【アナリスト水田雅展の銘柄分析】クリナップは調整一巡感、0.6倍近辺の低PBRを見直し

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 クリナップ<7955>(東1)はシステムキッチンの大手である。株価は860円~900円近辺の小幅レンジでモミ合う展開だが、16年3月期の営業減益予想を織り込んで調整一巡感を強めている。0.6倍近辺の低PBRも見直してレンジ下限から切り返し展開だろう。

■システムキッチンの大手、システムバスルームも展開

 厨房部門(システムキッチン)を主力として、浴槽・洗面部門(システムバスルーム・洗面化粧台)も展開し、中期経営計画では「ザ・キッチンカンパニー」の確立を目指している。

 そして重点施策として、システムキッチン「S.S.」「クリンレディ」「ラクエラ」を軸とした商品ラインナップの充実、ブランド力の強化、中高級システムキッチンの市場シェア上昇および普及クラスの強化、全国のショールームへの集客強化と総合競争力の強化、会員登録制組織「水まわり工房」加盟店との連携強化とリフォーム需要の取り込み、トータルコストの低減、CPS活動の全社展開による業務効率化、20年サポートを支える業務システムの整備、そして海外事業の強化などを推進している。

 全国101ヶ所のショールームへの集客を強化するため、リニューアルと生活提案型ショールームへの転換を進めている。15年3月期は帯広、藤沢、鹿児島、和歌山、新潟の5ヶ所の移転リニューアル、大宮、大阪、岡山、大分の4ヶ所のリニューアルを実施した。さらに15年4月は石巻(移転リニューアル)、仙台(リニューアル)の2ヶ所を実施した。15年4月現在で過去4年間のリニューアルは約50ヶ所となった。

 商品力の面では、普及クラスで人気のシステムキッチン「ラクエラ」のリニューアル効果で、普及クラスの15年3月期の市場シェアが前期比0.9ポイント上昇して21.0%となった。

 リフォーム政策では会員登録制組織「水まわり工房」加盟店が、15年3月期に前期比514社増加して5346社となった。また海外展開では、中国で瀋陽や蘇州など4地区にキッチン等の提供を開始した。台湾やベトナムでの販売も拡大しているようだ。

■16年3月期は営業減益だが、純利益は増益予想

 なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)319億24百万円、第2四半期(7月~9月)284億53百万円、第3四半期(10月~12月)288億39百万円、第4四半期(1月~3月)270億23百万円、営業利益は第1四半期19億68百万円、第2四半期5億49百万円、第3四半期11億13百万円、第4四半期6億02百万円の赤字だった。

 また15年3月期の配当性向は96.0%だった。ROEは14年3月期比7.0ポイント低下して1.5%、自己資本比率は同2.5ポイント上昇して65.7%となった。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(5月11日公表)は、売上高が前期比1.5%増の1180億円、営業利益が同7.5%減の28億円、経常利益が同9.4%減の24億50百万円、純利益が同52.7%増の13億50百万円としている。配当予想は前期と同額の年間20円(第2四半期末10円、期末10円)で予想配当性向は61.6%となる。

 消費増税後の厳しい事業環境が継続して微増収にとどまり、営業減益、経常減益見込みとしている。純利益は特別損失や繰延税金資産取崩の影響が一巡して大幅増益見込みだ。

 ただし食住イベントやフェアの開催によるブランド力向上、ショールーム全面リニューアルによる集客力強化、会員登録制組織「水まわり工房」加盟店との連携などの販売強化施策を推進する。そしてショールームへの来場者数の回復が期待される。システムキッチンの市場シェアは上昇基調であり、原価低減なども寄与して中期的には収益拡大が期待される。

■株価は調整一巡感、レンジ下限から切り返し

 株価の動きを見ると、5月11日の年初来高値970円から反落して水準を切り下げ、5月中旬以降は概ね860円~900円近辺の小幅レンジでモミ合う展開のようだ。全般地合い悪化の影響を受けて7月9日に844円まで調整する場面があったが、影響は一時的だった。そして1月の年初来安値828円まで下押す動きは見られず調整一巡感を強めている。

 7月28日の終値877円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS32円46銭で算出)は27倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は2.3%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1358円69銭で算出)は0.6倍近辺である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形となって26週移動平均線を割り込んだが、大勢としては800円台~900円台でのボックス展開の形だ。16年3月期の営業減益予想を織り込んで調整一巡感を強めており、0.6倍近辺の低PBRも見直してレンジ下限から切り返し展開だろう。

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