【アナリスト水田雅展の銘柄分析】物語コーポレーションはモミ合い煮詰まり感、既存店売上好調で6月期末の株主優待も注目

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 物語コーポレーション<3097>(東1)は焼肉店やラーメン店を主力として飲食チェーンを展開している。株価は年初来高値圏でモミ合う展開だが煮詰まり感を強めている。既存店売上が好調であり、16年6月期の収益拡大を期待して4月高値4365円を目指す展開だろう。6月期末の株主優待制度の権利取りの動きも注目される。

 中部圏と関東圏を中心に飲食チェーンを直営とFCで全国展開している。郊外型立地を基本として、業態別には「焼肉きんぐ」などの焼肉部門、「丸源ラーメン」などのラーメン部門、「お好み焼き本舗」のお好み焼部門、寿司・しゃぶしゃぶ「ゆず庵」などの専門店部門を展開している。「焼肉きんぐ」は焼肉テーブルバイキング市場のトップブランドが特徴である。

 12年10月には中国・上海に「鍋源(GUO YUAN)」をオープンして海外初出店した。また15年4月には国内で当社初の繁華街型店舗となるプロトタイプ焼肉店「熟成焼肉 肉源」1号店を東京・赤坂にオープンした。

 15年3月末時点の店舗数は、全業態合計322店舗(直営163店舗、FC154店舗、海外5店舗)である。業態別には、焼肉部門が144店舗(直営93店舗、FC51店舗)、ラーメン部門が112店舗(直営33店舗、FC79店舗)、お好み焼部門が45店舗(直営21店舗、FC24店舗)、専門店部門が16店舗(直営16店舗)、その他部門が5店舗(中国直営5店舗)である。

 中期経営計画では、物語的大家族主義などピープルビジネスとしての「レインボー企業」を目指し、成長基盤確立に向けて優秀な人財の育成・確保、新業態開発、FC支援体制充実などに取り組んでいる。経営目標値には17年6月期の売上高470億31百万円、経常利益38億01百万円、店舗数442店舗(直営244店舗、FC198店舗)を掲げている。

 重点戦略としては、焼肉部門では「焼肉きんぐ」ブランドの浸透、美味しさとプレミアム感による顧客満足度向上、ラーメン部門ではサイドメニューの強化、「丸源ラーメン」ブランド化に向けた新たなフォーマットの構築、お好み焼部門では熟成リブロースステーキ「塊」による集客力向上、「お好み焼き屋」コンセプトの確立、専門店部門では寿司・しゃぶしゃぶ「ゆず庵」多店舗フォーマット化の推進、中国で展開する「鍋源」の新フォーマットでの出店などに取り組んでいる。

 今期(15年6月期)の連結業績予想(連結決算移行に伴って11月4日に公表)は、売上高が326億75百万円、営業利益が23億50百万円、経常利益が25億円、純利益が13億86百万円としている。配当予想(8月11日公表)は、前期比15円増配の年間50円(第2四半期末25円、期末25円)で、予想配当性向は21.6%となる。

 既存店が好調に推移し、積極的な新規出店も寄与して前期非連結実績との比較で21.7%増収、16.8%営業増益、19.0%経常増益、16.5%最終増益の見込みである。なお新規出店は49店舗(国内直営29店舗、FC20店舗)の期初計画だったが、40店舗(直営25店舗、FC15店舗)となる見込みだ。退店はFC2店舗の期初計画だったが、第3四半期累計で3店舗退店した。既存店売上は同101.1%の計画で、想定より好調に推移している。

 業態別売上高の計画は、焼肉部門が同17.9%増の193億53百万円、ラーメン部門が同5.2%増の43億51百万円、お好み焼部門が同20.3%増の24億04百万円、専門店部門が同2.0倍の38億75百万円、FC部門が同12.6%増の26億89百万円としている。

 第3四半期累計(7月~3月)は売上高が246億03百万円、営業利益が13億10百万円、経常利益が16億40百万円、純利益が8億04百万円だった。前年同期の非連結実績との比較で見ると25.1%増収、15.3%営業減益、2.8%経常増益、14.7%最終減益だった。

