JPホールディングスは反発の動き、22年3月期営業・経常減益予想だが上振れ余地

 JPホールディングス<2749>(東1)は総合子育て支援のリーディングカンパニーとして、子育て支援の質的向上と事業を通じた社会貢献を推進している。9月15日には、子会社の日本保育総合研究所が神奈川県下を中心とした保育所等訪問支援事業を9月1日から開始したと発表している。22年3月期は新人事制度導入やシステム導入など一時的要因の影響で営業・経常減益予想としている。ただし保守的な印象が強く上振れ余地がありそうだ。株価は下値固め完了して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。

■総合子育て支援のリーディングカンパニー

 総合子育て支援のリーディングカンパニーである。保育園を中心に、子育て支援の質的向上と事業を通じた社会貢献を推進している。事業区分は、認可保育園や学童クラブなどを運営する子育て支援事業を主力として、保育所向け給食請負事業、英語・体操・リトミック教室請負事業、保育関連用品の物品販売事業、研究・研修・コンサルティング事業なども展開している。

 21年3月期末の運営施設数は、保育園が212(認可保育園・公設民営が11、認可保育園・民設民営が177、認可外東京都認証保育所が19、認可外企業主導型保育事業が2、その他認可外保育園が4)、学童クラブが77、児童館が11、合計が301(20年3月期末は297)だった。首都圏を中心に展開している。また受入児童数は19年3月期末比258人増加の1万5581人だった。

 なお21年4月1日付で保育園5園(うち2園は東京都認証保育所から認可保育園に移行)、学童クラブ8施設、児童館1施設を新規開設している。

 収益は既存施設の稼働率、新規施設の開園、保育士待遇改善に伴う人件費の増加、補助金の増減などが影響する。また新規施設の開園は概ね4月のため、期前半は各施設への保育士配置に係る費用が先行するが、児童数が増加して稼働率が上昇する期後半に向けて収益が拡大する特性がある。

■24年3月期経常利益35億円目標

 中期経営計画(22年3月期~24年3月期)では重点目標に収益性・効率性の向上、健全性の向上、成長性の向上、目標数値に24年3月期売上高347億円、経常利益35億円を掲げている。

 収益性・効率性向上では、新たなプログラム(幼児学習プログラム、ダンス、アートなど)導入による受入児童数の拡大と競争優位性の確立、配置人数の適正化と運営オペレーションの効率化・ICT化の推進、経営管理・収益管理の体制強化、業務プロセス改革やシステム導入の加速による業務効率化を推進する。なお収益性が悪化した施設については閉園(21年3月末に東京都認証保育所4園および企業主導型保育園1園を閉園、22年3月末に東京都認証保育所1園を閉園予定)を進めている。

 健全性の向上では、社会・事業環境の変化を捉えた事業構造改革と経営基盤の強化を図るため、安全・安心な運営・管理体制と子育て支援のさらなる質的向上に向けた人材教育を確立する。

 成長性の向上では、子育て支援の取り組みを「待機児童対策」から「少子化社会への対応」として、新たな価値創造に向けたサービス・事業を開発・展開する。21年1月に資本業務提携して第1位株主となった学研ホールディングス<9470>との連携によって、新たな価値創造を目指す。さらにDX化によってグループ競争力の強化を推進する。21年6月には保育園向け知育プログラムとして学研式指導システム「もじかずランド」の導入を開始した。

 21年7月には、アイフリークモバイル<3845>の連結子会社であるアイフリークスマイルズと絵本アプリ「森のえほん館」のコンテンツを用いて、家庭におけるデジタル絵本の受容性および利用動向に関する共同研究の調査検討を実施(期間21年8月1日~22年2月28日)することで合意した。

 9月15日には、子会社の日本保育総合研究所が神奈川県下を中心とした保育所等訪問支援事業を9月1日から開始したと発表している。児童福祉法に基づいて、障害児が地域の中で差別されることなく、障害のない子どもたちとともに育ち、ともに学び合うことができるインクルーシブな社会の実現を目指す未来志向型の事業で、発達支援(療育)の専門知識のあるスタッフが、保育園・幼稚園・小学校など日常生活の場に定期的(月1~2回程度)訪問してサポートする。

■22年3月期営業・経常減益予想だが保守的で上振れ余地

 22年3月期の連結業績予想は、保育事業に関して自治体から受け取る補助金収入(保育士の借上社宅に対する補助金等)の表示方法を、従来の営業外収益に計上する方法から売上高に計上する方法に変更したため、8月12日に売上高と営業利益をそれぞれ5億円上方修正した。

 修正後の22年3月期の連結業績予想は、売上高が21年3月期(表示方法変更組替後)比0.6%増の337億円、営業利益が19.5%減の23億円、経常利益が22.0%減の23億円、親会社株主帰属当期純利益が2.7倍の14億50百万円としている。親会社株主帰属当期純利益は減損損失が一巡して大幅増益予想としている。配当予想は60銭増配の4円50銭(期末一括)としている。

 第1四半期(表示方法変更後)は売上高が前年同期比4.6%増の83億71百万円、営業利益が32.2%減の1億78百万円、経常利益が30.1%減の1億86百万円、親会社株主帰属四半期純利益が40.4%減の1億05百万円だった。

 新規施設開設(保育園3園、学童クラブ・児童館8施設)や既存施設での受入児童の増加で増収だが、新人事制度導入による賞与支給対象期間変更に伴う賞与引当金の増加、システム導入に伴う費用の増加など、一時的要因の影響(特殊要因費用として合計4億円計上)で減益だった。

 通期は、売上面では新型コロナ影響による在宅勤務の増加、出生率低下に伴う少子化の加速などで、0歳・1歳児の受入児童数が減少することを想定し、コスト面では新人事制度導入やシステム導入など一時的要因の影響で、営業・経常減益予想としている。ただし保守的な印象が強く上振れ余地がありそうだ。

■株価は下値固め完了して反発の動き

 22年4月4日に移行予定の新市場区分については、上場維持基準への状況に関する第一次判定結果として、プライム市場を選択できる旨の通知を受けている。この結果に基づいて新市場区分の選択申請に係る所定の手続きを進める。

 株価は下値固め完了して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。9月16日の終値は279円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS16円58銭で算出)は約17倍、今期予想配当利回り(会社予想4円50銭で算出)は約1.6%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS114円42銭で算出)は約2.4倍、時価総額は約245億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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