【アナリスト水田雅展の銘柄分析】三社電機製作所は16年3月期増収増益予想で増額含み、割安感強く上値追い、07年3月高値も視野

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 三社電機製作所<6882>(東2)は電源機器事業と半導体事業を展開している。株価は5月19日の年初来高値1044円後に一旦は上げ一服となったが、6月3日は前日比62円高の1028円と急反発した。16年3月期は増収増益予想で増額含みである。依然として指標面の割安感が強く上値追いの展開だろう。07年3月の上場来高値1350円も視野に入る。

 産業機器向けが主力の電源機器事業と半導体事業を展開している。パナソニック<6752>の持分法適用関連会社だが売上依存度は低い。生産は国内の滋賀工場、岡山工場、および中国で、海外生産比率は約20~30%である。

 電源機器事業では、太陽光発電用パワーコンディショナ、電力貯蔵システム用パワーコンディショナ、燃料電池シミュレータ電源、UPS(無停電電源装置)などのインバータを主力として、産業機器用の一般電源、メッキや自動車電着塗装などに強みを持つ金属表面処理用電源、アルミ溶接関連に強みを持つ溶接機器、映写機関連に強みを持つ光源用電源、および充電装置なども展開している。メッキ関連の国内市場シェアは5割強である。

 半導体事業では、パワーエレクトロニクス関連の一般モジュールを主力として、ディスクリート、ウェハ・チップなども展開している。15年3月にはパナソニックと共同で、複数のSiC(炭化ケイ素)トランジスタを組み込んだ業界最小のSiCパワーモジュールを開発した。SiCパワーデバイスは、従来のSi(シリコン)パワーデバイスを超える低損失動作を実現できるため、大電流・高電圧用途における省エネルギー化のキーデバイスとして注目されている。

 前期(15年3月期)の連結業績は、売上高が前々期比5.0%減の221億13百万円で、営業利益が同7.7%減の23億01百万円、経常利益が同11.3%減の22億89百万円、純利益が同8.8%減の15億06百万円だった。

 電源機器事業における需要減速や固定費増加などで減収減益だった。ただし各利益は期初計画を大幅に上回り、減益幅が計画より縮小した。半導体事業の売上が好調に推移し、構造改革効果も寄与して営業損益改善が想定以上となった。

 配当予想については同2円増配の年間17円(第2四半期末7円、期末10円)とした。配当性向は16.9%となる。なおROEは同2.2ポイント低下して8.5%、自己資本比率は同5.9ポイント上昇して66.6%となった。

 セグメント別に見ると、電源機器事業は売上高が同10.8%減の150億73百万円、営業利益が同36.7%減の13億53百万円だった。電力系統安定化電源や試験装置などの販売は増加したが、前々期の売上を牽引した太陽光パワーコンディショナの需要減速、滋賀工場新棟立ち上げに伴う償却負担、滋賀工場新棟の稼働遅延の影響などで減収減益だった。ただし期後半には滋賀工場の稼働が安定したようだ。

 なお主力製品の売上高は、無停電電源装置含むインバータが同20.9%減の56億76百万円、一般電源が同58.1%増の23億70百万円、金属表面処理用電源が同7.8%減の26億01百万円だった。

 半導体事業は、売上高が同10.5%増の70億39百万円で、営業利益が同2.7倍の9億47百万円だった。主力のパワーモジュールがインバータ、溶接機、商用エアコン、エレベータ向けなど国内外で好調に推移し、特にアジア市場で商用エアコン向けが大幅伸長した。生産性改善効果や円安メリットも寄与して増収増益だった。主力製品の売上高は一般モジュールが同18.1%増の52億93百万円だった。

 四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)45億94百万円、第2四半期(7月~9月)53億67百万円、第3四半期(10月~12月)55億34百万円、第4四半期(1月~3月)66億18百万円で、営業利益は第1四半期2億93百万円、第2四半期4億61百万円、第3四半期7億53百万円、第4四半期7億94百万円だった。期後半に営業損益改善が鮮明になった。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(5月8日公表)は、売上高が前期比10.8%増の245億円、営業利益が同21.7%増の28億円、経常利益が同22.3%増の28億円、純利益が同19.5%増の18億円、配当予想が同6円増配の年間23円(第2四半期末10円、期末13円)としている。

 電源機器事業における再生可能エネルギー関連の大型案件(独立行政法人産業技術総合研究所向けの太陽光シミュレーション電源装置)も寄与して増収増益予想だ。想定為替レートは1ドル=115円で、1円変動による為替感応度は営業利益段階で約15百万円としている。

 セグメント別の計画を見ると、電源機器事業は大型案件も寄与して売上高が同16.1%増の175億円、営業利益が同47.8%増の20億円、半導体事業は価格面でやや弱含みを想定して売上高が同0.6%減の70億円、営業利益が同15.5%減の8億円としている。

 主力製品の売上高は電源機器事業のインバータが同3.1%減の55億円、一般電源が同98.3%増の47億円、金属表面処理用電源が同9.6%増の28億50百万円、半導体事業の一般モジュールが同2.8%増の54億40百万円の計画だ。

 一段の生産性改善効果や足元のドル高・円安水準を考慮すれば、16年3月期会社予想は保守的な印象が強く、増額含みだろう。

 今後の事業展開としては、半導体事業では需要が拡大基調のパワーエレクトロニクス関連の市場環境変化にも対応しながら、組立工程完全自動化や設備稼働率適正化などにより収益力向上を目指す。新製品では15年3月に開発した超小型SiCパワーモジュールの拡販も期待される。

 電源機器事業では、創エネ・蓄エネ関連のインフラ系事業と各種生産設備用電源機器事業のバランスを意識しながら、中規模発電用太陽光パワーコンディショナ、系統安定化関連の無効電力補償装置や蓄電池内臓インバータ、UPS(無停電電源装置)など、国内市場向けインフラ系電源システムで主力製品・新製品の拡販を推進する。生産設備用電源では、金属表面処理用電源や溶接機のニッチ分野での新製品拡販、さらに銅箔・アルミ箔加工用など大型直流電源の海外展開も推進する。

 長年培った高度な技術力をベースに、電力系統安定化や電力小売全面自由化など電力・再生エネルギー関連分野の市場拡大も追い風として、中期的に収益拡大が期待される。

 株価の動きを見ると、業界最小SiCパワーモジュール開発を好感し、3月上旬に売買高を伴って動意づく形となり、安値圏500円台でのモミ合いから上放れた。そして強基調に転換して5月19日の年初来高値1044円まで上伸した。08年9月以来の1000円台だ。その後は目先的な過熱感を強めて一旦は上げ一服となったが、6月3日は前日比62円高の1028円まで急反発した。自律調整が一巡して上値を試す動きだ。

 6月3日の終値1028円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS120円46銭で算出)は8~9倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間23円で算出)は2.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1249円11銭で算出)は0.8倍近辺である。依然として割安感の強い水準だ。

 日足チャートで見ると25日移動平均線が追いつき、目先的な過熱感が解消して再動意の形となった。また週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインであり、月足チャートで見ると安値圏300円~700円近辺のボックスレンジから上放れた形だ。

 16年3月期は増収増益予想で増額含みである。指標面には依然として割安感が強く、強基調を確認して上値追いの展開だろう。07年3月の上場来高値1350円も視野に入る。

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