LibWorkは反発の動き、22年6月期大幅増収増益予想で収益拡大基調

 LibWork<1431>(東マ)は熊本県を地盤として九州圏および首都圏に展開する注文住宅メーカーである。デジタルマーケティングによる独自の集客手法を特徴として、M&Aも活用した全国展開や住宅版SPAモデルへの進化を目指している。22年6月期は受注好調で大幅増収増益予想としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。なお新市場区分に関して12月21日にグロース市場選択・申請を決議し、併せて「事業計画及び成長可能性に関する事項」をリリースしている。株価は地合い悪化の影響を受ける場面があったが、調整一巡して反発の動きを強めている。成長力を評価して出直りを期待したい。

■熊本県を地盤として全国展開を目指す注文住宅メーカー

 熊本県を地盤として九州圏(熊本県、佐賀県、福岡県、大分県)および首都圏に展開する注文住宅メーカーである。第一次取得層を主ターゲットとして、省エネ性能に優れた住宅を提供している。またMUJI HOUSEとネットワーク加入契約(フランチャイズ契約)し、熊本エリアと福岡エリアで独占営業権を取得して「無印良品の家」も提供している。

 全国展開を目指し、20年7月にタクエーホーム(横浜市)を子会社化して首都圏に進出した。21年10月には千葉店(千葉市)をオープンし、21年11月には東京オフィスを開設した。また21年10月には、福岡市西区にある九州最大級の総合展示場「hitマリナ通り住宅展示場」への新規出展契約を締結した。22年5月営業開始予定で福岡エリア3拠点目となる。今後の出店戦略としては、関東への出店を加速するとともに、23年6月までに全国の店舗網を25店舗(21年3月現在16店舗、本店含む)に拡大する方針である。

 なお一般社団法人住宅性能評価・表示協会の発表によると、20年8月末時点のBELS(評価機関が省エネルギー性能の評価・表示を行う第三者認証制度)申請数の住宅分野において、設計者では全国5389社中の34位、施工者では全国5915社中の44位となっている。

 21年10月には、EYアントレプレナー・オブ・ザ・イヤー2021ジャパンにおいて、瀬口力代表取締役社長が九州地区代表アントレプレナーおよびAccelerating部門大賞として選出された。

■デジタルマーケティングによる独自の集客手法が特徴

 一般的な常設展示場(モデルハウス)への集客ではなく、戸建関連カテゴリーポータルサイト(e土地net、e注文住宅net、e平屋net、e建築士net)などによるデジタルマーケティングによる独自の集客手法を特徴として、大幅なコストダウンを実現している。WEBはエリアに依存しないため全国展開も容易になる。またポータルサイトの広告掲載料と仲介手数料を不要としているため、多数の最新の土地情報が集まりやすい。

 20年1月に開設したYouTubeチャンネル「LibWork ch」の活用も推進する。21年9月には登録者数が3万人を突破した。23年までに10万人の登録を目指している。なお「LibWork IRチャンネル」も開設している。

■新商品開発ではコラボ戦略を活用

 新商品共同開発では、19年11月にグリムス<3150>の子会社グリムソーラーと提携、20年3月にアダストリア<2685>と提携、20年12月に「Afternoon Tea」ブランドのサザビーリーグと提携した。

 21年9月には、サスティナブルな暮らしをコンセプトにコラボ商品として共同開発した戸建て新ブランド「Afternoon Tea HOUSE」を大分市に開設して営業開始した。なお関東初出店となる千葉店のモデルハウスも、千葉北住宅公園(仮称)に「Afternoon Tea HOUSE」ブランドでの出店を予定している。

■23年6月期株式時価総額500億円目指す

 デジタルマーケティングをコアコンピタンスとする住宅テック企業として、20年1月策定の経営ビジョン「VISION2030」の達成(毎年売上20%成長を基本とした安定的・永続的な成長)を目指している。

 20年8月策定の中期経営計画「NEXT STAGE 2023」では、定量目標値として、23年8月期の株式時価総額500億円、売上高150億円(20年6月期比2.5倍)、営業利益12億円(同8倍)、ROE25%(同3.4倍)を掲げている。

 成長戦略として全国展開の加速、デジタル集客の拡大、住宅版SPAモデル確立、サブスクリプションモデルによる全国の工務店・ビルダー支援事業の収益化を推進している。

 定量目標値以外のKPIは、戸建売上総利益率35%(20年6月期実績28%)、店舗数25店舗(同12店舗)、Web集客数毎年50%増加、YouTubeチャンネル登録数10万人、サブスクリプション工務店支援事業(20年6月経済産業省中小企業庁の新連携支援事業に採択)の営業利益1億円としている。

 全国展開の加速では、エリア・店舗数の拡大(20年6月期の合計12店舗を23年6月期25店舗に拡大)による日本全国への出店、ショッピングモール向け新ブランド「sketch」の展開を推進(23年6月期売上高20億円目標)する。

 デジタル集客の拡大では、戸建関連カテゴリーポータルサイトの充実・拡大、戸建カテゴリーに特化した集客サイトや他社建売物件仲介サイトなど新規サイトのリリース、YouTubeチャンネル「LibWork ch」の活用を推進する。

