マーチャント・バンカーズは調整一巡、22年3月期大幅営業・経常増益予想

 マーチャント・バンカーズ<3121>(東2)は投資事業とオペレーション事業を展開し、成長ドライバーとしてANGOO FinTech関連事業を強化している。21年3月期はオペレーション事業が新型コロナ影響を受け、ステーブルコインの売上が未計上となったため計画未達だったが、営業・経常増益だった。22年3月期は下期以降に経済活動の回復を見込み、マーチャント・バンキング事業の成長で大幅営業・経常増益、最終黒字予想としている。収益改善基調を期待したい。株価はモミ合いから下放れの形となったが、調整一巡して出直りを期待したい。

■マーチャント・バンキング事業とオペレーション事業を展開

 マーチャント・バンキング事業(国内外の企業および不動産向けの投資事業)と、オペレーション事業(宿泊施設・ボウリング場・インターネットカフェ店舗・服飾雑貨店の運営、病院食業務受託)を展開している。20年3月期の営業利益構成比(調整前)はマーチャント・バンキング事業が102%、オペレーション事業が▲2%だった。

 賃貸用収益不動産およびオペレーション事業によって安定的なキャッシュ・フローを獲得し、中期成長に向けて投資事業およびブロックチェーン技術を活用したANGOO FinTech関連事業を強化している。

■マーチャント・バンキング事業は企業・不動産向け投資

 マーチャント・バンキング事業は、国内外の企業および不動産向け投資を展開している。企業投資はブロックチェーン・AI・再生医療の3分野を重点的投資分野として、投資先とともに企業価値を創造するハンズオン型の投資を行う。

 企業投資実績としては、ブロックチェーンプラットフォーム開発のアーリーワークス、デジタルマーケティング支援のポイントスリー、ブライダル・ホテル運営のホロニック、見守り型介護ロボット開発のIVホールディングス、金属コーティング加工のCN Innovationsなどがある。

 不動産投資は、ネット利回り5%以上を期待できる大都市圏の賃貸用マンションやホテルを中心に物件を保有し、賃料収入を安定的に確保している。今後は新たな賃貸用不動産取得によって収益基盤強化を進めるとともに、不動産特定共同事業法にかかる許可を取得して多様な資金調達手段の確保に取り組む。

 20年8月には柏舟投資(香港の柏舟国際諮詢の子会社)と日本での不動産開発や不動産投資に関して業務提携、20年10月には香港の中港日有効發展有限公司と日本における中国・香港・ベトナムの富裕層向け投資用分譲マンションの開発・販売で業務提携、20年12月には特別目的会社MBK医療投資を設立して医療分野への投資の取り組みを強化すると発表した。また21年4月には香港証券取引所上場会社のL&A社と業務提携すると発表した。

■オペレーション事業は活性化を推進

 オペレーション事業は岐阜県土岐市の土岐ボウリング運営、愛媛大学医学部付属病院の病院食業務受託、東京都内2店舗のインターネットカフェ運営、子会社ケンテンの服飾雑貨店運営・ネット通販を展開している。

 子会社のケンテンは20年4月にラファンと協業し、巣ごもり消費に対応したネット販売を強化している。さらに催事・イベント企画なども寄与して、20年6月から10ヶ月連続で前年比増収を確保している。

 持分法適用関連会社のアビスジャパンは、LED照明・節水装置の製造・販売・設置工事を主力として、空き家対策事業、電力小売事業、新型コロナウイルス対策としての非接触式AI検温システムの販売も展開している。

 20年7月には人工知能分野の先進的企業であるiFLYTEKの日本法人AISと日本市場でのマーケティングで業務提携、20年11月にはアスミ建設と業務提携した。21年3月には反社会的勢力データベース「minuku」を構築・提供するセナードと業務提携し、企業のリスクマネジメントやコンプライアンスをサポートするシステムの企画・販売を開始した。21年5月には邦徳建設(千葉県松戸市)と業務提携した。同社が受注する建築工事について、特別目的会社や共同事業体を組成して必要資金を円滑に調達する。

■成長ドライバーとしてANGOO FinTech関連事業を強化

 成長ドライバーとしてブロックチェーン技術を活用したANGOO FinTech関連事業を強化している。具体的には、不動産などの資産に裏付けされたトークンを発行するSTO(Security Token Offering)など、ブロックチェーン技術を活用した決済・送金等の金融サービス、不動産の流動化、資金調達などを展開する。

 アーリーワークス(18年11月資本業務提携)のブロックチェーンプラットフォームを採用し、子会社MBKブロックチェーンがプロモーション活動全般の企画などによって業務受託料を得る。

 19年5月エストニアで仮想通貨交換所CRYPTOFEXを運営会社するCR社を買収、19年7月仮想通貨交換所のブランド名をANGOO FinTechに変更、20年2月ANGOO FinTechサービス開始、20年5月MBKブロックチェーンがANGOO FinTech運営業務を受託した。

 20年7月には、日本でセキュリティートークン関連のソリューション事業に取り組んでいるレヴィアスと、セキュリティートークン発行取引プラットフォームシステム関連業務での業務提携に基本合意した。また大手暗号資産交換所運営会社IDCM社と資本提携、および全世界での暗号資産関連業務での業務提携に関するMOUを締結した。

