Jトラストは調整一巡、21年12月期黒字転換予想で22年12月期も収益拡大基調

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 Jトラスト<8508>(東2、新市場区分スタンダード)は日本、韓国・モンゴルおよびインドネシアを中心とする東南アジアで金融事業を展開し、成長加速に向けて事業ポートフォリオを再編している。21年12月期は黒字転換予想としている。さらに22年12月期もポートフォリオ再編で収益拡大基調を期待したい。4月4日移行予定の新市場区分についてはスタンダード市場に移行する。株価は地合い悪化の影響で上値を切り下げる形となったが、調整一巡して出直りを期待したい。なお2月14日に21年12月期決算発表を予定している。

■日本、韓国・モンゴル、東南アジアで金融事業を展開

 日本、韓国・モンゴルおよびインドネシアを中心とする東南アジアで金融事業(銀行、信用保証、債権回収、その他の金融)を展開している。

 グループビジョンに「既成概念にとらわれないファイナンシャルサービスを提供する企業体を目指す」を掲げ、国内外におけるM&Aも積極活用して、銀行業および債権買取回収事業を中核とする総合金融サービスの提供を目指している。

 20年12月期のセグメント別営業利益は、日本金融事業が48億60百万円(決算期変更で9ヶ月決算の19年12月期は30億82百万円)、韓国・モンゴル金融事業が3億30百万円の赤字(同21億60百万円の黒字)、東南アジア金融事業が55億41百万円の赤字(同46億67百万円の赤字)、投資事業が16億51百万円の赤字(同17億68百万円の赤字)、その他事業が1億61百万円の赤字(同4億07百万円の赤字)だった。なお収益はM&A・事業再編・不良債権処理などで大幅に変動する可能性がある。

■成長加速に向けて事業ポートフォリオ再編

 成長加速に向けて事業ポートフォリオ再編を推進している。子会社売却に伴って増加する換価性の高い資産は、積極的なポートフォリオ再編に活用する。

 日本金融事業では、20年11月にNexus Bank<4764>(旧SAMURAI&J PARTNERS)と株式交換によって、JトラストカードおよびJトラストカードの子会社である韓国・JT親愛貯蓄銀行を連結除外とした。またNexus BankのA種優先株式を引き受けた。Jトラストカードの連結除外によって日本国内でのカード事業から撤退した。

 今後の日本金融事業は、日本保証の保証業務、パルティール債権回収の債権回収業務を両輪として展開する。日本保証は保証商品拡充に向けて、寄付型クラウドファンディング大手のCAMPFIREと融資型クラウドファンディングにおいて業務提携している。パルティール債権回収は信販系大手カード会社等からの債権買取回収を推進する。また21年8月には子会社Frontier Capitalを設立してファクタリング事業を開始した。

 なお1月12日にNexus Bankを株式交換によって完全子会社化(22年4月1日予定)すると発表した。Nexus Bankおよび傘下の子会社3社(SAMURAI TECHNOLOGY、Nexus Card、JT親愛貯蓄銀行)が特定子会社となり、Nexus Bankは22年3月30日付で上場廃止予定である。

 また1月19日には、特定子会社でクラウドファンディング事業のLCレンディングを解散(22年5月31日予定)すると発表した。既存ファンドに関する投資家への償還が完了したため当該事業を終了する。業績への影響は軽微としている。

 韓国およびモンゴル金融事業では、韓国・JT親愛貯蓄銀行を直接親会社のJトラストカードと一緒に売却した。その後、韓国・JTキャピタルの全株式を韓国・VI金融投資に譲渡(CK株式譲渡)、および韓国・JT貯蓄銀行の全株式を韓国・VI金融投資もしくは許容された譲受人に譲渡(SB株式譲渡)する基本合意書を締結し、今後の韓国およびモンゴル金融事業は、韓国のTA Assetが債権回収業務、モンゴルのJトラストクレジットNBFIが割賦業務を展開する方針とした。

 韓国・JTキャピタルについては21年8月に全株式の譲渡を完了し、韓国・JTキャピタルおよびその子会社が連結子会社から除外された。なお韓国・JT貯蓄銀行については、株式売買契約締結期限(21年11月30日)までに契約内容の合意に至らなかったため、11月30日に株式譲渡中止を発表した。連結業績への影響は精査中としている。

 東南アジア金融事業は、Jトラスト銀行インドネシア(BJI)が銀行業務、Jトラストオリンピンドマルチファイナンス(JTO)がマルチファイナンス業務、Jトラストインベストメンツインドネシア(JTII)が債権回収業務、カンボジアのJトラストロイヤル銀行(JTRB、19年8月に商業銀行ANZRoyalBankを子会社化して商号変更)が銀行業務を展開している。

 JTRBは、21年1月に人事評価機関であるHR Asiaの2020HR ASIA AWARDにおいて「2020 Best Companies to work for in ASIA」(アジアを代表する働き方のベストカンパニー)を受賞した。21年11月には、英国の著名な国際ビジネス誌であるGlobal Business Outlook(GBO)から「MOST CUSTOMER CENTRIC BANK―CAMBODIA2021」を受賞した。顧客への商品知識・専門的な対応・優れたサービスの提供、社会的責任等の基準で評価された。

 BJIは21年11月に飯田グループのインドネシアの住宅開発・販売会社と住宅販売に係る業務提携契約を締結した。今後も、インドネシア各地に事業展開している飯田グループ各社と業務提携を順次締結し、飯田グループが提供する住宅を購入する顧客を対象に住宅ローン商品を提供する予定である。

