JFEシステムズは上値試す、23年3月期小幅増益・連続増配予想、さらに上振れ余地

 JFEシステムズ<4832>(東証スタンダード)はJFEグループの情報システム会社である。鉄鋼向けを主力として、一般顧客向け複合ソリューション事業も強化している。新中期経営計画では、強みとする商品力・技術力・人材力およびDX事業の更なる強化に向けて積極投資を実行する方針としている。22年3月期は鉄鋼向けやソリューションの拡大、生産性向上などで大幅増益だった。23年3月期は小幅増益・連続増配予想としている。先行投資の影響で利益は小幅増益にとどまる予想としているが上振れ余地がありそうだ。JFEスチール向け製鉄所システムリフレッシュプロジェクトは26年頃まで継続する見込みであり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は3月の上場来高値圏から反落してモミ合う形だが、調整一巡して上値を試す展開を期待したい。

■JFEグループの情報システム会社

 JFEグループの情報システム会社である。鉄鋼向け情報システム構築事業を主力として、ERPと自社開発ソリューションを組み合わせた一般顧客向け複合ソリューション事業、自社開発のプロダクト・ソリューション事業も強化している。なお親会社のJFEスチールが22年3月に発表した本社基幹システムのオープン環境への完全移行にも参画している。

 22年3月期の事業別売上高は鉄鋼が230億円、一般顧客が164億円、基盤が69億円、子会社(JFEコムサービス、IAFC)が41億円だった。収益面では情報システム関連のため、年度末にあたる第4四半期の構成比が高い特性がある。

 ダイバーシティを推進し、女性の活躍推進の取り組みが優れた企業を厚生労働大臣が認定する「えるぼし」や、働き易い職場環境整備・意識啓発に取り組む企業を東京都が登録する「心のバリアフリーサポート企業」など、働き方・企業風土に関する各種認証を取得している。20年7月には厚生労働大臣から子育てサポート企業として「プラチナくるみん」認定を受けた。

 21年12月には「ダイバーシティ推進基本方針」「ダイバーシティ推進キャッチフレーズ」および「2030年度女性役員・管理職(部長・課長級)達成目標」を新たに策定した。2030年度までに女性役員・管理職比率12%の達成(21年度実績5.7%から倍増)を目指す。22年3月には健康経営優良法人2022(大規模法人部門)に5年連続で選定された。

■電子帳票パッケージは14年連続国内シェア1位

 電子帳票パッケージなど自社開発ソリューションの拡大に注力している。21年4月には食品業界のDX推進を支援する原料情報管理・原材料表示作製クラウドサービス「MerQurius(メルクリウス)クラウド」の提供を開始した。

 21年7月には、DataDeliveryが公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)の認証する電子取引ソフト法的要件認証制度および電子書類ソフト法的要件認証制度の2つのJIIMA認証を同時取得した。21年9月には、自社開発の電子帳票パッケージFiBridgeシリーズが、富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場2021年版」電子帳票パッケージ(運用・保存システム)分野20年度市場占有率調査(販売パッケージベース)で、14年連続で国内製品シェア1位(数量シェア25.2%、金額シェア25.3%)を獲得したと発表している。利用企業数は4000社を超えている。

 21年10月にはSAP S/4HANA向けに自社開発したプロジェクト管理業務テンプレート「SIDEROS PS TEMPLATE for S/4HANA」の最新版の販売を開始した。21年11月には電子帳簿保存法に対応した電子証跡システム「DateDeliveryクラウド」の提供を開始した。

■新中期経営計画

 22年4月に新中期経営計画を策定・公表した。キャッチフレーズには「Accelerate innovation」を掲げ、目標数値は最終年度25年3月期売上高570億円、経常利益66億円、ROS11.6%、親会社株主帰属当期純利益43.7億円、ROE15%程度の水準維持、配当性向35%程度(現行は30%)とした。なお23年3月期から中間配当を実施する。

 サステナビリティ活動を意識した経営を追求し、強みとする商品力・技術力・人材力およびDX事業の更なる強化に向けて、3ヶ年で150億円規模の積極投資(商品開発投資20億円、サービス提供型ビジネス向け投資50億円、研究開発投資、既存事業の強化と事業領域の拡大を狙ったM&Aなど)を実行しながら、並行して増収増益を目指すとしている。なお人材投資については、採用・育成費や社員報酬水準向上などの増分として約20億円を見込んでいる。

