【アナリスト水田雅展の銘柄分析】三社電機製作所は第1四半期減収減益を嫌気したが、目先的な動きで過剰反応

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 三社電機製作所<6882>(東2)は電源機器事業と半導体事業を展開している。株価は8月4日発表の第1四半期(4月~6月)減収減益を嫌気して急落したが過剰反応の印象が強い。業績発表直後に見られる目先的な動きだろう。大型案件が寄与する16年3月期増収増益基調に変化はなく、1桁台の予想PER、0.6倍近辺の実績PBR、2%台後半の予想配当利回りと指標面の割安感も強い。目先的な売りが一巡して切り返す展開だろう。

■電源機器事業と半導体事業が2本柱

 産業機器向けが主力の電源機器事業、および半導体事業を2本柱として事業展開している。昭和8年に映写機用アーク電源を開発した歴史を持ち、メッキ関連電源の国内市場シェアは5割強である。パナソニック<6752>の持分法適用関連会社だが売上依存度は低い。生産は国内の滋賀工場、岡山工場、および中国で、海外生産比率は約20~30%である。

 電源機器事業では、太陽光発電用パワーコンディショナ、電力貯蔵システム用パワーコンディショナ、燃料電池シミュレータ電源、UPS(無停電電源装置)などのインバータを主力として、産業機器用の一般電源、メッキや自動車電着塗装などに強みを持つ金属表面処理用電源、アルミ溶接関連に強みを持つ溶接機器、映写機関連に強みを持つ光源用電源、および充電装置なども展開している。

 半導体事業では、パワーエレクトロニクス関連の一般モジュールを主力として、ディスクリート、ウェハ・チップなども展開している。15年3月にはパナソニックと共同で、複数のSiC(炭化ケイ素)トランジスタを組み込んだ業界最小のSiCパワーモジュールを開発した。SiCパワーデバイスは、従来のSi(シリコン)パワーデバイスを超える低損失動作を実現できるため、大電流・高電圧用途における省エネルギー化のキーデバイスとして注目されている。

 なお7月30日に、9月2日~4日にインテックス大阪で開催される「関西スマートエネルギーWeek2015 第3回関西太陽光発電システム施工展」に出展すると発表している。太陽光発電システム用パワーコンディショナや蓄電池付きパワーコンディショナなどを紹介する。

 また8月5日には、日本電機工業会主催「平成27年度(第64回)電機工業技術功績者表彰」において、当社の「高効率大型オゾナイザ用電源装置」が奨励賞を受賞したと発表している。今回受賞の「高効率大型オゾナイザ用電源装置」は、オゾンによる水の細菌などの有機物除去が必要となる多くの浄水場や下水処理場に導入が進められている。

■第1四半期減収減益だが、大型案件が寄与して16年3月期は増収増益基調

 15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)45億94百万円、第2四半期(7月~9月)53億67百万円、第3四半期(10月~12月)55億34百万円、第4四半期(1月~3月)66億18百万円、営業利益は第1四半期2億93百万円、第2四半期4億61百万円、第3四半期7億53百万円、第4四半期7億94百万円だった。

 滋賀工場新棟の稼働遅延の影響が一巡したことも寄与して、期後半に営業損益改善が鮮明になった。また15年3月期の配当性向は16.9%、ROEは14年3月期比2.2ポイント低下して8.5%、自己資本比率は同5.9ポイント上昇して66.6%だった。

 8月4日に発表した今期(16年3月期)第1四半期(4月~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比5.8%減の43億26百万円となり、営業利益が同28.3%減の2億10百万円、経常利益が同25.9%減の2億13百万円、純利益が同12.3%減の1億68百万円だった。

 セグメント別に見ると、電源機器事業は売上高が同6.3%減の26億59百万円だが、営業利益が同41.0%増の1億79百万円だった。売上面では金属表面処理用電源が電子部品向けの好調で同37.7%増収だったが、設備用の一般電源が同49.9%減収、インバータがメガソーラー用パワーコンディショナのユーザー側での設置工事遅れの影響で同20.1%減収となり、全体でも減収となった。ただし利益面ではプロダクトミックスの改善、国内工場の生産安定などの効果で大幅増益だった。

