【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ジオネクストは収益改善基調を評価して水準切り上げ本格化

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ジオネクスト<3777>(JQS)は収益柱を再生可能エネルギー事業にシフトし、15年12月期は営業黒字化予想である。第1四半期は赤字だったが、期後半に再生可能エネルギー事業の収益が本格寄与する。株価は25日に169円まで上伸して水準切り上げの動きが本格化している。収益改善基調を評価して14年4月以来の200円台を目指す展開だろう。

 14年4月にターボリナックスHDから現社名ジオネクストに商号変更した持株会社である。従来のIT関連事業(ターボリナックスのITソリューション関連)、環境事業(東環のビルメンテナンスサービス)に加えて、新規領域の再生可能エネルギー事業(エリアエナジーの太陽光発電・O&Mサービス、日本地熱発電の地熱・温泉バイナリー発電)、およびヘルスケア事業(仙真堂の調剤薬局・サプリメント事業)を展開している。先端医療関連の遺伝子治療研究所については15年2月の第三者割当増資で持分法適用関連会社に移行した。

 中期成長に向けた基本戦略としては、14年に開始した新規分野の再生可能エネルギー事業に収益柱をシフトし、従来のIT関連事業と環境事業の収益性を確保しつつ、新規分野のヘルスケア事業の拡大・収益化も目指す方針としている。

 再生可能エネルギー事業のO&M(Operation & Maintenance)は、太陽光発電所事業者から運用・保守・管理業務を受託するサービスだ。15年12月期第2四半期(4月~6月)の稼働開始を計画している。

 独自開発した最先端の24時間365日対応常時遠隔監視・制御システム、監視カメラによる犯罪防止のための常時監視、発電データの管理、官公庁への報告書の作成、保安規程に基づく定期点検の実施、草刈・除雪・太陽光パネル清掃といった発電所構内の管理、さらに地域の各種行事・イベントへの参加といった地域との共生までワンストップサービスで受託する。

 電力会社からの出力抑制要請(電力会社が必要に応じて太陽光発電で発電した電気の買い取りを制限できる制度)にも対応して、監視・制御センターでの遠隔操作で常時監視・制御するため、コスト低減と安全な運用が可能となる。既存の太陽光発電所からの受託件数増加が予想されているため、O&Mサービス収入をストック型ビジネスモデルの収益柱として育成する方針だ。

 また先端医療関連の遺伝子治療研究所は、パーキンソン病、ALS(筋委縮性側素硬化症)、アルツハイマー病を対象として、AAV(アデノ随伴ウイルスベクター)による遺伝子導入製剤の開発に取り組んでいる。

 遺伝子治療は、遺伝子または遺伝子を導入した細胞を人の体内に投与することにより病気を治療する最先端医療である。iPS細胞のようながん化のリスクもない。そして脳と脊髄の神経細胞に遺伝子を送達するために、ウイルスを遺伝子のベクター(運び屋)として使用する方法が優れているとされ、ウイルスの中でも非病原性のAAVが最も安全性が高く、今後の遺伝子治療においてはAAVが主流になるとされている。

 進行したパーキンソン病に対して、遺伝子治療研究所が開発に取り組んでいる新しい遺伝子治療戦略は、パーキンソン病においても脱落することなく残っている被殻内の神経細胞に、ドパミン合成に必要な酵素の遺伝子を導入してドパミン産生能を回復させる治療法だ。

 パーキンソン病を対象とする遺伝子導入製剤の開発に目途がつき、15年7月~9月期にセルバンクシステム(製剤生産の基本となる仕組み)が完成し、16年前半から前臨床試験、17年前半からフェーズⅠを開始する見込みとしている。注目度が高まりそうだ。

 今期(15年12月期)の連結業績予想(2月10日公表)は、売上高が前期比10.2倍の27億円、営業利益が1億50百万円(前期は1億75百万円の赤字)、経常利益が1億14百万円(同2億46百万円の赤字)、純利益が1億14百万円(同2億74百万円の赤字)の黒字化としている。

