【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ジョルダンは目先的な過熱感解消して6月高値試す、訪日外国人旅行客増加が追い風

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ジョルダン<3710>(JQS)は経路検索ソフトなどの乗換案内事業を主力としている。株価は6月下旬に動意づいて年初来高値1300円まで急伸した。11年2月以来の高値水準だ。外国人旅行客の増加も追い風として中期的に収益拡大基調が期待される。目先的な過熱感が解消して6月高値を試す展開だろう。

■経路探索ソフトなどの乗換案内事業が主力

 乗換案内事業(無料版「乗換案内」、有料サービス「乗換案内NEXT」「乗換案内Plus」、総合旅行サービス「乗換案内トラベル」、および広告、グルメ・運行情報サービスなど)を主力として、マルチメディア事業(電子出版・紙媒体出版、ニュース、教育、その他コンテンツ)や、その他事業(受託ソフトウェア開発、その他新サービス)も展開している。

 有料サービス「乗換案内NEXT」「乗換案内Plus」の15年3月末有料会員数は約42万人で、無料を含めた「乗換案内」の各種インターネットサービス検索回数は15年3月に月間約2億1500万回~2億2000万回となった。また当該サービスの月間利用者数は約1200万人となっている。

 乗換案内事業では、鉄道の経路検索にとどまらず、路線バスの経路検索にも対応している。さらに利便性の高い「乗換案内」を目指して、今後は「駅から駅」「バス停からバス停」の案内にとどまらず、徒歩ルートを含めた「地点から地点」「場所から場所」案内を強化する方針だ。

■「移動に関するNO.1情報プロバイダー」目指す

 そして「移動に関するNO.1情報プロバイダー」を目指し、新サービス開発や機能充実に向けてM&A・アライアンス戦略も積極活用している。12年9月にグルメぴあネットワークを子会社化(13年4月吸収合併)、12年11月にネット旅行販売・情報提供のイーツアーを子会社化、14年7月に合弁で「ミール・プラス」事業のRemunera Jorudan(レムネラ・ジョルダン)を設立した。一方ではマルチメディア事業における不採算事業からの撤退を進めるとともに、新たな採算事業も模索している。

 15年4月には東京国際空港ターミナルと連携して、羽田空港国際線旅客ターミナルから目的地へ、また各地から羽田空港国際線旅客ターミナルへ、鉄道やバスを利用して移動する経路のアクセス検索サービス「TIAT ROUTE MASTER」のサービスを開始した。日本語だけでなく英語、中国語(簡体字・整体字)、韓国語の検索も可能だ。

 15年5月には訪日外国人旅行客をターゲットにしたルート案内ソリューション「乗換案内Visit」の提供を開始した。英語、中国語(簡体字・整体字)、韓国語に日本語を含めた5言語に対応する。乗換経路検索だけでなく、ゼンリン<9474>提供の多言語地図との連携により、多言語でのトータルルート案内サービスを実現した。

 15年5月にはVAIRON(東京都)と提携して、中国のTencentが運営するスマートフォン向けコミュニケーション・チャットアプリ「WeChat」の企業アカウント開設だけでなく、企業が効果的に「WeChat」を活用するための独自の開発を行う体制を整えた。訪日中国人の購買行動へ結びつけるブランドコミュニケーションを行うには、7億人ユーザーの「WeChat」への企業アカウント開設および運営が必須とされるため、共同で「WeChat」を活用するマーケティング活動をコンサルティングから開発まで提供する。

 6月22日には日本マイクロソフトのクラウド型グループウェア「Office365」と連携した「乗換案内Biz for Office」のリリース、そして7月15日にはサイボウズ<4776>のクラウド型アプリケーション作成サービス「Kintone」と連携した旅費交通費精算用アプリ「旅費交通費精算with乗換案内Biz」のリリースを発表した。いずれも企業における交通費精算業務の負担を軽減できる。

■15年9月期は増収増益予想

 今期(15年9月期)の連結業績予想(11月13日公表)は、売上高が前期比4.2%増の45億円、営業利益が同3.3%増の6億円、経常利益が同1.2%増の6億20百万円、純利益が同2.7%増の3億90百万円としている。配当予想は前期と同額の年間13円(期末一括)としている。予想配当性向は17.4%となる。

 乗換案内事業ではスマートフォン向け有料サービスの機能強化で会員獲得を推進し、スマートフォン向け無料サービスにおける広告、法人・自治体向け案件、旅行関連パッケージ商品などの販売拡大を見込んでいる。

 製品・サービス別の売上高の計画は、乗換案内事業が同2.1%増の42億30百万円(モバイルが4.8%減の10億20百万円、広告が4.9%増の3億円、個人向けが11.8%減の90百万円、法人向けが6.0%増の9億20百万円、旅行が8.0%増の17億10百万円、グルメが18.6%減の1億80百万円、他乗換が11.1%増の10百万円)、およびマルチメディア事業が同4.2倍の1億40百万円、その他が同7.1%減の1億30百万円としている。

 第2四半期累計(10月~3月)は前年同期比4.5%増収、17.4%営業減益、22.1%経常減益、30.4%最終減益だった。旅行関連の好調が牽引して増収だったが、旅行関連の仕入高増加、新製品・サービス開発費用の増加、持分法投資損益の悪化、負ののれん発生益の一巡などで減益だった。

 なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(10月~12月)10億57百万円、第2四半期(1月~3月)11億76百万円、営業利益は第1四半期94百万円、第2四半期1億84百万円だった。営業損益は改善基調だ。

 通期見通しに対する第2四半期累計の進捗率は売上高が49.6%、営業利益が46.3%、経常利益が45.3%、純利益が40.3%である。やや低水準の形だが、四半期別に見ると第2四半期の営業損益は改善基調であり、訪日外国人旅行客の増加を追い風として、第3四半期(4月~6月)以降の挽回が期待される。さらに20年東京夏季五輪開催も追い風となって中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は急伸後の上げ一服局面だが、過熱感解消して6月高値試す

 株価の動きを見ると6月下旬に動意づき、800円台のモミ合い展開から6月23日の年初来高値1300円まで急伸した。11年2月1302円以来の高値水準だ。インバウンド需要関連が好感されたようだ。その後は目先的な過熱感や利益確定売りで上げ一服局面だが、概ね1000円~1100円のレンジで推移している。

 7月16日の終値1070円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS74円72銭で算出)は14~15倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間13円で算出)は1.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS764円87銭で算出)は1.4倍近辺である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線および26週移動平均線がサポートラインとなって長期上昇トレンドの形である。また日足チャートで見ると25日移動平均線が接近して目先的な過熱感が解消した。再動意のタイミングのようだ。訪日外国人旅行客増加を追い風として収益拡大が期待され、指標面に割高感はない。水準切り上げの流れに変化はなく、目先的な過熱感が解消して6月高値を試す展開だろう。

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