アルコニックスは上値試す、22年3月期は再上振れの可能性

 アルコニックス<3036>(東1)は非鉄金属、電子材料、金属加工部品などを取り扱う商社で、商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」を目指している。22年3月期は上方修正して大幅増益予想としている。さらに再上振れの可能性が高いだろう。収益拡大を期待したい。株価は水準を切り上げて年初来高値を更新する場面があった。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。なお11月5日に22年3月期第2四半期決算発表を予定している。

■商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」

 非鉄金属、電子材料、金属加工部品などを取り扱う商社である。商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」を目指し、M&Aも積極活用して、非鉄金属の周辺分野も含めた川上(製造)~川中(流通)~川下(問屋)を網羅するビジネス展開を推進している。

■製造が利益柱

 報告セグメント区分は、商社流通の電子機能材事業(化合物半導体、電子材料、チタン製品、ニッケル製品、レアメタルなど)、商社流通のアルミ銅事業(アルミニウム製品、伸銅品、非鉄スクラップ、各種配管機材など)、製造の装置材料事業(非破壊検査装置、マーキング装置、カシュー樹脂、カーボンブラシなど)、製造の金属加工事業(精密機構部品、精密研削加工部品、精密金属プレス部品、金属加工部品など)としている。

 21年3月期のセグメント別構成比は、売上高では商社流通が78%(電子機能材28%、アルミ銅50%)で製造が22%(装置材料12%、金属加工10%)だが、経常利益では商社流通が39%(電子機能材30%、アルミ銅9%)で製造が61%(装置材料6%、金属加工55%)だった。レアメタル・レアアースの取り扱いが特徴とされているが、M&Aも積極活用して「非鉄金属の総合企業」を目指す成長戦略によって、利益面では製造、特に金属加工が柱に成長している。

■商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」

 中期経営計画(22年3月期~24年3月期、1年ごとに見直すローリング方式)では、24年3月期の目標値に経常利益96億円超、当期純利益67億円超、ROE13~15%程度、NET/DER1.0倍程度としている。3年間の投資総額はM&A・事業投資を中心に250億円~300億円としている。商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」を目指して積極投資を推進する。さらに資源循環型・環境配慮型社会の発展に貢献し、新たな「環境親和型ビジネス」の創出に挑戦するとしている。

 18年12月摩擦調整材カシューパーティクル製造販売の東北化工を子会社化してブレーキ関連市場に参入、19年2月カーボンブラシ製造販売の富士カーボン製造所を子会社化、19年7月メキシコFUJI ALCONIXがメキシコFNA社の自動車部品用精密金属プレス部品事業を譲り受け、19年10月香港でリチウムイオン電池材料事業の合弁会社を設立、19年11月中国で建設用仮設資材の輸入・製造・販売の合弁会社を設立した。

 20年3月子会社の平和金属を完全子会社化、20年8月子会社のアドバンストマテリアルジャパン(AMJ社)がタングステン化合物メーカーの台湾・Lianyou Metals社に出資、20年12月空調機器向け配管部品製造販売の富士根産業を子会社化、21年3月メキシコFUJI ALCONIXがメキシコFNA社から工場用地・建物を取得した。

 21年8月には、コーポレートベンチャーキャピタルファンド(仮称アルコニックスグローバルイノベーション投資事業有限責任組合、21年11月組成予定、ファンド総額30億円)、および運用子会社アルコニックスベンチャーズ(21年8月設立)の設立を発表した。先端材料・高成長事業および素材・モノづくりに関連のあるベンチャー企業または事業を投資先として成長支援し、投資先が生み出すアイデアや技術を取り込んで新規事業開拓と更なる業容拡大を目指す。

■22年3月期大幅増益予想、さらに再上振れの可能性

 22年3月期連結業績予想(第1四半期から収益認識に関する企業会計基準第29号適用のため前期比増減率は非掲載だが利益に影響なし、8月6日に上方修正)は売上高が1280億円、営業利益が85億円、経常利益が88億円、親会社株主に帰属する当期純利益が60億円としている。

 新基準へ組み替え後の21年3月期実績との比較で、売上高は21.1%増収、営業利益は51.2%増益、経常利益は53.9%増益、親会社株主に帰属する当期純利益は2.1倍増益となる。配当予想(9月28日に第2四半期末3円および期末3円の合計年間ベースで6円上方修正)は、21年3月期比6円増配の48円(第2四半期末24円、期末24円)としている。

 第1四半期は売上高が369億44百万円、営業利益が30億46百万円、経常利益が34億87百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が24億35百万円だった。新基準へ組み替え後の前年同期実績との比較で、売上高は65.4%増収、営業利益は2.6倍増益、経常利益は2.8倍増益、親会社株主に帰属する四半期純利益は4.4倍増益だった。

 半導体・IT関連が好調に推移し、自動車関連の需要も急回復した。セグメント別利益(経常利益)は、商社流通が4.2倍の20億40百万円(電子機能材が4.3倍の10億31百万円、アルミ銅が4.1倍の10億08百万円)、製造が92.3%増の14億31百万円(装置材料が3億59百万円増加して3億52百万円の黒字、金属加工が43.6%増の10億78百万円)だった。

 第1四半期の好調を受けて、第2四半期累計および通期の連結業績予想を上方修正した。第2四半期累計予想は、売上高が680億円、営業利益が50億円、経常利益が54億円、親会社株主に帰属する四半期純利益が37億円としている。

 通期セグメント別利益(経常利益)計画は商社流通が2.3倍の51億円(電子機能材が64.8%増の28億円、アルミ銅が4.3倍の23億円)、製造が5.9%増の37億円(装置材料が3.0倍の10億円、金属加工が14.5%減の27億円)としている。

 修正後の通期予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が28.9%、営業利益が35.8%、経常利益が39.6%、当期純利益が40.6%と高水準である。新型コロナ感染再拡大や半導体供給不足の影響など、不透明感を考慮して下期を保守的に想定しているが、再上振れの可能性が高いだろう。収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は3月末の株主対象

 株主優待制度は、毎年3月末時点の株主を対象として、保有株式数および保有期間に応じて贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は上値試す

 株価は水準を切り上げて年初来高値を更新する場面があった。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。10月25日の終値は1712円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS239円66銭で算出)は約7倍、今期予想配当利回り(会社予想48円で算出)は約2.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1709円55銭で算出)は約1.0倍、時価総額は約446億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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