IHIは太平洋セメントと共同でセメント製造に適したメタネーション技術の開発を開始

 IHI<7013>(東1)は1月28日、太平洋セメント<5233>(東1)と共同で、回収されたCO2をメタンに合成する、セメント製造に適したメタネーション技術の開発を開始すると発表した。同開発は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業/CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト」の「製造プロセスにおけるCO2回収技術の設計・実証」において、同社が採択されたことによるもの。

 セメント製造工程におけるCO2排出量のうち、約60%が原料である石灰石の焼成によって発生する原料由来のCO2であり、これを効率良く回収する技術が求められている。同事業では、CO2回収型仮焼炉を導入することで、原料由来のCO2とエネルギー由来のCO2と合わせて、高濃度CO2を直接回収できる技術開発に取り組む。事業期間は2021年度から2030年度までの最大10年間。

 IHIは、回収された高濃度CO2のうち、エネルギー由来のCO2相当分量をセメント製造用の熱エネルギーとして再利用することを目指し、同プロセスで回収した高濃度CO2をメタンに合成するメタネーション設備の開発および実証を行う。

 メタネーションは、二酸化炭素と水素を触媒で反応させることで、燃料であるメタンを製造するカーボンリサイクル技術。合成したメタンは、工場で排出されるCO2から製造し天然ガスの代替燃料として工場内で使用することや、都市ガス導管への注入により、一般家庭で使用することが可能となるため、都市ガスが普及する広い地域でCO2を削減でき、カーボンニュートラル実現に向けたキーテクノロジーの一つとして期待されている。

 IHIは、メタネーション装置の大型化や、CO2からプラスチック原料である低級オレフィン製造技術の開発といったCO2の有効利用のためのカーボンリサイクル技術の開発を積極的に推進している。また、水素・アンモニアの利用技術開発やサプライチェーン構築など、多様なソリューションの提供によって、2050年カーボンニュートラルの実現に貢献していくとしている。

<用語解説>

【グリーンイノベーション基金事業】 「2050年カーボンニュートラル」に向けてエネルギー・産業部門の構造転換や、大胆な投資によるイノベーションといった現行の取組を大幅に加速するため、NEDOに2兆円の基金を造成し、官民で野心的かつ具体的な目標を共有した上で、これに経営課題として取り組む企業等に対して、最長10年間、研究開発・実証から社会実装までを継続して支援する基金制度。グリーン成長戦略において実行計画を策定している重点14分野を中心に支援が行われる。

【仮焼炉】 石灰石(セメントの主原料)の脱炭酸反応(酸化カルシウムとCO2に分解)を行う燃焼装置。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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