【どう見るこの相場】10万円と3万円の高株価を双発エンジンに低位割安の証券株と地銀株にまだまだ出番

どう見るこの相場

 10万円と3万円――――この社会的なインパクトはどのくらいのものだろうか?ファーストリテイリング<9983>(東1)の株価は、今年2月16日に10万円台に乗せ、上場来高値を更新した。一方、日経平均株価も、その前日の15日に3万円の大々台を回復し1990年8月以来、30年半ぶりの高値水準となった。さすがに前週末にはファストリは10万円台で目先調整場面となり、日経平均も3万円台を出没する高値もみ合いとなったが、高株価が巡り巡ってマーケットの株価形成にどのように響いてくるかという問題である。

 放映されたテレビの街頭インタビューなどでは、さまざまな社会的な反応があったようだ。新型コロナウイルス感染症の収束と経済活動の正常化、さらに景気回復まで先取りするマーケットの摩訶不思議さに驚く言及もあった。一方で、生活実感からかけ離れ過ぎてバブルと拒否反を示す個人的な感想も多かった。

ただ折からの米国市場では、個人投資家の「ロビンフッダー」が、SNS(交流サイト)を駆使し、ヘッジファンドへバトルを仕掛け、素人がプロ投資家を追い込んでボロ株を大化けさせた株価急騰劇も伝えられている。この是非を巡って米国議会でも公聴会が開催されているが、米国の流行に後追いするのが習い性のわが日本ででもある。これまで株式投資に関心を向けてこなかった一般の社会人に市場参入を促すキッカケになる可能性もある。

 「桜のジャージー」の日本代表が大活躍した2019年のラグビー・ワールドカップ以来、いろいろなところで「にわかファン」が叢生している。この「にわかファン」は、前週20日に開幕したラグビーの「トップリーグ」でもゲームのルールもよく分からずに「観るラグ」として定着しているという。将棋でも、連勝記録や数々の最年少記録を更新した藤井聡太二冠の誕生で、やはり「にわかファン」が急増、実際に将棋を指さずタイトル戦などのライブ中継を観戦するだけの「観る将」が目だっているらしい。

 10万円と3万円の高株価も、まさにこれだ。「にわかファン」が、実際に株式投資をせず高株価の成り行きだけをウオッチする「観る投」になる展開も想定される。なかでもファーストリの10万円である。一般消費者のなかには日々、あのヒートテックやウルトラライトダウンジャケットなどを購入している「ユニクロ」の経営主体がファストリであることを初めて知った向きも多く、その「ユニクロ」が、10万円の高株価で世界のアパレル業界の時価総額トップに躍り出たわけで、自らの購入行動がいくらかの貢献をしたと急に身近に感じたケースも多かったはずだ。そこで「ユニクロ」でファーストファッションを買う感覚でファイストリ株に投資してみようとしたまたまた愕然とする。最小売買単位の100株を購入するにも大枚1000万円を用意しなければならないことが分かるからである。

 だから「観る投」が急増する一方で、その「観る投」のいくばくかが、手元資金の範囲内で株式投資ができる銘柄に関心を向ける展開も想定されることになる。トライアルの対象としてまず浮上するのが低位株である。「安物買いの銭失い」になる可能性は捨て切れないが、いわば競馬の馬券、競輪の車券感覚の投資なら「出ると負け」でも諦めはつくと割り切るのである。

 個人金融資産は、1901兆円に達しうち50%を超える1034兆円が、銀行口座に休眠中である。これがファストリと日経平均の高株価に触発されて、「観る投」どころか「貯蓄から投資」へ流動化すれば、まさしく証券民主化となり、格差是正に結び付く。もちろん日本電信電話<NTT、9432>(東1)の民営化、株式売り出しの「御用金相場」以来、「証券民主化」の号令が掛かるときはバブル前夜とのアノマリーがあることは十分に留意したい。

 しかし「にわかファン」、「観る投」が市場に新規進出してきて低位株にレーダーを張るとするならば、この先取りも一考余地があるはずだ。そこで今週の当特集では、トライアルとして10万円以下の少額資金で株式投資が可能となる低位株として、今年1月25日付けの当特集で取り上げた証券株と、日本銀行が、前週末18日、19日とETF(上場投資信託)の購入を見送ったことに関連するかもしれない低位地銀株にもう一度注目することとした。10万円と3万円の双発エンジンの推進力に期待したい。

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