【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ワイヤレスゲートは調整の最終局面、中期成長力を見直して出直り、インバウンド関連も注目点

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ワイヤレスゲート<9419>(東マ)はワイヤレス・ブロードバンドサービスを基盤として事業展開している。株価は地合い悪化の影響で7月9日に年初来安値2505円まで調整する場面があったが、素早く3000円近辺まで戻している。調整の最終局面だろう。15年12月期も増収増益基調であり、インバウンド関連や地方創生関連のテーマ性も注目される。中期成長力を見直して出直り展開だろう。なお8月4日に第2四半期累計(1月~6月)の業績発表を予定している。

■ワイヤレス・ブロードバンドサービスを提供

 通信事業者からインフラを借り受けてワイヤレス・ブロードバンドサービス(Wi-Fi、WiMAX、LTE)を提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)である。販売チャネルはヨドバシカメラ、および携帯電話販売最大手ティーガイア<3738>を主力としている。月額有料会員数の積み上げに伴って収益が拡大するストック型収益構造で、社員1人当たり営業利益額の高さも特徴だ。

■中期成長に向けてインフラ構築・運用支援など新規事業も推進

 中期成長に向けた重点戦略として、M&A・提携も活用したサービス提供エリア拡大、サービスラインナップ拡充、新規事業推進などを掲げている。

 新規事業では14年1月、法人向けWi-Fi環境イネーブラー(構築運用支援)事業を開始した。公衆無線LAN環境を活用する動きが自治体(災害時通信インフラ)、観光地(外国人旅行客誘致)、商店街(集客力向上)などに広がり、20年東京夏季五輪も追い風となって無線LANの需要拡大が予想されるため、クラウド型Wi-Fi環境サービスシステムなど法人向けソリューションサービスを拡大する。

 14年8月にはLTE領域ソリューション拡充の一環として、訪問看護サービスのNフィールド<6077>と業務提携し、M2M/IoTソリューション「クラウド型みまもりサービス」を開始した。14年11月にはWeb会議システムのブイキューブ<3681>と業務提携した。

 14年11月には世界200カ国以上・1300万ヶ所以上のWi-Fiスポットを保有するスペインFon社および日本法人フォン・ジャパンと業務協力し、15年3月には日本のWi-Fiインフラ拡充に向けた取り組みを開始すると発表した。20年東京夏季五輪を視野に入れて国内で20万スポットを構築するとともに、観光地や商業施設などのパブリックエリアにFon社のルーターを活用したWi-Fiエリアを構築する。

 15年3月には移動販売者向けプラットフォームを提供するアンデコ社と資本業務提携、およびWi-Fi環境構築・保守のバディネット社と業務提携した。観光地や商業施設などに構築するWi-Fiインフラにおいて、アンデコ社の「Mobility-Store Platform」と組み合わせてロケーションコマース事業を共同展開する。このロケーションコマース事業の共同展開に関して、バディネット社のWi-Fiインフラ構築体制とノウハウを活用し、ロケーションコマース・ソリューションの拡大を目指す。

 SIMカードに関しては、14年9月にデータ通信専用の「ワイヤレスゲート Wi-Fi+LTE SIMカード」の販売を開始、14年12月に訪日外国人向けデータ通信専用プリペイド型SIMカードの販売を開始、15年4月に音声機能付きSIMカード「ワイヤレスゲート Wi-Fi+LTE 音声通話プラン」の販売を開始した。

 15年4月には、経済産業省の大規模HEMS情報基盤整備事業「みやまHEMSプロジェクト」のコンソーシアムメンバーである福岡県みやま市に対して、エプコ<2311>と共同でLTE回線の提供を開始した。M2M/IoTサービス事業の一環としてSIMカードとフリールーターを提供する。HEMSは省エネ機器をネットワーク化して家庭の電力利用を一括制御するシステムである。