 再生可能エネルギー事業の太陽光発電関連(売電開始と発電所売却)およびO&Mサービスの本格稼働が牽引して営業黒字化見通しだ。太陽光発電所は買い取り価格32円/kWで19ヶ所が確定している。完成後に半数程度を売却してO&Mサービスを受託する計画だ。なお営業外費用では遺伝子治療研究所に対する持分法投資損失として36百万円を見込んでいる。

 セグメント別営業利益(全社費用等調整前)の計画は、既存分野のIT関連事業が32百万円、環境事業が22百万円、新規分野のヘルスケア事業が8百万円、再生可能エネルギー事業が2億42百万円としている。なお再生可能エネルギー事業では地熱発電を織り込んでいない。ヘルスケア事業は14年12月開業の仙真堂調剤薬局「八戸日赤前店」および15年4月開業の「八戸労災病院前店」が寄与する。

 第1四半期(1月~3月)は売上高が48百万円、営業利益が73百万円の赤字、経常利益が89百万円の赤字、純利益が91百万円の赤字だった。しかし、再生可能エネルギー事業の太陽光発電(売電開始と発電所売却)およびO&Mサービス、そして調剤薬局のヘルスケア事業の収益は、第3四半期(7月~9月)以降に本格寄与する計画であり、通期ベースでは収益改善基調が予想される。

 なお営業損失および営業キャッシュフローのマイナスが9期継続して発生しているため、継続企業の前提に疑義の注記が付されているが、営業損益と営業キャッシュフローの黒字化に向けて、顧客基盤の拡大、成長戦略に不可欠な人材の確保および協力会社の活用、財務体質の強化、内部統制の強化、法令順守体制の強化に取り組むとしている。

 14年2月発表の中期経営計画ローリングプラン(15年12月期~17年12月期)では、経営目標値として17年12月期売上高55億円、営業利益14億50百万円、経常利益14億円、純利益8億40百万円を掲げている。なお本計画では第15回新株予約権(14年12月発行)の行使は前提としていない。

 セグメント別(17年12月期、連結調整前)には、既存分野のIT関連事業が売上高1億20百万円、営業利益43百万円、環境事業が売上高1億30百万円、営業利益22百万円、新規分野のヘルスケア事業が売上高6億50百万円、営業利益1億40百万円、再生可能エネルギー事業が売上高46億円、営業利益14億25百万円の計画としている。ストック型ビジネスモデルのO&Mサービス収入が収益柱となり、全体を牽引する計画だ。

 IT関連事業と環境事業は規模拡大ではなく、付加価値の高い商品・サービスの提供で収益性を確保するとともに、再生可能エネルギー事業への人員活用などでシナジー効果も高める方針だ。ヘルスケア事業は、新株予約権行使による資金調達の状況に合わせて、東北地方や北関東地方を中心に調剤薬局6店舗程度を開設する方針としている。

 再生可能エネルギー事業の地熱・温泉バイナリー発電は、鹿児島県指宿市山川地区の2ヶ所において源泉使用権および発電機を設置する土地を取得済みである。16年前半に10ヶ所程度で売電を開始し、17年12月期に収益が本格化する計画だ。再生可能エネルギー事業におけるストック型ビジネスモデルが牽引して収益改善基調だろう。

 なお14年12月発行の第15回新株予約権340個(=3400万株)について、4月14日と5月21日に一部譲渡を発表している。割当先であるEVO FUNDから、S&BROTHERS(シンガポール)へ200個(=2000万株)(5月8日譲渡完了)、および当社第4位株主である須田忠雄氏へ35個(=350万株)譲渡した。

 株価の動きを見ると、3月安値122円を直近ボトムとして下値切り上げトレンドの形だ。そして6月25日には169円まで上伸した。急伸して付けた4月23日の年初来高値172円に接近し、水準切り上げの動きが本格化してきた。収益改善基調を評価する動きだろう。

 6月25日の終値166円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS2円85銭で算出)は58倍近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS27円00銭で算出)は6倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線がサポートラインの形だ。また週足チャートで見ると13週移動平均線と26週移動平均線を突破して強基調への転換を確認している。収益改善基調を評価して14年4月以来の200円台を目指す展開だろう。

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