【小倉正男の経済コラム】新型コロナ不況:電通本社ビル売却というニュース

小倉正男の経済コラム

■電通が本社ビル売却を検討

 今週もTVのワイドショーなどは新型コロナ感染症のニュースばかりだった。仮にコロナに感染してもPCR検査も入院もままならず、自宅療養しかないところに至っているのだからどうにもならない。

 そうだろうなと納得して、これはコロナに感染したらヤバいなと。いまはコロナ感染だけは避けなければならないと改めて思っている次第である。しかし、現状はそれどころではない。コロナのみならずいまは心不全など他の病気にかかっても入院は容易ではないということである。

 週後半になってバイデン新大統領の就任式関連がニュースになったが、これもそうだろうなと。

 結局、いちばん驚いたのは電通が本社ビル売却を検討というニュースだった。おそらく、多くの人がそうだったのではないか。新型コロナ不況は、そこまで来たのかと思わざるをえなかった。

■汐留の超高層本社ビル売却資金でリストラ実行か

 電通本社ビルは、東京の港区東新橋というより汐留といったほうがよいと思われるが、汐留にそびえる超高層ビルである。他のビルを圧する「超豪壮」といえるような立派なビルだ。

 本社ビルの売却資金で事業再構築、リストラを行うということである。電通は“超リッチ会社”というイメージだが、やはりビジネス環境が厳しくなっているようだ。

 電通ビルといえば、名古屋のビルも相当立派なものである。お隣が日本経済新聞社のビルで、これもかなり立派なビルなのだが、電通のビルはそれを凌駕するものである。メディアあっての広告だが、広告ビジネスのほうが繁盛していたわけである。

 今回はその電通ですら本社ビル売却というのだから、かなり厳しい状況である。コロナ不況に突入しており、しかも先行きに良くなるというメドがいまだ立っていない。

■日経ダウは上がっているが不動産価格は?

 注目されるのは、これから先の話になるが、どのぐらいの売却金額になるのか、購入先はどこか、ということだ。ニュースでは3000億円規模の売却で、国内のビル売却では最大クラスになるのではないかと報じられている。

 コロナ不況ということで金融は超緩和状態となっており、株式(日経ダウ)は上昇しているが、不動産価格のほうはどうだろうか。テレワーク普及で東京都心のビルに出社して仕事をするというライフスタイルが大きく減退している。当然ながら、そうした影響は都心地価などに反映されているはずだ。

 電通自体は、本社ビルにグループを含めて9000人ほど勤務しているが、現状はテレワークで2割程度しか出社していない様子である。つまり、現状はオフィスビルというものがほぼ根底的に不要になっている。

 3000億円規模といわれる売却金額も足下を見られて相当値切られる可能性もないではない。あるいは、電通ビルは別格ということになるのか。

 東京都内に本社を構える会社は、いよいよ困ったら本社ビルを売却すると考えているところも少なくない。しかし、コロナでオフィスなどの不動産価値がかなり低下しているとしたら、安心できないことになりかねない。爆発状態といえるコロナ禍の長期化は、「うちは本社ビルがあるから大丈夫」という信仰を揺るがしている。

(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)

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