【株式評論家の視点】富士通の今期減益は戦力投資の増加によるのが主因で織込み済み、マイナンバーで買い妙味

株式評論家の視点

富士通<6702>(東1)は、ICT分野において、各種サービスを提供するとともに、これらを支える最先端、高性能かつ高品質のプロダクトおよび電子デバイスの開発、製造、販売から保守運用までを総合的に提供する、トータルソリューションビジネスを行っている。

テクノロジーソリューションでは、主として法人向けに、高度な技術と高品質なシステムプラットフォームおよびサービスを機軸として、ITを活用したビジネスソリューション(ビジネス最適化)をグローバルに提供している。ユビキタスソリューションでは、パソコンのスマートフォン連携や省電力、高速起動などの機能強化や、タブレット端末の展開、また日本市場においては、国内品質を武器とした商品ラインナップを揃えている。

デバイスソリューションでは、LSIと電子部品で構成され、同社グループの半導体事業会社である富士通セミコンダクターがデジタル家電や自動車、携帯電話、サーバなどに搭載されるLSIを提供しているほか、上場連結子会社である、新光電気工業、富士通コンポーネント、FDKなどが半導体パッケージをはじめとする電子部品のほか、電池、リレー、コネクタなどの機構部品を提供している。

前2015年3月期業績実績は、売上高4兆7532億1000万円(前の期比0.2%減)、営業利益1786億2800万円(同21.3%増)、純利益1400億2400万円(同23.7%増)と過去最高益更新。年間配当は8円(同4円増)を実施。システムインテグレーションやLSIが好調で、パソコンや携帯電話、ネットワークプロダクトの減少分を吸収。米ドル、英ポンドに対して円安が進行し、為替差損益の増加が寄与した。

今16年3月期業績予想は、売上高4兆8500億円(前期比2.0%増)、営業利益1500億円(同16.0%減)、純利益1000億円(同28.6%減)を見込んでいる。年間配当は8円継続を予定している。

サービス事業の拡大により、テクノロジーソリューションを中心に売上の微増加を計画しているが、足もとで米ドルに対するユーロ安が進んだことにより、パソコンなどユビキタスソリューションを中心に米ドル建ての部材調達コストの上昇の影響や、ビジネスモデルの変革を加速させるための戦略投資の増加で減益になる見通し。

株価は、マイナンバー制度導入に向けた製品を拡充することへの期待感を背景に3月25日に年初来の高値870円と買われた後、今期減益見通しを嫌気され643.2円と5月1日安値643.2円と調整。同月19日安値648.4円と売り直されて減益予想を織り込み下値確認から6月4日高値749.6円と上昇。その後、モミ合いとなっている。

今期減益予想は戦力投資の増加によるのが主因で、来期は増益に転じる可能性が高い。また、利益水準を勘案しつつ内部留保を十分留保できた場合には、自己株式の取得等利益の還元を行うとしており、当面24カ月移動平均線がサポートすると予想する。ここから大きく下押す場面があれば、中長期で買い妙味が膨らみそうだ。(株式評論家・信濃川)

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