【宮田修 アナウンサー神主のため息】曲がった張り紙に思う

■日本人の合理的ではない考え方を是非大事にしてほしい

宮田修 アナウンサー神主のため息 公共の施設などを訪れると壁に張り紙があります。特に最近この張り紙が微妙に曲がっていることが多いと感じるのですがいかがでしょうか。なんでそんなことが気になるのか、張り紙などそこに書かれていることがわかればそれで良いではないかと言われてしまいそうです。おっしゃる通りかもしれません。

でも、私は少し大げさに申し上げればこの張り紙の曲りを放置しているところに日本人の最近の変化、いやそうではなく日本人の堕落を見てしまうのです。

こんな経験があります。今から15年ぐらい前のことです。私は老神職から人助けですから後継者になってほしいと懇請を受け、神主になることを決意し、資格を取得するためある神社で実習をしていました。早朝、神社では神さまにお食事をお供えします。神饌と言います。三方(さんぼう)と呼ばれる台にお米やお酒、果物、野菜そして塩と水などを乗せ神さまの御食事として提供する。これが神饌です。

■神前のお供え作法にも日本人の心

この日も若い二人の神主がご神前にお供えしようとしていました。ここで私は驚いたのです。三方を神前に置く時、二人のうちの一人がご神前から10メートルぐらい離れたのです。何をするのかなと思っていたらご神前のすぐ近くにいる神主に三方の位置を指示しはじめたのです。きちんと真ん中に置かれているか、三方と三方同士の間隔は同じになっているかを見ているのです。もう少し右、ハイ宜しいですと声を出して指示しています。彼らは神さまの前に食事が置かれているだけでは満足しないのです。きちんと等間隔に美しく置かれていなければならないと考えるのです。そんなのどうでも良いではないか。そうかも知れません。

しかし、ここに私は日本という国の強さを見るのです。食事は食べるものです。従ってその目的に合致していればどのように置かれているかはそれほど大きな問題ではないかも知れません。食べることに支障がなければ宜しいのでしょう。合理的な考えです。しかし日本人はそうしません。ただ単に置くだけではない努力を日本人は傾けるのです。

こうした日本人のやり方は、いわゆる『職人の仕事』に通ずると思います。そこまで拘りますかと驚かされる仕事ぶりにあらわれるのです。かつて冷蔵庫や洗濯機などの電化製品を買い求めた時、保証書を私はすぐに廃棄していました。壊れることがありませんので必要なかったからです。ところが最近は違います。実によく壊れます。その度に修理を依頼することになります。修理が終わった後、訊いてみました。「なぜ最近は良く壊れるのですか」「海外で作っていますから」即座に修理担当者は答えました。「なるほどそれならメイドインジャパンではなく少し高くても良いからメイドバイジャパニーズを作ってくれませんか」と私は頼みました。値段が高くては売れないから無理なのでしょうが。

日本人の合理的ではない考え方を是非大事にしてほしいと思います(千葉県長南町の宮司、元NHKアナウンサー)。

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