【アナリスト水田雅展の銘柄分析】エスアールジータカミヤは調整の最終局面、収益拡大基調に変化なし

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 エスアールジータカミヤ<2445>(東1)は建設用仮設機材販売・レンタルの大手である。株価は14年のボックスレンジ下限に接近して調整の最終局面だ。中期経営計画目標値の下方修正で高成長イメージがやや後退した形だが、16年3月期は増収増益予想で収益拡大基調に変化はない。切り返しのタイミングだろう。

 建築・土木・橋梁用仮設機材、移動昇降式足場「リフトクライマー」や、子会社ホリーの太陽光パネル架台などの販売・レンタル事業を展開している。戦略商品として作業環境改善・作業効率向上につながる次世代足場「Iq(アイ・キュー)システム」の拡販を推進している。

 グループ力強化に向けた動きも積極化し、14年4月に海洋土木・港湾分野に実績を持つ土木・建築用仮設資材のアサヒ工業(大阪市)を子会社化した。15年4月には子会社ホリーの仮設営業部門を当社に移管し、仮設事業に関連する営業部門を統合した。グループの経営資源を集約して仮設事業におけるシナジーを高める戦略だ。

 海外展開では14年7月にホリーのベトナム新工場が竣工し、14年11月にはASEAN地域への事業展開に向けた地域統括会社としてタイに子会社SRGグローバル・ホールディングスを設立した。

 なお15年4月には関東エリアで次世代足場「Iqシステム」のテレビCMを開始した。9月末まで日本テレビ「真相報道バンキシャ!」関東ローカル限定で放送される。

 15年3月期のレンタル事業のブロック別売上比率は、関東が37%、関西が34%、東北が17%、中部が8%、九州が4%である。また主要受注案件には、関東では圏央道橋梁工事、首都高橋梁修繕工事、高層マンション大規模修繕工事、関西では新名神高速道路橋梁工事、東海道新幹線橋梁修繕工事、東北では放射線除染工事、中部では原子力発電所耐震化工事などがある。

 なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)79億25百万円、第2四半期(7月~9月)84億36百万円、第3四半期(10月~12月)90億72百万円、第4四半期(1月~3月)88億28百万円、営業利益は第1四半期4億33百万円、第2四半期11億22百万円、第3四半期8億06百万円、第4四半期7億37百万円だった。期後半に伸び悩んだようだ。

 15年3月期の配当性向は27.1%、ROEは14年3月期比1.7ポイント低下して19.8%、自己資本比率は同0.8ポイント上昇して26.3%だった。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(5月8日公表)は、売上高が前期比13.8%増の390億円、営業利益が同22.7%増の38億円、経常利益が同11.3%増の37億円、純利益が同12.5%増の23億30百万円としている。

 配当予想は年間10円(第2四半期末3円50銭、期末6円50銭)で予想配当性向は19.4%となる。15年1月1日付の株式2分割を考慮して換算すると前期の年間12円50銭に対して2円50銭減配の形だが、前期の期末には東証1部指定記念配当2円50銭を含んでいるため、普通配当ベースでは前期と同額となる。

 20年東京夏季五輪開催に向けた首都圏での再開発工事本格始動など建設投資は引き続き堅調に推移し、遅れていた土木・橋梁関連工事の着工も予想される。移動昇降式足場「リフトクライマー」などの販売が好調に推移し、次世代足場「Iqシステム」の販売・レンタルの本格化も寄与する。前期は電力会社による接続申込回答保留の影響を受けた太陽光関連事業も回復が期待される。レンタル資産の稼働率向上・効率的運用、レンタル価格の改善などで増収増益見込みだ。

 なお15年3月期連結業績が計画を下回ったことに伴い、5月19日に中期経営計画(15年3月期~17年3月期)の目標数値の下方修正を発表した。修正後の目標数値は17年3月期売上高420億円(販売事業247億60百万円、レンタル事業212億40百万円、内部消去40億円)で、営業利益は43億円、経常利益は42億円、純利益は27億60百万円とした。経常利益率10%以上、自己資本比率35%、ROE2桁台維持は据え置いた。販売事業では成長性を加速し、レンタル事業では収益性を追求する。3年間合計投資額は276億円としている。

 レンタル事業では収益性を追求し、営業活動の強化、価格の改善、土木関連分野での事業領域拡大、次世代足場「Iqシステム」への積極的な入れ替えを通じたレンタル機材の運用効率改善に取り組む。

 販売事業では成長性を加速する。国内仮設機材の旺盛な需要に対応して海外工場の生産能力とコスト競争力を強化する。環境関連分野では需要が一巡する太陽光パネル設置架台に続く販売事業の柱を育成するため、住宅用制震装置などの住宅関連分野、構造機材分野、さらに新たな環境関連事業の創出を図る方針だ。

 中期経営計画の目標値を下方修正したが、震災復興、社会インフラ補修・更新、都市再開発、学校や高層マンションの耐震補強、20年東京夏季五輪、リニア新幹線など事業環境は良好であり、中期的な収益拡大基調に変化はないだろう。

 株価の動き(14年12月5日付で東証1部市場指定、15年1月1日付で株式2分割)を見ると、1月~2月の高値圏1100円台から急反落して調整局面が続いたが、足元の年初来安値725円近辺で下げ渋りの動きを強めている。14年のボックスレンジ700円~800円近辺の下限に接近して調整の最終局面のようだ。

 6月16日の終値727円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS51円66銭で算出)は14倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は1.4%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS253円95銭で算出)は2.9倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると13週移動平均線が抵抗線の形だが、14年のボックスレンジ700円~800円の下限が下値支持線の形だ。中期経営計画目標値の下方修正で高成長イメージがやや後退した形だが、16年3月期は増収増益予想で収益拡大基調に変化はない。調整の最終局面であり、切り返しのタイミングだろう。

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