【アナリスト水田雅展の銘柄分析】インフォマートは自律調整一巡、15年12月期も増収増益基調で中期成長力を評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 インフォマート<2492>(東マ)は企業間電子商取引プラットフォーム事業を展開している。株価は7月1日の上場来高値1690円から利益確定売りで一旦反落したが、9日の1280円から切り返して24日には1556円まで戻した。15年12月期も増収増益基調であり、中期成長力を評価する流れに変化はない。自律調整が一巡して上値追いの展開だろう。なお7月31日に第2四半期(1月~6月)累計の業績発表を予定している。

■フード業界向け企業間(BtoB)ECプラットフォームが主力

 フード業界向けの企業間(BtoB)電子商取引(EC)プラットフォーム「FOODS info Mart」をベースに、企業間電子商取引の「ASP受発注システム」「ASP規格書システム」「ASP商談システム」「ASP受注・営業システム」「クラウドサービス」などを提供している。14年11月には全ての業界に対応できる電子請求の新サービス「ASP請求書システム」を開始した。

 月額システム使用料収入が収益柱のストック型収益構造である。15年3月末時点の「FOODS info Mart」利用企業数(海外事業除く)は、14年12月末比573社増加の3万7733社(売り手企業が同537社増加の3万456社、買い手企業が同36社増加の7277社)となった。大手の食材卸売企業や外食・中食チェーンも利用し、電話やFAXからWebに切り替えて受発注する企業・店舗が増加基調だ。

 なお14年の「FOODS info Mart」年間取引高は、13年に比べて1188億円増加の9806億円となった。中期目標として掲げた年間システム取引高1兆円は15年に達成が濃厚となっている。また外食産業における仕入金額ベースのシェアは13年の12.4%から14年は13.6%に上昇した。

 サービス拡充の一環として、フード業界企業向け総合マーケティングサービス「BtoB F-Marketing」や、フード業界向け情報発信の総合ポータルサイト「フーズチャネル」も開始している。

 子会社はインフォライズがクラウドサービス事業、インフォマートインターナショナル(香港)が海外「FOODS info Mart」事業を展開している。なお15年3月に日立システムズとの合弁事業契約を解消し、インフォライズに対する日立システムズ出資分49%を譲り受けてインフォライズを完全子会社化した。

■中期成長に向けてシステム連携や他業界向けプラットフォームも展開

 中期成長を加速させる戦略として業界標準化に向けたフード業界向けBtoBビジネスの強化、他業界BtoB展開の美容業界向け「BEAUTY info Mart」や、医療業界向け「MEDICAL info Mart」による事業領域拡大、次世代BtoB&クラウドプラットフォームの拡販を推進している。

 アライアンス戦略では13年5月にJFEシステムズ<4832>、13年6月に東芝テック<6588>、13年11月に東京システムハウス、14年10月にヤマトホールディングス<9064>傘下のヤマトシステム開発とデータ連携している。

 15年1月には全国の商工会議所・商工会等が運営する「ザ・ビジネスモール(B-MALL)」の事務局を務める大阪商工会議所と、全国の企業へ電子請求を推進することを目的として業務提携した。電子請求「ASP請求書システム」による企業のコスト削減・効率化で企業の利益アップを応援する。

 15年4月には企業の受発注・請求業務の生産性向上を提供するため、内田洋行<8057>やミロク情報サービス<9928>など19社24ソリューションが提供する販売管理・会計・店舗管理システムとのデータ連携を強化した。利便性の高いビジネスインフラの提供を目指して今後も連携サービスを拡大し、3年後までに利用企業数100万社を目指すとしている。

 15年5月には15年1月~3月のECO実績を発表した。当社が提供しているBtoBプラットフォームの利用増加による15年1月~3月のECO実績は、A4紙伝票数約4297万枚で、杉の木21万9306本のCO2削減効果となった。

 また企業の受発注業務、請求業務、会計処理などにおける生産性向上を提供するため、15年7月にスーパーストリーム(東京都)、シップス(山梨県)、およびFutureOne(東京都)と、各々システム連携を開始した。

