【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ラクーンは中期成長力を評価して4月高値試す

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ラクーン<3031>(東マ)は企業間電子商取引(EC)サイト運営を主力として事業領域拡大戦略を加速している。株価は4月高値1196円から利益確定売りで一旦反落したが、5月上旬の900円近辺で調整が一巡して下値を切り上げる展開だ。16年4月期も増収増益基調が予想され、中期成長力を評価して4月高値を試す展開だろう。なお6月10日に15年4月期の決算発表を予定している。

 アパレル・雑貨分野の企業間(BtoB)ECサイト「スーパーデリバリー」運営を主力として、クラウド受発注ツール「COREC(コレック)」事業、BtoB掛売り・請求書決済代行サービス「Paid(ペイド)」事業、売掛債権保証事業など周辺分野にも事業領域を広げている。

 15年1月末での企業間ECサイト「スーパーデリバリー」会員小売店数は14年4月末比2957店舗増加の4万3398店舗、出展企業数は同109社増加の1057社、商材掲載数は同1115点減少の45万2000点だった。14年12月にはアパレル大手のワールド、15年5月には多数の有名スポーツブランドアイテムを扱うゼットが出展した。

 なお5月15日に企業間ECサイト「スーパーデリバリー」において、15年8月中を目途に海外への販売を開始すると発表した。EC市場拡大に伴って海外からの問い合わせも増加しているため、全面的に開放して海外への販売を強化する。なおサービス開始にあたり、物流代行サービス会社と提携して新たな仕組みを開発する予定だ。仕組みの詳細については決まり次第速やかに公表するとしている。

 M&Aやアライアンスも積極活用している。14年11月に子会社トラスト&グロースがスタンドファームと業務提携した。スタンドファームのクラウド請求書管理サービス「Misoca」登録業者に対して売掛保証サービスを提供する。また14年12月にはトラスト&グロースがトラボックスと業務提携した。荷物を運んで欲しい人とトラック運送業者を結ぶオンライン物流サービス「トラボックス」登録会員に対して運賃全額保証サービスを提供する。

 そして15年3月には「Paid」加盟企業数が1200社を突破した。当初はアパレルや雑貨の卸メーカーが中心だったが、サービス改良によって業種・業態を問わず、あらゆるBtoB向けサービスに導入できるようになり、グラフィックが運営する「印刷の通販グラフィック」(15年1月現在で27万件の法人・個人会員登録)、GMOコマースが運営するO2O事業、三菱自動車工業<7211>の「三菱自動車 電動車両サポート」にも導入された。

 15年4月にはクラウド受発注ツール「COREC」ユーザー数が2000社(バイヤー1191社、サプライヤー809社)を突破した。会員ユーザーの業種別構成比は雑貨20%、アパレル13%、飲食料14%、IT12%、建築・設備3%、その他38%となっている。

 また15年4月には「COREC」と「Yahoo!ショッピング」の連携を発表した。発注にかかる作業時間や手間が大きく改善されるため「Yahoo!ショッピング」出店者のショップ運営業務が効率化される。また「COREC」利用頻度向上にも繫がるとしている。

 なお企業間ECサイト「スーパーデリバリー」流通に係る売上高に関して、従来は出展企業と会員小売店が「スーパーデリバリー」を通じて取引した金額を売上高計上(総額表示)し、商品仕入高も売上原価に計上していたが、15年4月期から、商品仕入高を売上高と相殺して表示する方法(純額表示)に変更した。この変更によって「スーパーデリバリー」流通に係る売上高は出展企業から徴収するシステム利用料売上となる。従来の総額表示に比べて見掛け上の売上高は減少するが利益に変更はない。

 前期(15年4月期)連結業績見通し(1月15日に増額)は売上高が前々期比6.1%増の20億50百万円、営業利益が同31.6%増の3億25百万円、経常利益が同33.1%増の3億30百万円、純利益が同62.6%増の2億円、配当予想(1月15日に増額)が同2円55銭増配の年間6円80銭(期末一括)としている。

 企業間ECサイト「スーパーデリバリー」流通額が順調に拡大し、売掛債権保証事業の保証残高も順調に増加しているようだ。利益面では「スーパーデリバリー」運営におけるコスト構造改革が順調に進展し、売掛債権保証事業で保証履行が抑制されていることも原価押し下げ要因となる。また「Paid」事業も加盟企業数増加に伴って収益改善が進展しているようだ。

 第3四半期累計(5月~1月)は前年同期比5.9%増収、同38.3%営業増益、同39.8%経常増益、同50.2%最終増益で、通期見通しに対する進捗率は売上高74.0%、営業利益78.2%、経常利益77.6%、純利益79.5%と順調な水準だった。

 なお四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(5月~7月)4億90百万円、第2四半期(8月~10月)5億06百万円、第3四半期(11月~1月)5億22百万円、営業利益は第1四半期57百万円、第2四半期93百万円、第3四半期1億04百万円と拡大基調である。

 今期(16年4月期)も増収増益基調が予想される。ECサイト「スーパーデリバリー」流通額は拡大基調である。14年9月ビジネスプラン課金開始したクラウド受発注ツール「COREC」事業の収益寄与が本格化し、売掛債権保証事業や「Paid」事業の一段の収益改善も期待される。ストック型の収益構造であり、中期的にも収益拡大基調だろう。

 株価の動きを見ると、4月高値1196円から利益確定売りで一旦反落したが、5月上旬の900円近辺で調整が一巡して下値を切り上げる展開だ。

 6月4日の終値1070円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS34円17銭で算出)は31倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間6円80銭で算出)は0.6%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS264円17銭で算出)は4.1倍近辺である。

 日足チャートで見ると一旦割り込んだ25日移動平均線を素早く回復した。また週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって強基調の形だ。16年4月期も増収増益基調が予想され、中期成長力を評価して4月高値を試す展開だろう。

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