【どう見るこの相場】再生エネ株の「河野ロス」をリカバーしてLNG関連株が「つなぎ」役に再浮上余地

どう見るこの相場

 自民党の岸田文雄新総裁へのご祝儀相場は失速のままか?再生エネルギー関連株の株価大崩れに歯止めが掛かるのか?……前週27日付けの当コラムで期待したご祝儀相場の雲行きが怪しい。それもこれも、自民党の総裁選挙の一回目の国会議員投票で、本命視された河野太郎候補の獲得票が第3位と水を開けられ、決戦投票でも票が伸びず完敗したことにある。再生エネ株は、河野候補がエネルギー政策の目玉と位置付け肩入れしただけにこの「河野ロス」が響いた。その後の党役員人事も、派閥バランス重視の旧来型と不評で、株価下押し材料として懸念された。

 しかし岸田総裁自身、自らの特技は「人の話をよく聞くこと」と自負するのだから、「市場の声」にも耳を傾けてくれるかもしれず、マーケットを意識したトップ発言でもあればご祝儀ムードに一変するかもしれない。「河野ロス」で反落の再生エネルギー関連株も、菅首相の総裁選不出馬表明と河野候補の立候補表明以来、6割高と大駆けし往って来いとなっているだけに、セオリー通りここで値固めする間に「つなぎ」のエネルギー関連株に代打役をまかせエネルギーを貯め込めば出直りが期待できる。

 その「つなぎ」役の有力候補セクターとして浮上すると注目したいのが、LNG(液化天然ガス)関連株である。LNG関連株については、当コラムでは昨年2020年7月13日付けで取り上げた。当時は、米国の著名投資家のウオーレン・バフェットが、米電力大手の天然ガス輸送・貯蔵事業を約1兆円で買収することに合意したことをカタリスト(材料)とした。今回、再びLNG関連株に注目するのは、「河野ロス」の影響が限定的である上に、カタリストが、当時よりさらにワールド・ワイドでスケールもより大きいとみられるからだ。

 カタリストとしては、欧州市場を中心にしたLNG価格の高騰、中国の電力不足問題の深刻化、さらに10月30日から相次ぎ開催されるG20(20カ国・地域首脳会合)、COP26会議(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)で各国の脱炭素戦略「カーボン・ニュートラル」が加速されることなどが続く。

 このうちLNG価格高騰の背景は、基本的には世界的な需要拡大である。LNGは、石油、石炭に比べて温暖化ガスの排出が少なく石炭・石油火力発電から天然ガス発電への転換が進んでいた。一方、欧州の脱炭素戦略の主力は、再生エネルギーだが、この供給が不安定で、英国ではこの夏場から風が弱く風力発電が十分に機能せずカバーする形で天然ガス需要が増加した。

 また欧州へパイプラインで天然ガスを供給するロシアからの供給量も、パイプラインに関係する地政学リスクで不安定化し、これがLNG価格の高騰に拍車を掛けた。欧州でのLNG価格の上昇が、アジアにも波及した。とくに中国では、脱炭素戦略で石炭火力発電を抑制する一方で水力発電の不調も重なって電力不足となり、これがLNGの爆買いにつながり、各国が買い負けを回避する争奪戦となって価格高騰要因となった。

 日本でも、今年7月に公表された第6次エネルギー基本計画(素案)の電源構成では、再生エネルギーの電源比率が、現行目標の22~24%から2030年(野心的な見通し)に36~38%に引き上げられ、原子力は20~25%に据え置かれ、LNGは27%が20%に引き下げられたが、再生エネルギーの導入動向、原発の再稼働状況によっては、「つなぎ電源」としてのLNG発電の存在感が増す。一部では2020年代後半には世界的にLNG需給が逼迫し、2022年以降数千万トン規模の新規開発プロジェクトが見込まれるとの観測もある。

 これから日本を含む北半球は、冬の暖房需要シーズンを迎え、拡大する電力需要を石炭火力発電でカバーすると化石賞候補とされ兼ねず、LNG需要は高まり価格高騰が止まらない状況が想定される。ここは株価的にも「つなぎ銘柄」として「河野ロス」の圏外ポジションのLNG関連株に再トライするチャンスだろう。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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