性マンガが前期比24.6%増の5万9595冊、女性マンガが同34.5%増の5万7702冊、総合図書が同2.6倍の21万2152冊、その他が同62.5%増の1万4396冊、合計が同91.2%増の34万3845冊となった。登録会員数は14年11月に100万人を突破し、15年1月期末時点では同15万人増加の103万人となった。

 中期目標値として5年後の売上高300億円、売上高経常利益率10%、日本発作品のグローバル電子書籍売上に占める当社電子書籍シェア7%を掲げている。中期成長に向けた重点戦略としてブランド力向上、品揃え充実、基盤システム刷新による使い易さ向上、販促強化などで新規会員獲得に取り組むとともに、M&Aやアライアンスも積極活用して、クロスメディア展開(事業領域拡大)やグローバル展開(取扱言語拡大)で業容を拡大する方針だ。

 14年6月にはアニメキャラクターを活用した企業向けタイアッププロモーションなどを展開するトキオ・ゲッツを子会社化、14年10月にはスマートフォンアプリを中心とした知育コンテンツ企画・開発のフォーリーを子会社化した。

 15年2月には、中国最大級のソーシャルメディア「微博(weibo.com)」の日本にける総括代理店で、日本企業に対する中華圏向けプロモーション支援事業を展開するFind Japanを子会社化した。さらに当社、Find Japan、および中国・上海世紀出版集団グループの出版会社である上海故事会文化伝媒有限公司の3社共同出資で上海に合弁会社を設立した。中国においてコミックを中心とした電子書籍配信ビジネスを開始する。

 15年4月にはクックパッド<2193>と資本業務提携し、第三者割当増資でクックパッドが第1位株主(保有比率10.39%)となった。クックパッドの有するマーケティング・ノウハウの当社への提供など、業務提携の詳細については今後両社間で協議のうえ決定する。そしてクックパッドの子会社で漫画家・作家向け制作・配信システム構築を手がけるマグネットの第三者割当増資を引き受けて子会社化(保有比率50.98%)した。

 また15年5月にはブークスを子会社化した。同社が運営するオンライン書店「boox」への電子書籍提供事業を拡大するとともに、両社で新たなBtoB展開(紙と電子のハイブリッド書店)の共同開発を推進する。

 なお15年1月期の四半期別推移(第2四半期から連結)を見ると、売上高は第1四半期(2月~4月、非連結)10億65百万円、第2四半期(5月~7月)13億01百万円、第3四半期(8月~10月)13億53百万円、第4四半期(11月~1月)14億10百万円、営業利益は第1四半期1億02百万円、第2四半期1億10百万円、第3四半期90百万円、第4四半期11百万円だった。

 今期(16年1月期)の連結業績見通し(3月12日公表)については、売上高が60億円~70億円(前期比17.0%増~36.5%増)、営業利益が2億円の赤字~1億円の黒字(前期は3億13百万円の黒字)、経常利益が2億円の赤字~1億円の黒字(同3億16百万円の黒字)、純利益が1億28百万円の赤字~80百万円の黒字(同1億83百万円の黒字)のレンジ予想で、配当予想は無配継続としている。

 登録会員数増加や新規連結などで大幅増収見通しだが、16年1月期と17年1月期は中期成長に向けた先行投資期間と位置付けているため、開発費・人件費・広告宣伝費の増加、新規連結会社ののれん償却費増加などで減益見通しだ。ただし新規事業の業績に与える影響を考慮して、立ち上がり状況を慎重に見極めつつ投資額をコントロールするとしている。電子書籍市場の拡大も背景として、収穫期と位置付ける18年1月期以降の収益拡大が期待される。

 株価の動きを見ると、クックパッドとの資本業務提携を好感した4月の年初来高値1419円から反落し、安値圏の1000円近辺に回帰した。ただし3月の年初来安値950円まで下押すことなく、足元では切り返しの動きを強めている。

 5月29日の終値1041円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS上限値17円41銭で算出)は60倍近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS463円27銭で算出)は2.2倍近辺である。

 日足チャートで見ると一旦割り込んだ25日移動平均線を回復した。また週足チャートで見ると13週移動平均線および26週移動平均線突破の動きを強めている。電子書籍事業の成長力を評価して出直り展開だろう。

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