【編集長の視点】「困ったとき」は消去法的にインバウンド関連株にシフトしより出遅れ株にアプローチ

編集長の視点

梅雨明けとともに本番到来と期待された業績相場は、のっけから躓いた。東芝<6502>(東1)の不適切会計問題、元・前・現の歴代3社長の辞任を皮切りに、4~6月期決算発表で先行した米国市場での米国主力株の業績不調・株価急落、中国の景気減速を震源地とする原油価格などの資源価格安などが重なったためだ。このため、前週の日経平均の週足は、200円超幅の陰線を引いた。この躓きが、今後も尾を引くかどうかは、今週から発表が本格化する日本企業の今3月期4~6月期決算の動向次第で、サプライズ続出を期待したいのが市場参加者の大方の本音というところだろう。

ただ足元は、この期待も虚しく、前週末24日の米国ニューヨークダウ工業株30種平均は、163ドル安の4日続落し、日本の主力株のADR(預託証券)は、軒並み青札で返ってきた。となると、今週の東京市場は、やはり三重苦が、引き続き上値を圧迫しそうな展開は否定できず、前週と同様に三井化学<4183>(東1)などの業績を上方修正した好業績銘柄の個別物色と、消去法的にインバウンド(訪日外国人観光客)消費関連株を買う2本立て相場となると想定される。この2本立て相場は、どちらが主、どちらが従となるかだが、決算発表でよほどのサプライズ銘柄が飛び出さない限り、6対4ぐらいのウエートでインバウンド関連株への内需株シフトが優勢となるとみておきたい。

 その場合の問題は、インバウンド関連株の回転がいつまで続くかである。6月の訪日外客数は、前年同月比51.8%増の160万2200人と単月として過去最高となったが、今後は、7月初めの中国株急落や、中国景気減速の影響が出てくるか懸念も尽きず、「爆買い」ストップなら大事である。しかも、インバウンド関連の代表株のラオックス<8202>(東2)は、東証2部株にもかかわらず、日々の売買代金は、トヨタ自動車<7203>(東1)などの主力株を上回る大商いで連日、年初来高値更新を続け、PERは70倍台、PBRは29倍まで買い上げられている。株式市場では、市場全体が手詰まりとなった局面では、「困ったときの○○○株」、「分かっていても○○○」などと呪文を唱えてリリーフ株、救世主株に依存するのが相場セオリーとなっているが、それでも、このラオックスの上値をさらに「爆買い」してくれる需要主体がいるかどうかではある。勢い売り買いが約4000万株と拮抗している信用好需給次第となる可能性があり、この回転が止まれば、今度は、売り抜け競争で1分1秒遅れれば高値で取り残される心配をしなくてはならなくなる。

ラオックスほどではないにしても、インバウンド関連株は、市場平均より割高水準まで買われている銘柄が数多い。百貨店株、ドラッグストア株、ホテル株、旅行代理店株、化粧品株、宝飾品株などが取っ換え引っ換え循環物色され年初来安値から少なくて5割高から倍化している銘柄が大勢となっているからだ。日本政府観光局が、毎月の月央に定期的に前月の訪日外客数の推計値を発表、連続して月間最高を記録し、そのたびごとに「困ったら○○○株」、「分かっていても○○○株」のセオリー通りにインバウンド関連株を買ってきた結果だ。ということは、インバウンド関連株は、ここから上値を買い進むにはラオックスほどではないにしてそれなりのリスクがあることを意味している。

そこでである。このリスクを少しでも軽減するために割り負け関連株はないかということになる。そうした銘柄があるかどうかだが、インバウンド消費は、昨年2014年にすでに2兆円を超え、国内総生産(GDP)の押し上げ効果も発揮しているだけに、「石を投げればインバウンド株に当たる」といわないまでも関連株の裾野は広く、丹念にリサーチすれば出遅れ株が浮上してくることも期待される。(本紙編集長・浅妻昭治)

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