【アナリスト水田雅展の銘柄分析】第一実業は16年3月期は増収増益・増配予想、06年以来の700円台は射程圏

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 第一実業<8059>(東1)は各種産業機械の取扱を主力とする総合機械商社である。株価は全般地合い悪化の影響を受けて一時的に調整する場面があったが、素早く切り返して07年以来の高値圏で推移している。06年以来の700円台は射程圏であり、16年3月期の増収増益・増配予想、指標面の割安感を評価して上値追いの展開だろう。

■産業機械を主力とする総合機械商社

 各種産業機械の取扱を主力とする総合機械商社で、プラント・エネルギー事業、エレクトロニクス事業、産業機械事業などを展開し、海外は米州、中国、東南アジア・インド、欧州の世界18カ国36拠点に展開している。

 13年5月発表の新経営計画「AIM2015」では、最終年度16年3月期の売上高1550億円、営業利益57億円、経常利益59億円、純利益37億円、ROE10.7%を目標値として掲げ、広範囲な営業力とエンジニアリング集団としての強みを活かしてグローバルビジネスを積極展開している。

 新規事業としては、植物工場システムの販売に関するプロジェクトを立ち上げて、埼玉県入間市にパイロットプラントを建設した。また14年3月には長野県飯田市でメガソーラー「第一実業飯田太陽光発電所」が竣工した。茨城県笠間市の太陽光発電所に続く2カ所目のメガソーラーだ。

 バイナリー発電装置ビジネスに関しては焼却プラント6基、温泉地熱プラント5基が稼動し、焼却プラント向け1基、地熱・温泉向け11基を建設中である。

 14年4月に米アクセスエナジー社のバイナリー発電装置の日本国内での独占的製造権を取得し、14年5月には地熱・温泉業界向け小型バイナリー発電装置の独占販売代理店契約を締結した。地熱、温泉熱、焼却廃熱、一般工場廃熱など、未利用熱エネルギーを有効活用して発電するバイナリー発電システムの拡大を目指す戦略だ。

 また15年4月には連結子会社の第一メカテックのDJTECH事業部門を名古屋電機工業<6797>に譲渡した。DJTECH事業部門は高性能はんだ印刷検査装置の開発・製造・販売を行っており、これらに関するノウハウ・技術を名古屋電機工業と一元化する。そして名古屋電機工業と当該検査装置事業に係る代理店契約を締結し、製販サービスの一貫体制を強化して両社の事業拡大を目指すとしている。

■16年3月期は増収増益・増配予想

 なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)320億72百万円、第2四半期(7月~9月)412億59百万円、第3四半期(10月~12月)299億74百万円、第4四半期(1月~3月)400億56百万円、営業利益は第1四半期44百万円、第2四半期16億79百万円、第3四半期4億48百万円、第4四半期21億70百万円だった。

 大型案件の動向で四半期収益は変動しやすいが、設備投資関連のため概ね第2四半期および第4四半期の構成比が高い収益構造である。また15年3月期のROEは14年3月期比0.5ポイント上昇して8.7%、自己資本比率は同0.1ポイント上昇して38.3%、DERは同0.03ポイント上昇して0.31倍となった。配当性向は29.4%だった。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(5月11日公表)は、売上高が前期比8.1%増の1550億円、営業利益が同26.7%増の55億円、経常利益が同19.9%増の57億円、純利益が同27.7%増の37億円としている。配当予想は同1円増配の年間17円(第2四半期末8円、期末9円)で予想配当性向は24.5%となる。

 セグメント別売上高の計画は、プラント・エネルギー事業が同6.1%増の320億円、エレクトロニクス事業が同3.0%増の370億円、産業機械事業が同4.7%増の430億円、海外法人が同19.0%増の400億円、その他が同17.5%増の30億円としている。なお受注高については高水準だった前期(前々期比37.0%増の1740億07百万円)の反動を考慮して同8.0%減の1600億円としている。

 メキシコにおける自動車関連業界向け自動組立ライン・塗装ロボット、アジア地域における電子部品実装関連など、国内外で自動車関連業界や電子部品実装関連を中心に設備投資需要が高水準に推移する。バイナリー発電関連の収益寄与も期待される。増収増益基調だろう。

■株価は06年以来の700円台が射程圏

 株価の動きを見ると、適度な自律調整を交えながら水準を切り上げて7月6日と7日の679円まで上伸した。07年07月685円以来の高値水準だ。その後は全般地合い悪化の影響を受けて一時的に調整する場面があったが、素早く切り返して15日は670円まで戻している。好業績見通しを評価する流れに変化はないだろう。

 7月15日の終値660円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS69円29銭で算出)は9~10倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間17円で算出)は2.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS659円44銭で算出)は1.0倍近辺である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線と26週移動平均線がサポートラインとなって上昇トレンドの形だ。07年07月の685円、そして06年以来の700円台は射程圏であり、16年3月期の増収増益・増配予想、指標面の割安感を評価して上値追いの展開だろう。

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