生化学工業は22年3月期大幅営業・経常増益、23年3月期予想は未定

(決算速報)
 生化学工業<4548>(東証プライム)は5月13日に22年3月期連結業績を発表した。コロナ禍影響からの需要回復、海外医薬品の前倒し出荷、医薬品受託製造の増加、受取ロイヤリティーの増加などで大幅増収増益だった。23年3月期の連結業績予想は、関節機能改善剤ジョイクルのショック、アナフィラキーの発現に関する原因究明の進捗を見極める必要があるため未定としている。株価は23年3月期の不透明感も嫌気して年初来安値を更新する展開だが、売られ過ぎ感を強めている。売り一巡して出直りを期待したい。

■22年3月期大幅営業・経常増益、23年3月期予想は未定

 22年3月期の連結業績(収益認識会計基準適用で前年も遡及適用、利益への影響なし、受取ロイヤリティーの表示区分を従来の営業外収益から売上高に変更)は、売上高が21年3月期比25.7%増の348億51、営業利益が99.9%増の44億95百万円、経常利益が78.4%増の53億95百万円、親会社株主帰属当期純利益が前期の繰延税金資産計上の反動で12.4%減の37億33百万円だった。配当は21年3月期比6円増配の30円(第2四半期末15円、期末15円、いずれも普通配当15円+特別配当5円)とした。

 コロナ禍影響からの需要回復、海外医薬品の販売好調と前倒し出荷、医薬品受託製造の増加、受取ロイヤリティーの増加などで大幅営業・経常増益だった。米国で実施中の腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI―6603追加臨床試験の進捗などで研究開発費が増加(24.9%増の90億05百万円)したが、増収効果などで吸収した。営業外収益では為替差益が増加した。

 医薬品事業は売上高が23.6%増の256億96百万円、営業利益が2.0倍の22億13百万円だった。売上高の内訳は国内医薬品が0.0%減の114億47百万円、海外医薬品が12.9%増の76億52百万円、医薬品原体・医薬品受託製造が41.2%増の26億07百万円、受取ロイヤリティーが5.6倍の39億89百万円だった。

 国内は主力の関節機能改善剤アルツの薬価引き下げなどで微減収だった。なお関節機能改善剤ジョイクル(21年5月発売)は、本剤投与後にショック、アナフィラキーの発現が複数報告されたため安全性速報(ブルーレター)を発出した。海外は、米国においてコロナ禍影響から市場がほぼ回復し、流通リスク回避に向けた前倒し出荷も寄与して好調だった。中国向けも現地販売本数が増加し、包装資材変更に伴う前倒し出荷も寄与した。医薬品原体・医薬品受託製造は医薬品原体が減少したが、ダルトン社の医薬品受託製造が増加した。

 LAL事業は売上高が31.9%増の91億55百万円で、営業利益が95.6%増の22億81百万円だった。ACC社におけるエンドトキシン測定用試薬、グルカン測定体外診断用医薬品、受託試験サービスが伸長した。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高117億84百万円で営業利益44億46百万円、第2四半期は売上高87億46百万円で営業利益15億92百万円、第3四半期は売上高76億15百万円で営業利益1億96百万円、第4四半期は売上高67億06百万円で営業利益17億39百万円の赤字だった。第1四半期に受取ロイヤリティー35億50百万円を計上し、第3四半期以降は研究開発費が増加した。

 23年3月期の連結業績予想については、関節機能改善剤ジョイクルのショック、アナフィラキーの発現に関する原因究明の進捗を見極める必要があるため未定としている。現時点での想定は、22年4月以降の薬価引き下げ(国内医薬品全体の加重平均)が約▲11%(アルツは▲12.6%、オペガンは▲7%)で、ロイヤリティーが前期の一過性増加の反動で減少、研究開発費が米国で実施中の腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI―6603追加臨床試験の被験者組み入れ完了で減少、コロナ禍の影響は22年3月期水準としている。なお配当予想は8円減配の22円(第2四半期末11円、期末11円)としている。

■株価は売られ過ぎ感

 株価は23年3月期の不透明感も嫌気して年初来安値を更新する展開だが、売られ過ぎ感を強めている。売り一巡して出直りを期待したい。5月17日の終値は805円、時価総額は約457億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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