 またBJIは21年12月にAsuransi Jiwa Sequis Financialと、生命保険・医療保険の販売を視野に入れた包括的業務提携契約を締結した。インドネシア当局の認可を踏まえて22年1月からの販売開始を計画している。なお21年12月にはBJIの取締役社長が「2021年度のインドネシアベストリーダー賞」を受賞したと発表している。

 投資事業はJトラストアジアが展開している。なおJトラストアジアは販売金融事業のタイGL社に出資したが、17年10月にタイGL社CEO此下益司氏がタイSECから偽計および不正行為で刑事告発された。このため現在はタイGL社、此下益司氏、およびGLの関連取締役に対して、刑事告発手続き、会社更生法申し立て・補償請求・賠償請求などの訴訟を提起している。

 GL社に対する訴訟の解決・債権回収が課題となっていたが、勝訴判決に基づいて履行を受けるなど解消に向けた動きが進展している。シンガポールにおいては控訴裁判所の判決(20年10月)に基づいて債権回収が進展している。

 タイにおける控訴審判決では21年3月にJトラストアジアによる権利行使は適法であるとしてGLの請求を棄却するとともに、GLに対して訴訟費用および弁護士費用の支払いを命じている。なおGLに対する会社更生の申し立てについては、最高裁判所において21年12月22日付で申し立てが却下されたが、民事訴訟については第1審の審理が継続している。

 英領バージン諸島においては21年5月、控訴裁判所が昭和ホールディングスによる上訴を棄却した。日本では21年6月、A.P.F.GROUP、昭和ホールディングス、ウェッジホールディングスに対して、24.3百万米ドルの支払いを求める損害賠償請求訴訟を東京地裁に提起した。キプロスにおいては21年8月、此下益司氏ならびにキプロス所在4社に対して約130百万米ドルの賠償を求める訴訟を提起し、裁判所が被告らに対する全世界的資産凍結命令を発令した。

 非金融のその他事業ではJトラストシステムがITシステム事業を展開している。

 KeyHolder<4712>については、保有する同社株式の一部を、ミクシィ<2121>が設立したミクシィエンターテインメントファンド1号投資事業有限責任組合など5社に譲渡(20年12月)した。引き続き当社が筆頭株主となるが、KeyHolderおよび同社の連結子会社は持分法適用関連会社に異動した。

■21年12月期は再上振れの可能性、22年12月期も収益拡大基調

 21年12月期の連結業績(IFRS)予想(5月13日に上方修正)は、営業収益が20年12月期比6.9%増の421億01百万円、営業利益が55億03百万円の黒字(20年12月期は19億53百万円の赤字)、税引前利益が82億55百万円の黒字(同1億84百万円の赤字)、親会社所有者帰属当期純利益が20億円の黒字(同53億42百万円の赤字)としている。配当予想は復配の1円(期末一括)である。

 第3四半期累計は、営業収益が前年同期比5.5%増の306億24百万円、営業利益が78億27百万円の黒字(前年同期は13億01百万円の赤字)、税引前利益が83億60百万円の黒字(同15億48百万円の赤字)だった。

 日本金融事業の堅調推移、韓国およびモンゴル金融事業の貸出残高増加、東南アジア金融事業の収益改善(営業赤字縮小)、GL社に対する訴訟の勝訴判決に伴う投資回収(その他収益に受領額78億47百万円を計上)などで、営業・税引前利益が黒字転換した。なお韓国およびモンゴル金融事業ではJT貯蓄銀行を継続事業として取り扱っている。

 セグメント別営業利益は、日本金融事業が日本保証における貸倒引当金繰入額の減少などで5.9%増の36億29百万円、韓国およびモンゴル金融事業が貸出残高の増加などで41.7%増の28億04百万円、東南アジア金融事業が前期計上の有価証券売却損一巡や訴訟損失引当金の取り崩しなどで赤字縮小(前年同期43億22百万円の赤字、今期29億81百万円の赤字)、投資事業が勝訴判決の履行で60億28百万円の黒字(同12億23百万円の赤字)、その他事業が22百万円の赤字(同1億64百万円の赤字)だった。

 なお親会社所有者帰属四半期純利益については、投資有価証券に対する売却損益や評価損益の計上、売却を予定しているJT貯蓄銀行に対する税効果、JTキャピタル株式譲渡に係る株式売却損(25億42百万円、通期予想に織り込み済み)計上などで0.3%減の24億05百万円だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上収益が108億67百万円で営業利益が44億円、第2四半期は売上収益が114億73百万円で営業利益が27億60百万円、第3四半期は売上収益が82億84百万円で営業利益が6億67百万円だった。

 通期のセグメント別営業利益の計画は、日本金融事業が36億円、韓国およびモンゴル金融事業が26億円、東南アジア金融事業が43億円の赤字、投資事業が53億円、その他が2億円の赤字としている。

 事業ポートフォリオ再編を進めているため通期予想を据え置いたが、第3四半期累計の進捗率は営業収益が73%、営業利益が142%、税引前利益が101%、親会社所有者帰属当期純利益が120%である。

 第3四半期累計で各利益とも通期予想を超過達成していることに加えて、第4四半期に持分法投資利益1億70百万円を計上予定(持分法適用関連会社のKeyHolderが21年12月24日付で保有株式譲渡に伴う金融収益7億49百万円計上を発表)であることも勘案すれば、通期予想は再上振れの可能性が高いだろう。さらに22年12月期もポートフォリオ再編で収益拡大基調を期待したい。

■株価は調整一巡

 株価は地合い悪化の影響で上値を切り下げる形となったが、調整一巡して出直りを期待したい。1月25日の終値は503円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS18円89銭で算出)は約27倍、前期推定配当利回り(会社予想の1円で算出)は約0.2%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS865円20銭で算出)は約0.6倍、時価総額は約581億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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