【アナリスト水田雅展の銘柄分析】JFEシステムズは日柄調整一巡感、16年3月期業績の増額余地や連続増配を評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 JFEシステムズ<4832>(東2)は鉄鋼向けシステム構築を主力とする情報サービス企業である。株価は1200円台の小幅レンジでモミ合う展開だが下値は限定的であり、1月の年初来高値1400円から約半年が経過して日柄調整一巡感を強めている。指標面には割安感があり、16年3月期業績の増額余地や連続増配を評価してモミ合い上放れの展開が期待される。

■JFEスチール系の情報サービス企業

 川崎製鉄(現JFEスチール)のシステム部門を分離した情報サービス企業である。鉄鋼向け情報システム構築事業を主力として、ERPと自社開発ソリューションを組み合わせた一般顧客向け複合ソリューション事業や、自社開発のプロダクト・ソリューション事業も展開している。

 鉄鋼事業ではJFEグループの海外展開を支援すべく、タイCGL(溶融亜鉛めっきライン)工場向けで開発した海外製造拠点向け標準システムを、インドネシアCGL工場へ導入中だ。

 またアライアンス戦略では、13年5月に大阪ガス<9532>子会社オージス総研と協業、ビジネスブレイン太田昭和<9658>と資本・業務提携した。

■中期計画で18年3月期EPS150円以上目指す

 16年3月期スタートの新中期計画では、目標数値として最終年度18年3月期の売上高400億円以上、経常利益20億円以上、純利益12億円以上、EPS150円以上を掲げている。

 重点課題をJFEスチール製鉄所業務プロセス改革への対応、ERPを核とした製造流通向けソリューション事業の拡大、基盤サービス事業の拡大に向けたクラウドサービスの立ち上げとして、自動車など製造業顧客基盤の拡大や、電子帳簿(e-文書保存ソリューション)など自社プロダクト拡販の推進も継続する。

 さらにJFEスチール製鉄所業務プロセス改革への対応で多くの技術・ノウハウを蓄積し、基盤事業やソリューション事業に活用して一般顧客向け売上を拡大させ、高収益な事業構造への転換を推進する方針だ。

 15年6月にはセールスフォース・ドットコム社と、同社のクラウド・アプリケーション「Sales Cloud」およびクラウド・アプリケーション開発基盤「Force.com」に関する販売パートナー契約を締結した。

 同社の「Force.com」を利用して、親会社JFEスチール向けに「販売情報共有システム」を構築した実績を持つ。そして15年5月には、経済産業省と東京証券取引所が企画する「攻めのIT経営銘柄」(18銘柄)にJFEホールディングス<5411>が選定された。JFEスチールの「販売情報共有システム」が選考のポイントの一つとして挙げられている。

 今後はJFEスチールでの構築と運用で培った知見を活かして、これらのソリューションを製造業向けERPなど、基幹系システムやサプライチェーン計画系システムに組み合わせて拡販を推進する。

■16年3月期は営業微減益だが、最終増益・連続増配予想

 なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)77億69百万円、第2四半期(7月~9月)89億33百万円、第3四半期(10月~12月)84億38百万円、第4四半期(1月~3月)106億67百万円、営業利益は第1四半期83百万円の赤字、第2四半期5億28百万円、第3四半期4億77百万円、第4四半期7億79百万円だった。

 第4四半期の構成比が高い収益構造だが、これを考慮しても営業損益は改善基調だろう。また15年3月期の配当性向は26.3%だった。ROEは14年3月期比2.5ポイント上昇して8.4%、自己資本比率は同1.8ポイント低下して49.5%となった。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(4月27日公表)は売上高が前期比5.6%増の378億円、営業利益が同3.0%減の16億50百万円、経常利益が同1.3%減の16億60百万円、純利益が同16.2%増の9億70百万円としている。配当予想は同2円増配の年間30円(期末一括)で、予想配当性向は24.3%となる。また3期連続の増配で配当額は上場後の最高となる。

 売上面はJFEスチール向けや製造流通向けが好調に推移して増収、営業利益と経常利益は開発労務費の増加に加えて、製鉄所業務プロセス改革対応や基盤サービス事業強化といった戦略的先行投資コストを勘案して微減益、純利益は15年度税制改正の影響で増益見込みとしている。

 事業別売上高の計画は、JFEスチールのIT投資増加で鉄鋼が同14.5億円増加の196億円、製造流通向け複合ソリューションの拡大で一般顧客が同5.5億円増加の140億円、子会社が同横ばいの42億円としている。

 企業のIT投資が高水準に推移し、鉄鋼向けの案件規模拡大、複合ソリューションの収益改善なども考慮すれば、16年3月期会社予想は保守的な印象も強く増額余地がありそうだ。

■株価は日柄調整一巡してモミ合い上放れ期待

 なお7月14日に、当社ウェブサイトがモーニングスターによる「GomezIRサイトランキング2015」において総合91位を獲得し、銅賞を受賞したと発表している。

 株価の動きを見ると、概ね1200円台の小幅レンジでモミ合う展開だ。1月の年初来高値1400円からやや水準を切り下げたが下値も限定的だ。

 7月24日の終値1256円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS123円52銭で算出)は10~11倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間30円で算出)は2.4%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1309円13銭で算出)は1.0倍近辺である。

 週足チャートで見ると、13週移動平均線と26週移動平均線が戻りを押さえる形だが下値も限定的であり、1月高値から約半年が経過して日柄調整一巡感を強めている。指標面には割安感があり、16年3月期業績の増額余地や連続増配を評価してモミ合い上放れの展開が期待される。

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