ベステラは下値固め完了、23年1月期も受注環境良好で増収・営業増益予想

 ベステラ<1433>(東証プライム)は鋼構造プラント設備解体工事を展開し、解体工事会社としては類のない特許工法・知的財産の保有を強みとしている。23年1月期は成長投資や一過性利益剥落などで経常・最終減益予想としている。ただし受注環境は良好で増収・営業増益予想としている。脱炭素に向けた2050年カーボンニュートラル宣言の国策なども背景として、1960年代の高度成長期以降に建設された老朽化プラントの解体工事の増加が予想されている。そして23年1月期も受注見込みの有力案件が多数控えている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化も影響して年初来安値圏だが下値固め完了感を強めている。出直りを期待したい。なお6月9日に23年1月期第1四半期決算発表を予定している。

■鋼構造プラント設備解体のオンリーワン企業

 製鉄所・発電所・ガスホルダー・石油精製設備など鋼構造プラント設備の解体工事に特化したオンリーワン企業である。

 製鉄・電力・ガス・石油・石油化学業界(製鉄所・発電所・石油精製・石油化学設備など)向けを主力とするプラント解体工事、および特定化学物質・アスベスト・ダイオキシン・土壌汚染などの環境関連対策工事を展開している。主要顧客はJFEグループ、日本製鉄グループ、東京エネシス、IHIグループなどである。

 22年1月期の完成工事高(57億36百万円)の業界別構成比は電力が21%、製鉄が17%、石油・石化が35%、環境が21%、他(3D、ガス、その他)が6%だった。期末受注残高(15億94百万円)の業界別構成比は電力が17%、製鉄が24%、石油・石化が39%、環境が16%、その他が4%だった。構成比は大型案件によって変動する。また、顧客の設備投資計画に応じた季節性があり、下期に完成工事高が増加する傾向が強い。

 大手企業のエンジニアリング子会社を中心とした優良な顧客基盤、豊富な工事実績に基づく効率的な解体マネジメント、解体工事会社としては類のない特許工法・知的財産の保有を強みとしている。技術関連では、球形ガスホルダー解体「リンゴ皮むき工法」や火力発電所等の「ボイラ解体方法」の特許を取得し、遠隔操作による溶断ロボット「りんご☆スター」も開発している。さらに風力発電設備解体需要に応えるため、他社に先駆けて「マトリョーシカ式工法」「タワークレーン工法」「転倒工法」の特許工法を開発している。

 20年2月には、インターアクション<7725>から3Dスキャン・3Dモデリング事業およびプラント設計事業を譲り受け、新会社3Dビジュアルとして事業を開始した。21年12月には、アスベスト対策やダイオキシン対策など環境汚染対策工事に関して特殊な工事技術を保有する矢澤(東京都渋谷区)を子会社化した。

 なお20年9月にリバーホールディングスを持分法適用関連会社化したが、リバーホールディングスがタケエイと21年10月1日付で共同持株会社TREホールディングス<9247>を設立して経営統合したため、リバーホールディングスは持分法適用関連会社から除外された。業務提携関係は継続するとしている。

■プラント解体需要増加予想で受注環境良好

 受注環境は良好である。第5次エネルギー基本計画や、脱炭素化に向けた2050年カーボンニュートラル宣言の国策なども背景として、1960年代の高度成長期以降に建設された老朽化プラントの解体工事の増加が予想されている。

 中期経営計画2025(22年1月期~26年1月期、ローリング方式)では、目標値に26年1月期売上高100億円、営業利益10億円、経常利益10億72百万円、当期純利益7億52百万円、売上高営業利益率10.0%、ROE13.0%、EPS91円を掲げている。配当性向の目安は40%としている。

 重点戦略として、競争力のある特許工法による解体方法の提案・実用化、元請案件の受注拡大による収益力向上、コーポレートブランディングの強化、グループ企業との連携強化、協業先企業との連携強化、施工管理体制の強化、M&Aも活用した重要技術の内製化、DX(検査ロボット活用、設計・施工業務の変革)などを推進している。