 半導体事業は売上高が同5.0%減の16億67百万円となり、営業利益が同81.4%減の30百万円だった。売上面ではディスクリートが堅調だったが一般モジュールの減収をカバーできず、利益面では固定費の増加も影響して減益だった。

 通期の連結業績予想は前回予想(5月8日公表)を据え置いて売上高が前期比10.8%増の245億円、営業利益が同21.7%増の28億円、経常利益が同22.3%増の28億円、純利益が同19.5%増の18億円としている。配当予想は同6円増配の年間23円(第2四半期末10円、期末13円)としている。2期連続の増配で予想配当性向は19.1%となる。

 電源機器事業における再生可能エネルギー関連の大型案件(独立行政法人産業技術総合研究所向けの太陽光シミュレーション電源装置)も寄与して増収増益予想だ。前期減益の一因となった滋賀工場新棟の稼働遅延の影響が一巡して稼働率が上昇することも寄与する。なお想定為替レートは1米ドル=115円で、1円変動による為替感応度は営業利益段階で約15百万円としている。

 セグメント別の計画を見ると、電源機器事業は大型案件も寄与して売上高が同16.1%増の175億円、営業利益が同47.8%増の20億円、半導体事業は価格面での弱含みを想定して売上高が同0.6%減の70億円、営業利益が同15.5%減の8億円としている。

 主力製品の売上高は電源機器事業のインバータが同3.1%減の55億円、一般電源が同98.3%増の47億円、金属表面処理用電源が同9.6%増の28億50百万円、半導体事業の一般モジュールが同2.8%増の54億40百万円の計画としている。

 第1四半期は減収減益となり通期予想に対する進捗率も低水準だが、電源機器事業における再生可能エネルギー関連の大型案件も寄与して通期ベースでの増収増益基調に変化はないだろう。プロダクトミックス改善効果、一段の生産性改善効果に加えて、為替が想定よりドル高・円安水準で推移していることもプラス要因だ。

■電力・再生可能エネルギー関連の市場拡大も追い風に収益拡大基調

 今後の事業展開としては、半導体事業では需要が拡大基調のパワーエレクトロニクス関連の市場環境変化にも対応しながら、組立工程完全自動化や設備稼働率適正化などにより収益力向上を目指す。新製品では15年3月に開発した超小型SiCパワーモジュールの拡販も期待される。

 電源機器事業では、創エネ・蓄エネ関連のインフラ系事業と各種生産設備用電源機器事業のバランスを意識しながら、中規模発電用太陽光パワーコンディショナ、系統安定化関連の無効電力補償装置や蓄電池内臓インバータ、UPS(無停電電源装置)など、国内市場向けインフラ系電源システムで主力製品・新製品の拡販を推進する。生産設備用電源では、金属表面処理用電源や溶接機のニッチ分野での新製品拡販、さらに銅箔・アルミ箔加工用など大型直流電源の海外展開も推進する。

 長年培った高度な技術力がベースにあり、電力系統安定化や電力小売全面自由化など電力・再生可能エネルギー関連分野の市場拡大も追い風として、中期的に収益拡大基調が期待される。

■株価は第1四半期減収減益を嫌気したが過剰反応

 株価の動きを見ると、6月高値1101円後に上げ一服の形となり900円~1000円近辺でモミ合う展開だったが、8月4日発表の第1四半期減収減益を嫌気して5日は前日比148円(15.82%)安の788円まで急落する場面があった。ただし通期ベースでの増収増益基調に変化がないことを考慮すれば過剰反応の印象が強い。業績発表直後に見られる目先的な動きだろう。

 8月5日の終値805円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS120円46銭で算出)は6~7倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間23円で算出)は2.9%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1249円11銭で算出)は0.6倍近辺である。割安感の強い水準だ。

 日足チャートで見ると5日は窓を開けて急落し、25日移動平均線に対するマイナス乖離率が一気に10%を超えて売られ過ぎ感を強めている。また5日のローソク足はほぼ十字線となって反発余地を残した。週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形となったが、26週移動平均線がサポートラインの形だ。

 第1四半期は減収減益だったが通期ベースでの増収増益基調に変化はなく、1桁台の予想PER、0.6倍近辺の実績PBR、2%台後半の予想配当利回りと指標面の割安感も強い。目先的な売りが一巡して切り返す展開だろう。

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