【アナリスト水田雅展の銘柄分析】エスプールは自律調整一巡して切り返し、15年11月期増収増益予想を評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 人材サービスのエスプール<2471>(JQS)はロジスティクス、障がい者雇用支援、スマートメーター、販売促進分野を中心に人材サービス事業を展開している。株価は急伸した5月の年初来高値1350円から反落したが、自律調整が一巡して1000円近辺から切り返す動きだ。15年11月期の増収増益予想を評価して5月高値を目指す展開だろう。なお7月2日に第2四半期(12月~5月)の業績発表を予定している。

 ビジネスソリューション事業(ロジスティクスアウトソーシング、障がい者雇用支援・就労移行支援サービス、フィールドマーケティングサービス、マーチャンダイジングサービス、販売促進支援業務、顧問派遣サービスなど)、人材ソリューション事業(コールセンター向け派遣、携帯電話販売員派遣、ストアスタッフ派遣など)を展開している。

 ロジスティクスアウトソーシングサービスはネット通販市場拡大が追い風であり、子会社エスプールロジスティクスが、ECサイト出店企業などの物流センター運営・発送代行サービスで新規顧客獲得を推進している。

 障がい者雇用支援サービスは、障がい者雇用促進法に基づいて大企業の障がい者雇用をサポートしている。子会社エスプールプラスが運営する企業向け賃貸農園「わーくはぴねす農園」の栽培設備販売収入と農園運営管理収入を収益柱としている。高付加価値サービスとして千葉県を中心に事業規模を拡大する方針だ。

 千葉県市原市「わーくはぴねす農園 市原ファーム」では23社の企業がサービスを利用し、14年6月新設の千葉県長南町「わーくはぴねす農園 茂原ファーム」も完売した。15年2月には第3農園となる山武農園を開設した。また15年4月には、知的障がい者の雇用を促進するため、年内に「わーくはぴねす農園」を3ヶ所増設すると発表した。

 15年2月には就労移行支援事業所「障がい者就職塾」千葉校を開設すると発表している。千葉校開設で「障がい者就職塾」のネットワークは5拠点となる。これまで4年間で約150名の知的障がい者が就職し、退職率が1%未満という高い定着率を誇っている。

 フィールドマーケティングサービスでは、電力会社が推進するスマートメーター関連業務を拡大する。14年9月に子会社エスプールエコロジーが一般建設業(電気工事業、電気通信工事業)の許可を取得し、移動通信キャリアの通信・ネットワーク機器の設置業務、電力計のスマートメーター化に関連したサポート業務の事業拡大を推進している。

 また15年3月には子会社エスプールエンジニアリングの設立と、大規模な工事を請け負うことができる特定建設業(電気工事業、管工事業)の許可取得を発表した。新会社設立に伴ってエスプールエコロジーが行っていた業務についても新会社に順次移管する。

 15年5月には、エスプールエンジニアリングが東京電力<9501>からスマートメーター設置業務を受注した。東京電力は20年度までに約2700万台のスマートメーター設置を予定し、このうちの約540万台分の入札で約24億円分の業務(工事履行期間15年7月1日~17年3月20日)の受注が決定した。今回の受注を皮切りに、確実に実績を積み上げて全国各地域での受注を目指す。

 人材ソリューション事業(子会社エスプールヒューマンソリューションズ)では、ファミリーマート<8028>のFC店舗向けに人材提供を一括で行う「人材サポートセンター」を設立し、コンビニエンスストア向けストアスタッフサービスを強化している。

 なお14年11月には販売促進支援業務に特化した子会社エスプールセールスサポートを設立している。マーチャンダイジング業務、クレジットカードなどの会員獲得業務、販売イベントブースの運営業務など、複数の事業部や子会社で提供していた販売促進支援業務を集約して、事業拡大と収益性向上を目指す戦略だ。

 今期(15年11月期)の連結業績予想(1月14日公表)は売上高が前期比10.5%増の73億円、営業利益が同9.4%増の2億26百万円、経常利益が同11.8%増の2億14百万円、純利益が同9.6%増の1億81百万円としている。配当予想は前期と同額の年間10円(期末一括)で予想配当性向は16.6%となる。

