【どう見るこの相場】現金給付の複雑化シナリオに備えて証券株と地銀株のマークも一法

どう見るこの相場

 複線と単線、合わせ技と一本狙いの違いがあるようだ。菅内閣の新型コロナウイルス感染症への感染対策である。昨年4月の緊急事態宣言発出前後は、小中高の全国一斉休校、一律10万円の現金給付、アベノマスクの配布などが相次いで表明されあれもこれもの複線・合わせ技対策となった。10万円の現金給付などは、閣議決定された補正予算を慌てて組み替え予算総額を12兆円超に増額するドタバタぶりであった。これに対して、今年1月7日に再発出された緊急事態宣言では、菅偉義首相の国会答弁などを聞くと、どうもコロナ・ワクチンへの期待が高く、早期接種の一点張りで、担当大臣まで任命した。これで東京オリンピック・パラリンピックまで乗り切ろうとするのだから単線・一本狙い対策そのものだ。

この対策効果の違いなのか、新聞、テレビでは主要駅や繁華街での再発出後の人出が、昨年4月に比べて減少していない、増加していると報道されている。その結果、新規感染者も重症者も死者も過去最高更新となお歯止めが掛かっているというには程遠い。今回の11都道府県限定の緊急事態宣言の期限は2月7日までで、もちろんその期限内にワクチンの接種は不可能である。ここで感染拡大にストップが掛からないなら、次は飲食店を狙い撃ちの罰則付きの特措法の施行と「北風」政策で抑え込む腹積りのようだが、なおあれもこれもと対策を準備しておかないと、欧米型の感染爆発で医療崩壊どころか日本崩壊も心配しなくてはならないかもしれない。

 なかでも10万円の現金給付である。麻生太郎財務相は、「国民に一律10万円支給するつもりはない」とニベもなく切り捨て、菅首相も国会で否定答弁をしている。確かに前回の現金給付は、各種調査でも消費に回らず大半が貯蓄に回ってせっかく12兆円超まで注ぎ込んだ割りには経済効果が限定的であったことが明らかになっている。

 ところがである。この現金給付は、株式市場には神風そのものとなった。折からのテレワークで在宅の「巣ごもり投資家」が、支給現金を元手に新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な大流行)で大暴落した市場に果敢に流入し、V字急騰相場を牽引した。米国市場でも同様で、支給現金を原資にした「ロビンフッダー」が大活躍したことは記憶に新しい。菅内閣になって、「GoToキャンペーン」の中止にしろ緊急事態宣言の再発出にしろ、内閣支持率の低下とともにあっさり方針変更しており、ここで兜町が、現金給付再開を働き掛け内閣支持率の反転をサポートするのも歓迎されるかもしれない。バイデン新大統領の約200兆円の追加経済対策に盛り込まれた1400ドルの現金給付も、与野党議員の異議続出で旗色が悪くなったとして、前週末22日の米国・ダウ工業株30種平均は反落したが、ここは日米両市場関係者のガンバリどころでもある。

 とこのシナリオ通りに運んで、現金給付が再開されると仮定して、先取りして注目する銘柄は何になるのか?今週は、週明けから日米両市場でハイテク株の決算発表が相次ぎ、好業績評価のハイテク株祭りとなるか、それとも材料出尽くしとなって焦点が拡散して複雑化するかのいずれかとの観測が強いだけに、ここは複線・合わせ技投資も一考余地がありそうだ。そこで複雑化シナリオの万が一に備えて前回、「巣ごもり投資家」は、防疫関連株から巣ごもり消費関連株、テレワーク関連株、新規株式公開株まで幅広く買い向かったが、今回は、そうしたことも含めてマーケットのさらなる流動化の享受を期待してまず証券株である。

 証券株は、株式市況の動向次第で業績予想が困難としているだけに市況産業株の典型として予想PERは算定不能だが、PBRは軒並み1倍割れと出遅れ顕著なためだ。しかも、折から早期開示している四半期決算の速報値は、大幅増益転換が続いている。証券株が、四半期の好業績評価で昨年と同様にリバイバル相場を強めるようなら続いて注目されるのが、地銀株である。地銀株も、消費に回らない現金給付の受け皿になるはずであり、同様に多くが、解散価値のPBRが大きく1倍台を下回っており、究極のバリュー株人気を高めよう。

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