■15年12月期も増収増益基調

 なお14年12月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)11億57百万円、第2四半期(4月~6月)12億06百万円、第3四半期(7月~9月)12億66百万円、第4四半期(10月~12月)13億48百万円、営業利益は第1四半期4億23百万円、第2四半期4億17百万円、第3四半期5億46百万円、第4四半期5億57百万円だった。

 利用企業数の増加に伴ってシステム使用料収入が積み上がるストック型収益構造であり、売上高、利益とも拡大基調だ。また14年12月期の配当性向は49.1%、ROEは13年12月期比11.7ポイント上昇して32.3%、自己資本比率は同5.5ポイント上昇して70.8%だった。

 今期(15年12月期)の連結業績予想(2月13日公表)は売上高が前期比19.5%増の59億48百万円、営業利益が同17.4%増の22億83百万円、経常利益が同16.2%増の22億79百万円、純利益が同19.3%増の14億04百万円としている。

 配当予想(2月13日公表)は、15年1月1日付の株式2分割を考慮すると実質的に前期比2円07銭増配の年間11円76銭(第2四半期末5円88銭、期末5円88銭)としている。予想配当性向は50.6%となる。配当方針は個別業績に応じた基本配当性向50%としている。

 セグメント別売上高の計画は、ASP受発注事業が同12.5%増の33億13百万円、ASP規格書事業が同31.8%増の9億77百万円、ES事業(ASP商談事業、ASP受注・営業事業、およびASP請求書システム)が同28.3%増の15億39百万円、その他(クラウドサービス事業および海外事業)が同29.3%増の1億19百万円としている。

 第1四半期(1月~3月)は前年同期比13.2%増収、同20.8%営業増益、同21.9%経常増益、同26.3%最終増益だった。各システムの利用企業数、システム取引高が順調に増加し、システム使用料収入も順調に増加した。ソフトウェア償却費の増加、サーバー増強に伴うデータセンター費用の増加、人件費の増加を吸収して増収増益だった。

 セグメント別の売上高を見ると、ASP受発注事業は同10.6%増の7億57百万円、ASP規格書事業は同27.1%増の2億14百万円、ES事業は同13.6%増の3億14百万円、その他は同9.6%減の33百万円だった。

 通期見通しに対する第1四半期の進捗率は売上高が22.0%、営業利益が22.4%、経常利益が22.4%、純利益が21.9%だった。見かけ上は低水準の形だが、ストック型の収益構造であることを考慮すれば概ね順調な水準と言えるだろう。

 新システムリリースによるソフトウェア償却費の増加、サーバー増強によるデータセンター費用の増加、中期成長に向けた人員増加(新卒採用中心)による人件費の増加などで、通期会社予想は前期に比べて増益幅が縮小する見通しとしているが、各システムの利用企業数、システム取引高とも順調に増加し、システム使用料は増加基調である。会社予想には増額余地があるだろう。

 今期の重点施策として、フード業界BtoBのシェア拡大を加速して「FOODS info Mart」利用企業数4万社を目指し、電子請求プラットフォームのデファクト化を推進する方針だ。

 業界標準化の進展、データ連携の強化、サービスの拡充、ホテル・給食業界への利用企業開拓、さらに新規分野への事業展開も寄与して中期的に成長加速が期待される。

■株価は利益確定売りで一旦反落したが素早く切り返して自律調整一巡

 なお7月24日に貸借銘柄に選定されたと発表している。選定日は7月27日である。

 株価の動き(15年1月1日付で株式2分割)を見ると、7月1日の上場来高値1690円から利益確定売りや全般地合い悪化の影響で一旦反落したが、9日の1280円から素早く切り返して24日には1556円まで戻した。自律調整が一巡したようだ。中期成長力を評価する流れに変化はないだろう。

 7月24日の終値1549円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS23円26銭で算出)は67倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間11円76銭で算出)は0.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS66円75銭で算出)は23倍近辺である。

 週足チャートで見ると、7月1日の上場来高値で上ヒゲをつけたが、13週移動平均線近辺から素早く切り返した。サポートラインを確認した形だ。15年12月期も増収増益基調であり、中期成長力を評価する流れに変化はない。自律調整が一巡して上値追いの展開だろう。

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