 新規出店は27店舗(国内直営19店舗、海外2店舗、FC6店舗)、退店は3店舗(国内直営1店舗、FC2店舗)で、既存店売上(国内直営)は前年同期比103.7%だった。業態別売上は焼肉部門が同19.4%増収、ラーメン部門が同9.7%増収、お好み焼部門が同23.4%増収、専門店部門が同91.8%増収、FC部門が同9.9%増収だった。

 新規出店の効果、既存店の好調、海外子会社の連結開始などで大幅増収だったが、新規出店費用、リニューアルや業態転換に伴う改装費用、食肉仕入価格の上昇、人件費や本社経費の増加、多店舗展開に向けた先行投資やフォーマット標準化遅れで業績が低迷している中国の子会社の連結開始が影響して営業減益だった。経常利益は為替差益が寄与して増益だった。純利益は固定資産除却損計上で減益だった。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(7月~9月)80億10百万円、第2四半期(10月~12月)78億68百万円、第3四半期(1月~3月)87億25百万円、営業利益は第1四半期5億36百万円、第2四半期2億19百万円、第3四半期5億55百万円だった。

 月次売上動向(国内直営店+FC店、前年比速報値)を見ると、15年5月は全業態全店122.7%、既存店106.6%(焼肉105.4%、ラーメン109.4%、お好み焼104.3%、専門店108.2%)だった。14年7月~15年5月累計では、全業態全店118.7%、既存店103.7%(焼肉103.1%、ラーメン105.2%、お好み焼101.9%、専門店103.9%)となった。リニューアル・業態転換、メニュー改定、新商品投入なども寄与して既存店売上が好調に推移している。

 通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高が75.3%、営業利益が55.8%、経常利益が65.6%、純利益が58.0%だった。新規出店の計画未達やロイヤリティー収入の減少などが影響して利益進捗率がやや低水準だったが、既存店が想定以上に好調のため第4四半期(4月~6月)の挽回が期待される。

 来期(16年6月期)については、積極的な新規出店、リニューアル・業態転換の効果、既存店の好調などで収益拡大基調だろう。

 なお株主優待制度については年2回、毎年6月末および12月末時点で1単元(100株)以上所有株主に対して実施している。100株以上所有株主に対してお食事ご優待券2500円相当またはお米2.5kg、300株以上所有株主に対してお食事ご優待券5000円相当またはお米5.0kg、600株以上所有株主に対してお食事ご優待券1万円相当またはお米10.0kg、900株以上所有株主に対してお食事ご優待券1万5000円相当またはお米15.0kgを贈呈する。

 株価の動きを見ると、動意づいた4月の年初来高値4365円から反落し、概ね3900円~4000円近辺の小幅レンジでモミ合う展開だ。ただし煮詰まり感を強めている。

 6月22日の終値3965円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS231円63銭で算出)は17~18倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間50円で算出)は1.3%近辺、実績PBR(第3四半期累計実績の連結BPS1676円09銭で算出)は2.4倍近辺である。

 週足チャートで見ると、サポートラインの13週移動平均線と26週移動平均線が接近した。モミ合い上放れのタイミングのようだ。6月期末の株主優待制度の権利取りの動きも注目される。16年6月期の収益拡大を期待して4月高値4365円を目指す展開だろう。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■グローバルモデルに匹敵する日本語対応の高性能生成AIを4月から順次提供  ELYZAとKDDI<…
  2. ■優勝への軌跡と名将の言葉  学研ホールディングス<9470>(東証プライム)は3月14日、阪神タ…
  3. ■新たな映画プロジェクトを発表  任天堂は3月10日、イルミネーション(本社:米国カリフォルニア州…
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■海運株と防衛関連株、原油価格の動向に注目集まる  地政学リスクによる市場の不安定さが増す中、安全…
  2. ■中東緊張と市場動向:投資家の選択は?  「遠い戦争は買い」とするのが、投資セオリーとされてきた。…
  3. ■節約志向が市場を動かす?  日本の消費者は、節約志向と低価格志向を持続しており、これが市場に影響…
  4. ■投資家の心理を揺さぶる相場の波  日米の高速エレベーター相場は、日替わりで上り下りと忙しい。とく…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る