 なお「e土地net」を全面リニューアルするとともに、関東圏における集客活動を強化するため「e土地net 神奈川版」および「e土地net 千葉版」を開設している。また「住宅業界のAmazon」を目指すべく、建売物件に特化した不動産仲介プラットフォーム「e建売net」を立ち上げて仲介事業も開始した。

 住宅版SPAモデル確立では、主要5工事(給排水設備工事、基礎工事、建て方工事、サイディング工事、地盤改良工事)の内製化により、戸建売上総利益率を35%まで高めるとともに、自社独自工法の開発を開始する。21年5月には東京理科大学と「新構造技術を用いた木造住宅耐震化向上」を目的とする共同研究開発契約を締結した。

 また、今までにないイノベーティブな「家」として3Dプリンター住宅「DEEPα」の研究開発に着手し、21年11月に家所亮二建築事務所とのデザイン業務委託契約締結を発表した。22年12月までにコンパクトな3Dプリンター住宅の試作品を完成させる予定だ。クリエイティブなデザイン表現やコスト削減・工期短縮が可能になり、建設業界の人手不足という課題の解決にもつながる。

 サブスクリプションモデルによる全国の工務店・ビルダー支援事業の収益化では、AIを活用した全国の工務店・ビルダー支援システムを開発し、全国の工務店にサービス展開する方針だ。

■SDGs宣言

 SDGsへの取り組みを強化するため内閣府が設置した「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」に参画している。21年3月にはSDGs宣言を行い、サスティナブルな住まいづくりを通じて、豊かな暮らしと幸せの実現、地球環境への配慮に貢献する方針を打ち出した。また、一般社団法人熊本県こども食堂ネットワークへの寄付、グリムスソーラーと共同で商品化した太陽光発電システム導入費用が無料となる「Lib Work Solar Free」の提供開始も発表した。

 21年4月には、国土交通省が行う社会実験のIT重説実施時における「重要事項説明書等の電磁的方法による交付」の登録事業者として認定され、宅地建物取引の売買時においても「IT重説」および「電子書面交付」を開始した。DXを推進して、SDGs番号8「働きがいも、経済成長も」およびSDGs番号12「つくる責任、つかう責任」にも寄与できるとしている。21年8月には熊本県が21年1月に創設した熊本県SDGs登録制度に申請し、第1期の登録事業者として登録された。

■22年6月期大幅増収増益予想

 22年6月期の連結業績予想(収益認識基準適用、損益への影響なし)は、売上高が21年6月期比54.2%増の145億円、営業利益が78.7%増の8億70百万円、経常利益が51.0%増の8億80百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が61.5%増の5億44百万円としている。

 第1四半期は、売上高が前年同期比93.2%増の19億55百万円、営業利益が2億22百万円の赤字(前年同期は1億95百万円の赤字)、経常利益が2億10百万円の赤字(同1億78百万円の赤字)、親会社株主帰属四半期純利益が1億53百万円の赤字(同1億39百万円の赤字)だった。

 強みとするデジタルマーケティングの促進などで受注棟数が56%増と大幅伸長した。売上高は第1四半期として過去最高を更新した。各利益は概ね計画水準で着地した。なお戸建住宅の引き渡し時期の関係で、業績は第2四半期(10月~12月)と第4四半期(4月~6月)に偏重する収益特性がある。

 第1四半期の受注好調を受けて第2四半期累計連結業績予想を11月10日に上方修正している。従来予想に対して売上高は1億70百万円、営業利益は91百万円、経常利益は1億06百万円、親会社株主帰属四半期純利益は66百万円それぞれ上回り、売上高が前年同期比40.1%増の63億70百万円、営業利益が0.5%増の2億53百万円、経常利益が11.2%減の2億63百万円、親会社株主帰属四半期純利益が1.3%減の1億61百万円としている。受注が順調であり、ウッドショックによる資材価格高騰の影響が期初時点の想定よりも限定的となり、粗利益率が想定以上に改善する見込みだ。

 通期予想は据え置いている。コロナ禍や木材価格高騰など不透明感があるが、強みとしているデジタルマーケティング集客の強化、関東エリアへの本格進出などで受注が大幅に拡大する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■配当は四半期配当、株主優待制度は保有期間・株式数に応じて贈呈

 配当は四半期配当を行っている。株式分割(20年1月1日付株式2分割、20年10月1日付株式2分割、21年4月1日付株式2分割)換算後で比較すると、20年6月期の4.5円(上場記念配当含む)に対して、21年6月期は4.575円、22年6月期予想は5円60銭としている。

 株主優待制度は、各四半期(9月、12月、3月、6月)末時点の株主を対象として実施(詳細は会社HP参照)している。21年6月期以降は保有期間および保有株式数に応じて、株主優待ポイントおよびクオカードを贈呈するとした。なお21年9月末対象から一部変更して大口保有株主へのポイント付与率を向上させた。

■株価は反発の動き

 22年4月4日移行予定の新市場区分については、上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果でグロース市場適合を確認し、21年12月21日開催の取締役会においてグロース市場選択・申請を決議した。所定のスケジュールに基づいて手続を進める。

 株価は地合い悪化の影響を受ける場面があったが、調整一巡して反発の動きを強めている。成長力を評価して出直りを期待したい。12月23日の終値は859円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS24円10銭で算出)は約36倍、今期予想配当利回り(会社予想の5円60銭で算出)は約0.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS149円35銭で算出)は約5.8倍、時価総額は約200億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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