 15年5月にはベネフィット・ワン<2412>と共同で、訪日旅行者向けに「飲食店の割引サービス」と「Wi-Fi+LTE通信サービス」をセットで提供する「Benefit Station Japan」を台湾で販売開始した。訪日旅行客の日本での利便性を高めるサービスだ。今後はベネフィット・ワンが展開するアジア各国でも同サービスを展開する。

 15年6月には、安芸自動車学校と高知県自動車学校の自動車教習生向けに「Wi-Fiインフラ」の提供を7月から開始すると発表した。両校の自動車教習生の利便性を高めるサービスを提供する。

■15年12月期も増収増益基調

 なお14年12月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)20億45百万円、第2四半期(4月~6月)21億59百万円、第3四半期(7月~9月)23億69百万円、第4四半期(10月~12月)25億32百万円、営業利益は第1四半期2億07百万円、第2四半期2億00百万円、第3四半期1億76百万円、第4四半期2億11百万円である。

 第3四半期の営業利益はSIM事業開始に伴うオペレーション費用の影響を受けたが、月額有料会員数の積み上げに伴って増収増益基調である。また14年12月期の配当性向は50.7%、ROEは13年12月期比3.9ポイント低下の23.0%、自己資本比率は同1.2ポイント低下して58.1%だった。

 今期(15年12月期)の連結業績予想(2月12日公表)は、売上高が前期比37.0%増の124億72百万円、営業利益が同69.9%増の13億50百万円、経常利益が同70.8%増の13億48百万円、そして純利益が同71.6%増の8億56百万円としている。配当予想については同1円増配の年間26円(期末一括)としている。予想配当性向は30.8%となる。

 ワイヤレス・ブロードバンド事業では主力の「Wi-Fi+WiMAX」が好調に推移し、SIMカードの収益寄与も本格化する。ワイヤレス・プラットフォーム事業では電話リモートサービスが新規会員獲得で好調に推移し、新規事業のWi-Fiインフラ事業(環境イネーブラー事業)も順次収益化が期待される。

 第1四半期(1月~3月)は売上高が前年同期比28.0%増の26億18百万円、営業利益が同0.2%増の2億08百万円、経常利益が同0.5%増の2億08百万円、純利益が同3.6%増の1億31百万円だった。

 販売手数料、販売促進費、採用費、株主数増加に伴う諸経費などが増加したため各利益はほぼ横ばいだったが、主力のワイヤレス・ブロードバンド事業の会員数が順調に増加して大幅増収だった。

 通期見通しに対する第1四半期の進捗率は売上高が21.0%、営業利益が15.4%、経常利益が15.4%、純利益が15.3%で低水準の形だが、会員数(14年12月期末50万人)が順調に増加して増収基調である。ストック型の収益構造であり、前期のSIM事業開始に伴うオペレーション費用の影響も一巡し、通期ベースで大幅増益が期待される。

 成長戦略として、主力の個人向けモバイルインターネットサービス「Wi-Fi+WiMAX」「Wi-Fi+LTE SIMカード」を安定的に拡大させるとともに、法人向けWi-Fiインフラ事業(環境イネーブラー事業)の収益化を目指している。中期的に収益は拡大基調だろう。

■株価は調整の最終局面

 なお2月に東京証券取引所本則市場への変更申請取り下げを発表したが、企業統治と執行を強化することによって成長スピードを再び加速し、市場変更準備は今後も継続するとしている。

 株価の動きを見ると、4月の年初来高値3765円から反落し、全般地合い悪化も影響して7月9日に年初来安値となる2505円まで調整する場面があった。ただし素早く3000円近辺まで戻している。14年7月の上場来高値6580円から約1年が経過して調整の最終局面だろう。

 7月28日の終値2920円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS84円53銭で算出)は34~35倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間26円で算出)は0.9%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS224円48銭で算出)は13倍近辺である。

 週足チャートで見ると再び26週移動平均線を割り込んだが、地合い悪化が影響した7月9日の安値で下ヒゲをつけた。調整の最終局面のようだ。15年12月期も増収増益基調であり、インバウンド関連や地方創生関連のテーマ性も注目される。中期成長力を見直して出直り展開だろう。

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