 セグメント別の計画は、ビジネスソリューション事業の売上高が28.2%増の34億68百万円、営業利益が46.1%増の4億10百万円、人材ソリューション事業の売上高が0.5%増の40億円、営業利益が17.8%減の2億55百万円としている。なお人材ソリューション事業からビジネスソリューション事業への業務移管(セグメント組替)の影響は売上高で約2億40百万円としている。

 第1四半期(12月~2月)は前年同期比11.5%増収だったが、営業利益が22百万円の赤字(前年同期は17百万円の黒字)、経常利益が24百万円の赤字(同14百万円の黒字)、純利益が27百万円の赤字(同10百万円の黒字)だった。

 業容拡大や新規事業強化に向けた人件費増加で営業赤字だった。障がい者雇用支援サービスにおける第3農園の開園遅れも影響した。ただしロジスティクスアウトソーシングサービスを中心に好調に推移して増収だった。セグメント別(内部取引・全社費用等調整前)に見ると、ビジネスソリューション事業は12.2%増収、50.4%営業増益、人材ソリューション事業は9.4%増収、21.6%営業減益だった。

 通期ベースで見ると、ロジスティクスアウトソーシングサービスは訪日外国人旅行客によるインバウンド消費増加やネット通販市場拡大が追い風であり、障がい者雇用支援サービス、スマートメーター関連業務、コールセンター業務などの主力事業が順調に拡大する。スタッフ採用難や人件費増加などを吸収して通期ベースでは好業績が期待される。

 なお東京電力から受注したスマートメーター設置業務が15年11月期連結業績に与える影響は現在集計中としている。本業務を開始するにあたり、事務所の開設や備品の準備など初期投資が発生する見込みとしている。

 15年1月に発表した新中期経営計画「Next2020-変化への挑戦」では、中期ビジョンとして「NO.1アウトソーシング・プロバイダー」を掲げている。社会貢献性・成長性の高い分野での事業展開、ニッチな分野・参入障壁の高い分野での事業展開を推進し、経営目標値は営業利益率5%の早期達成と20年度までに業界最高水準10%の達成、安定的かつ継続的な配当の実施、ROE最低5%堅持としている。高付加価値サービスが牽引して収益拡大基調だろう。

 株価の動きを見ると、スマートメーター設置業務受注を好感し、900円近辺から5月の年初来高値1350円まで急伸した。その後は利益確定売りで反落したが急伸前の水準まで下押すことなく、1000円近辺から切り返す動きだ。自律調整が一巡したようだ。

 6月17日の終値1070円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS60円37銭で算出)は17~18倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は0.9%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS251円66銭で算出)は4.3倍近辺である。

 日足チャートで見ると一旦割り込んだ25日移動平均線を素早く回復した。また週足チャートで見ると26週移動平均線が下値を支える形となって切り返している。そして13週移動平均線が26週移動平均線を上抜いて強基調に転換する動きのようだ。15年11月期の増収増益予想を評価して5月の年初来高値1350円を目指す展開だろう。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■更新前のスーパーコンピュータの約4倍の計算能力  富士通<6702>(東証プライム)は2月21日…
  2. ■両社の資源を有効活用しSDGsに貢献  伊藤忠商事<8001>(東証プライム)グループのファミリ…
  3. ■純正ミラーと一体化し、左後方の視界を広げる  カーメイト<7297>(東証スタンダード)は、純正…
2024年3月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

ピックアップ記事

  1. ■投資と貯蓄の狭間で・・・  岸田内閣の「資産所得倍増プラン」は、「貯蓄から投資へ」の流れを目指し…
  2. ■「ノルム(社会規範)」解凍の序章か?植田新総裁の金融政策正常化  日本銀行の黒田東彦前総裁が、手…
  3. ■「日経半導体株指数」スタート  3月25日から「日経半導体株指数」の集計・公表がスタートする。東…
  4. ■投資家注目の適正株価発見ツール  日銀の価格発見機能が不全になる可能性がある中、自己株式取得が新…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る