JPホールディングスは21年3月期3Q累計大幅増益で通期上振れの可能性

 JPホールディングス<2749>(東1)は総合子育て支援のリーディングカンパニーである。事業環境変化に対応して持続的成長を実現するため、収益性向上や新規事業創出などに取り組んでいる。21年3月期第3四半期累計は新規施設の開設、販管費の抑制、補助金収入の増加などで大幅増益だった。通期予想を据え置いたが上振れの可能性が高いだろう。好業績を期待したい。株価は戻り一服の形となったが、調整一巡して出直りを期待したい。

■総合子育て支援のリーディングカンパニー

 総合子育て支援のリーディングカンパニーである。認可保育園や学童クラブなどを運営する子育て支援事業を主力として、保育所向け給食請負事業、英語・体操・リトミック教室請負事業、保育関連用品の物品販売事業、研究・研修・コンサルティング事業なども展開している。

 20年3月期末の運営施設数は、保育園209(認可保育園・公設民営12、認可保育園・民設民営171、認可外東京都認証保育所20、認可外企業主導型保育事業2、その他認可外保育園4)、学童クラブ72、児童館11、民間学童クラブ4、海外幼稚園(ベトナム)1、合計297園・施設(19年3月末比8園・施設増加)だった。首都圏を中心に展開している。また受入児童数は19年3月期末比973人増加の1万5323人だった。

 収益は既存施設の稼働率、新規施設の開園、保育士待遇改善に伴う人件費の増加、補助金の増減などが影響する。また新規施設の開園は概ね4月のため、期前半は各施設への保育士配置に係る費用が先行するが、児童数が増加して稼働率が上昇する期後半に向けて収益が拡大する特性がある。

■収益性向上や新規事業創出を推進

 21年3月期から新経営体制に移行し、事業環境の変化に対応して持続的成長を実現するための経営改革に取り組んでいる。

 収益性・効率性向上では、最高水準の保育サービスの提供を目指して保育の更なる質的向上推進するとともに、経営資源集中や業務効率化を推進する。具体的には、収益性が悪化した施設を閉園(21年3月末に東京都認証保育所4園および企業主導型保育園1園を閉園、22年3月末に東京都認証保育所1園を閉園予定)し、要員配置適正化などで既存施設の収益性改善に取り組む。また投資基準に沿った新規開設計画の立案、保育ニーズの変容に対応する収益モデルの研究を推進する。幼児教育や異業種提携など、児童減少に伴う空きスペースを活用したビジネスモデルも検討する。

 人材確保・育成・マネジメントでは、採用間口の拡大などで採用を強化するとともに、離職率抑制に向けて人事制度の改革、タレントマネジメントシステムの活用、働く環境の整備、コンプライアンス体制や安全対策の強化などに取り組む。離職率については20年3月期13%(業界平均17%前後)に対して、21年3月期10%程度を目指す。

 更なる成長に向けた新規事業では、子育て支援の取り組みを待機児童対策から少子化社会対策へシフトし、子育て世帯への新しい暮らし方の提案(朝夕の食事提供、幼児教育プログラムのデジタル化、子育て用品販売による手ぶら保育など)、オンライン教育(在宅子育てサービスなど)などに取り組む方針だ。M&A・アライアンスも積極活用する方針だ。

 21年1月には学研ホールディングス<9470>と資本業務提携した。学研ホールディングスがマザーケアジャパンから株式を取得して第1位株主となった。更なる子育て支援の質的向上、量的な成長、幼児教育の拡充および子育て事業における新しいビジネス価値の創造を推進する。

■21年3月期3Q累計大幅増益で通期上振れの可能性

 21年3月期連結業績予想は、売上高が20年3月期比4.1%増の330億05百万円、営業利益が2.5%増の15億77百万円、経常利益が7.5%増の21億53百万円、当期純利益が3.6%増の11億63百万円としている。配当予想は、20年3月期と同額の3円90銭(期末一括)である。

 第3四半期累計は売上高が前年同期比3.3%増の242億28百万円、営業利益が41.2%増の13億62百万円、経常利益が36.8%増の18億31百万円、四半期純利益が34.6%増の11億43百万円だった。

 売上面では、新型コロナウイルスによる一部施設の臨時休園・休室・休館というマイナス要因があったが、新規施設の開設、東京都認証保育所の認可保育所への移行、既存施設の受入児童増加などで吸収した。20年4月に保育所4園(東京都4園)と学童クラブ5施設(東京都5施設)を開設し、20年12月末時点の子育て支援施設は合計302施設(保育所213園、学童クラブ77施設、児童館11施設、民間学童クラブ1施設)となった。

 営業利益は売上総利益の増加、一部施設臨時休園・休室・休館に伴う給食食材費の減少、販管費の抑制で大幅増益だった。営業外収益では寮利用者増加に伴って補助金収入が増加した。特別損失には一部施設の閉園に伴う園減損損失1億15百万円を計上した。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高78億35百万円で営業利益93百万円、第2四半期は売上高81億20百万円で営業利益5億39百万円、第3四半期は売上高82億73百万円で営業利益7億30百万円だった。期後半に向けて稼働率上昇などで利益が増加傾向となる収益特性がある。また営業外の補助金収入も期後半に集中する特性がある。

 通期も子育て支援サービスの質的向上と収益改善に注力し、新規施設の開設や既存施設の受入児童増加などで増収増益予想としている。第3四半期累計の進捗率は売上高が73.4%、営業利益が86.4%、経常利益が85.0%、純利益が98.3%と高水準だった。通期予想を据え置いたが上振れの可能性が高いだろう。好業績を期待したい。

■株主優待制度は毎年9月末の株主対象

 株主優待制度は毎年9月末日現在の5単元(500株)以上保有株主を対象として実施している。なお20年9月末対象から従来の株主優待ポイント制度を廃止し、次亜塩素酸水を贈呈(詳細は会社HP参照)した。

■株価は調整一巡

 株価は戻り一服の形となったが、調整一巡して出直りを期待したい。2月18日の終値は290円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS13円30銭で算出)は約22倍、今期予想配当利回り(会社予想の3円90銭で算出)は約1.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS110円17銭で算出)は約2.6倍、時価総額は約255億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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