 事業別戦略としては、鉄鋼では製鉄所システムリフレッシュ本格化への対応やDX案件への積極対応、ソリューション・プロダクトでは商品機能拡充やクラウド対応によるITベンダーとしての商品力・提案力強化、ビジネスシステムでは新技術・ノウハウの蓄積によるSoRビジネスからSoEビジネスへの転換、基盤ではJFEグループ以外の顧客開拓やクラウド・セキュリティ事業の強化・拡大、DX関連ではオフィスソリューションや製造現場ソリューションなどDX新規ビジネスの拡大などを推進する。

■22年3月期大幅増益・増配、23年3月期小幅増益・連続増配予想

 22年3月期連結業績(収益認識会計基準適用だが損益への影響軽微、21年10月27日付で上方修正、22年1月26日付で利益を2回目の上方修正)は、売上高が21年3月期比8.5%増の503億95百万円、営業利益が20.2%増の56億09百万円、経常利益が20.1%増の56億44百万円、親会社株主帰属当期純利益が20.7%増の37億24百万円だった。配当は21年4月1日付株式2分割遡及換算後で21年3月期比15円増配の75円(期末一括)とした。

 JFEスチール向け製鉄所システムリフレッシュプロジェクトの進展、ソリューション事業の拡大などで増収となり、売上増に伴う開発生産性向上なども寄与して大幅増益だった。2期ぶりに過去最高の売上高・利益を達成した。なお収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が14億09百万円減少、売上原価が14億43百万円減少、営業利益、経常利益および税金等調整前当期純利益がそれぞれ34百万円増加、親会社株主帰属当期純利益が23百万円増加している。

 事業別売上高は鉄鋼が製鉄所システムリフレッシュの本格化で36億円増の230億円、一般顧客がソリューションを中心に伸長して13億円増加の164億円、基盤が一般顧客向け構築案件の増加で4億円増加の69億円、子会社が会計基準変更の影響で14億円減少の41億円だった。経常利益の増減分析は、増益要因が売上増加で8.7億円、利益率向上で2.8億円、減益要因が販管費等増加で2.1億円としている。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が119億15百万円で営業利益が10億42百万円、第2四半期は売上高が122億83百万円で営業利益が14億15百万円、第3四半期は売上高が129億61百万円で営業利益が17億07百万円、第4四半期は売上高が132億36百万円で営業利益が14億45百万円だった。

 23年3月期連結業績予想は、売上高が22年3月期比7.2%増の540億円、営業利益が1.1%増の56億70百万円、経常利益が1.0%増の57億円、親会社株主帰属当期純利益が0.4%増の37億40百万円としている。配当予想は10円増配の85円(第2四半期末40円、期末45円)としている。連続増配となる。なお23年3月期から中間配当を実施する。

 事業別売上高の計画は、鉄鋼が製鉄所システムリフレッシュの更なる進展で31億円増加の261億円、一般顧客が大型案件の減少で4億円減少の160億円、基盤がJFEスチール向けの増加で3億円増加の72億円、子会社がITインフラの増加で6億円増加の47億円としている。

 JFEスチール向け製鉄所システムリフレッシュプロジェクトが順調に進展し、小幅ながら増益で連続増配予想としている。経常利益の増減分析は、増益要因が売上増加で8.2億円、減益要因が利益率低下・販管費等増加で7.6億円としている。

 23年3月期はIT人材確保に向けた処遇改善費用や研究開発費用の増加など、先行投資の影響で利益は小幅増益にとどまる予想としているが、上振れ余地がありそうだ。JFEスチール向け製鉄所システムリフレッシュプロジェクトは26年頃まで継続する見込みであり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は上値試す

 株価は3月の上場来高値圏から反落し、地合い悪化も影響してモミ合う形だが、調整一巡して上値を試す展開を期待したい。4月28日の終値は2399円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS238円14銭で算出)は約10倍、今期予想配当利回り(会社予想の85円で算出)は約3.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1469円63銭で算出)は約1.6倍、そして時価総額は377億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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