 なお中期経営計画の達成に向けた資金調達として、第三者割当による第9回および第10回新株予約権(行使価額修正条項付)を発行した。割当先の投資信託(Hayate Japan Unit Trust)は、企業への直接の資金提供(真の直接金融)を設立段階から謳った日本初の投資信託で、今回の案件が第1号となる。

 調達資金は、プラント解体技術と相乗効果が高い4分野(脱炭素化に向けた設備の廃止措置に関する分野、風力発電設備の解体に関連する分野、3D事業価値追求のためのデジタル関連分野、解体施工技術の高度化を目的とした専門工事分野)へのM&A投資、および規模拡大に対応した営業担当者・採用担当者等の増員や拠点拡充などに充当する。また事業成長のための財務基盤の強化を推進する。

 21年12月には指名・報酬委員会の設置、株主総会の議決権行使の電子化および機関投資家向け議決権電子行使プラットフォームへの参加、サステナビリティ基本方針制定およびサステナビリティ委員会設置を発表している。コーポレート・ガバナンス体制の一層の充実・強化を図るとともに、SDGsへの取り組みを強化する。

■プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書

 22年4月4日に移行した東京証券取引所の新市場区分についてはプライム市場を選択し、上場維持基準適合に向けた計画書を開示している。

 中期経営計画2025で掲げた重点施策の着実な遂行によって業績目標の達成に取り組むとともに、プラント解体業界のリーディングカンパニーとしての社会的サステナビリティへの貢献と利益成長の両立、リスク管理体制の強化やコンプライアンスの徹底などコーポレート・ガバナンスの一層の充実に取り組むことで、更なる企業価値の向上(時価総額の向上)を図る。流通株式数については第三者割当による第9回および第10回新株予約権(行使価額修正条項付)の行使により、流通株式数の増加を見込んでいる。これらの取り組みによって26年1月期までにプライム市場上場維持基準適合を目指すとしている。

 そして22年4月には、プライム市場上場維持基準適合に向けた計画に基づく進捗状況をリリースした。流通株式数については、22年1月31日時点で5万2101単位となり、21年6月30日時点の4万6109単位に対して5992単位増加した。

 業績面では、中期経営計画初年度の22年1月期は売上高が59億66百万円、営業利益が6億07百万円、経常利益が8億40百万円、親会社株主帰属当期純利益が14億67百万円となった。営業外収益と特別利益における一過性利益計上も寄与して、計画(売上高56億円、営業利益4億50百万円、経常利益5億18百万円、親会社株主帰属当期純利益3億60百万円)を達成した。なお一過性利益を除くベースでも経常利益6億39百万円、親会社株主帰属当期純利益4億15百万円となり、計画を達成している。各種施策が着実に実施されていると評価できるだろう。

■23年1月期も受注環境良好で増収・営業増益予想

 23年1月期連結業績予想は売上高が22年1月期比12.3%増の67億円、営業利益が2.0%増の6億20百万円、経常利益が20.8%減の6億66百万円、親会社株主帰属当期純利益が68.1%減の4億69百万円としている。配当予想は22年1月期比4円増配の20円(第2四半期末10円、期末10円)としている。

 成長投資(新たな環境関連工法の研究開発、クレーンレール検査ロボット開発、人材育成システムの構築、積極的なM&Aなど)の影響に加えて、前期に計上した一過性利益(持分法投資利益2億01百万円、企業結合における交換利益12億75百万円)が剥落して経常・最終減益予想としている。

 ただし受注環境は良好で増収・営業増益予想としている。脱炭素に向けた2050年カーボンニュートラル宣言の国策なども背景として、1960年代の高度成長期以降に建設された老朽化プラントの解体工事の増加が予想されている。そして23年1月期も受注見込みの有力案件が多数控えている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は毎年1月末の株主対象

 株主優待制度は、毎年1月31日現在1単元(100株)以上保有株主を対象として、保有株式数に応じてクオカードを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は下値固め完了

 株価は地合い悪化も影響して年初来安値圏だが下値固め完了感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。5月20日の終値は1173円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS54円40銭で算出)は約22倍、今期予想配当利回り(会社予想の20円で算出)は約1.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS502円81銭で算出)は約2.3倍、時価総額は約104億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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