 20年10月にはバルティック・フィンテック・ホールディングス(BFH社)に対する出資比率を引き上げて子会社化し、ANGOO FinTech運営を移管してエストニアでの事業統括会社と位置付けた。エストニアを起点として、ブロックチェーン技術を活用した金融サービスや決済プラットフォーム事業を展開する。21年2月にはBFH社が、エストニアで暗号資産交換所「bitbaazi」を運営するinterakt techsol社と業務提携した。

 21年3月には、子会社MBKブロックチェーンがInteraktと共同開発したブロックチェーンベースの不動産取引プラットフォーム「MBK Realty」をリリースした。エストニアの暗号資産交換所ANGOO FinTechと連携して決済が可能になる。

 21年3月には香港の子会社MBK ASIA LIMITEDにおいてトークン「MBK COIN」を発行するとともに、不動産売買プラットフォーム「MBK Realty」の海外投資家専用不動産取引プラットフォームを構築した。さらにエストニアの子会社EJTC社が、米国Nasdaqがバルト3国で運営するNasdaq Tallinn証券取引所に上場した。

 21年4月には子会社MBKブロックチェーンが不動産取引プラットフォーム「MBK Realty」を応用して、お宝グッズのNFT(非代替可能性トークン)化・売買プラットフォーム「NFTバンカーズ」運営事業を開始した。

 21年5月には、暗号資産のハッキングやマネーロンダリングに対するセキュリティ技術を手掛けるStudioMakyuと業務提携し、決済手段としての暗号資産を活用または検討する企業に対して、アドバイザリー並びにシステム販売・開発事業に取り組むと発表した。

■22年3月期大幅営業・経常増益、最終黒字化予想

 21年3月期連結業績は、売上高が20年3月期比33.2%減の16億35百万円、営業利益が2.0%増の2億19百万円、経常利益が22.9%増の1億32百万円、親会社株主帰属当期純利益が44百万円の赤字(20年3月期は83百万円の黒字)だった。配当は1円増配の2円(期末一括)とした。

 マーチャント・バンキング事業は、投資収入の減少で27.2%減収だが、所有不動産からの賃貸収入および不動産投資収入が堅調に推移して28.0%増益だった。オペレーション事業は新型コロナ影響を受けたため39.7%減収で赤字だった。当期純利益は赤字だった。

 なおANGOO FinTech関連で、審査・プロモーション手数料として受領済みの米ドル連動型ステーブルコインの換金化が進まなかったため、売上高、利益とも計画未達だった。ただし全体として営業・経常増益だった。またホテル運営から撤退(20年11月)して減損損失1億59百万円を計上した。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高3億03百万円で営業利益39百万円の赤字、第2四半期は売上高3億63百万円で営業利益4百万円の黒字、第3四半期は売上高3億79百万円で営業利益38百万円の黒字、第4四半期は売上高5億90百万円で営業利益2億16百万円だった。

 22年3月期連結業績予想は、売上高が21年3月期比13.1%増の18億50百万円、営業利益が36.4%増の3億円、経常利益が50.5%増の2億円、親会社株主帰属当期純利益が1億30百万円(21年3月期は44百万円の赤字)としている。配当予想は21年3月期と同額の2円(期末一括)である。

 下期以降に経済活動の回復を見込み、マーチャント・バンキング事業の成長でホテル事業撤退の減収をカバーして大幅増収、大幅営業・経常増益、最終黒字予想としている。なおANGOO FinTech関連の米ドル連動型ステーブルコインの売上計上は業績予想に織り込まず、現金化の都度、売上計上する予定としている。収益改善基調を期待したい。

■株価は調整一巡

 なお17年9月発行の第15回新株予約権については、行使期間を21年9月22日まで延長している。

 株価はモミ合いから下放れの形となったが、調整一巡して出直りを期待したい。5月28日の終値は309円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS4円66銭で算出)は約66倍、今期予想配当利回り(会社予想の2円で算出)は約0.6%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS123円80銭で算出)は約2.5倍、時価総額は約86億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■グローバルモデルに匹敵する日本語対応の高性能生成AIを4月から順次提供  ELYZAとKDDI<…
  2. ■優勝への軌跡と名将の言葉  学研ホールディングス<9470>(東証プライム)は3月14日、阪神タ…
  3. ■新たな映画プロジェクトを発表  任天堂は3月10日、イルミネーション(本社:米国カリフォルニア州…
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■金先物と原油価格、史上最高値に迫る―地政学リスクが市場に与える影響  今週のコラムは、異例中の異…
  2. ■「虎」と「狼」の挟撃を振り切り地政学リスク関連株で「ピンチはチャンス」に再度トライ  東京市場は…
  3. ■海運株と防衛関連株、原油価格の動向に注目集まる  地政学リスクによる市場の不安定さが増す中、安全…
  4. ■中東緊張と市場動向:投資家の選択は?  「遠い戦争は買い」とするのが、投資セオリーとされてきた。…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る