【アナリスト水田雅展の銘柄分析】建設技術研究所は調整一巡して切り返し、15年12月期増収増益予想や割安感を見直し

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 建設技術研究所<9621>(東1)は総合建設コンサルタントの大手である。株価は6月安値1055円、7月安値1093円から8月6日の1239円まで切り返して調整一巡感を強めている。第2四半期累計(1月~6月)業績の高進捗率を評価する動きだ。15年12月期増収増益予想であり、指標面の割安感も見直して出直り展開だろう。

■総合建設コンサルタントの大手

 総合建設コンサルタントの大手で河川・ダム・海岸・海洋、道路、橋梁、トンネル、都市・地方計画などの分野に強みを持っている。13年9月には農業・農村関連ビジネスへの参入を視野に入れて子会社CTIフロンティアを立ち上げ、14年4月には太陽光発電事業に着手した。

 また15年6月にはユニチカ<3103>からユニチカ環境技術センターの全株式を取得して完全子会社化した。同社の子会社化によって土壌、大気、水質などさまざまな環境要素のモニタリング・解析が可能となり、当社グループの環境分野でのソリューション提供力のさらなる強化を目指すとしている。

■中長期ビジョンで事業領域拡大を推進

 15年5月にCTIグループ中長期ビジョン「CLAVIS2025」を策定した。グループの目指す方向は、幅広いインフラを対象としてあらゆるニーズに対応する「マルチインフラ企業」、世界に貢献するために海外業務をさらに拡大する「グローバル企業」であり、これを技術者と技術を経営資源とする「アクティブ企業」への推進によって実現するとしている。

 そして25年の事業規模目標を600億円(国内500億円、海外100億円)として、環境調査・分析、物流、エネルギー、インフラ整備・運営、農業経営・コンサルタント、気象予測サービスなど、新分野・未参入分野・周辺分野・新業種等へ事業領域を拡げる方針を掲げている。

■15年12月期第2四半期累計は減益だが通期予想に対して高進捗率

 なお14年12月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)100億06百万円、第2四半期(4月~6月)108億72百万円、第3四半期(7月~9月)92億80百万円、第4四半期(10月~12月)93億66百万円、営業利益は第1四半期10億22百万円、第2四半期8億85百万円、第3四半期3億76百万円、第4四半期1億05百万円だった。期後半の利益がやや低水準だった。

 また14年12月期の配当性向は17.1%だった。ROEは13年12月期比2.2ポイント上昇して6.9%、自己資本比率は同4.2ポイント低下して53.1%だった。

 7月24日発表の今期(15年12月期)第2四半期累計(1月~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比3.2%増の215億46百万円で、営業利益が同11.0%減の16億97百万円、経常利益が同10.1%減の17億53百万円、純利益が同3.1%減の10億78百万円だった。

 受注高は同0.9%増の227億42百万円だった。技術力によって契約企業を選定するプロポーザル方式において優位性を発揮し、受注が順調に推移したようだ。

 なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)78億09百万円、第2四半期(4月~6月)137億37百万円で、営業利益は第1四半期1億92百万円、第2四半期15億05百万円だった。第1四半期は売上高が低水準だったが、第2四半期は順調に推移した。

 通期の連結業績予想は前回予想(2月13日公表)を据え置いて、売上高が前期比3.7%増の410億円、営業利益が同4.6%増の25億円、経常利益が同3.0%増の26億円、純利益が同4.0%増の15億50百万円としている。配当予想は前期と同額の年間18円(期末一括)で、予想配当性向は16.4%となる。

 受注高は同0.9%減の400億円の計画としている。東日本大震災の復興関連業務の重点が設計段階から施工段階に移行することに加えて、財政再建のための公共工事発注減少も予想されるとして、やや慎重な見通しだ。

 ただし通期予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が52.6%、営業利益が67.9%、経常利益67.4%、純利益69.6%と高水準である。四半期ベースで変動の大きい収益構造だが、通期会社予想に増額の可能性もあるだろう。

■中期的に事業環境は良好

 中期的には良好な事業環境が追い風となる。20年東京夏季五輪関連、リニア新幹線関連など建設ビッグプロジェクトが目白押しであり、国土強靭化基本計画に沿って社会資本整備に対する計画的な投資が実行される。

 防災・減災関連、老朽化インフラ補修・更新関連、都市再開発関連、アベノミクス重点戦略「地方創生」関連の案件が増加し、土木コンサルタント業務の積算に用いられる技術者単価や一般管理費の比率が上昇して採算改善も期待される。

 中期的に事業環境は良好であり、CTIグループ中長期ビジョン「CLAVIS2025」で掲げた新分野・未参入分野・周辺分野・新業種等への事業領域拡大戦略も奏功して収益拡大が期待される。

■株価は調整一巡して切り返しの動き

 株価の動きを見ると、安値圏1200円台でのモミ合いから一旦下放れの形となったが、6月安値1055円、そして7月安値1093円から切り返しの動きを強めている。8月6日には1239円まで上伸した。調整が一巡したようだ。第2四半期累計の高進捗率を評価する動きだろう。

 8月6日の終値1221円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS109円61銭で算出)は11~12倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間18円で算出)は1.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1539円79銭で算出)は0.8倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線を突破した。また週足チャートで見ると戻りを押さえていた13週移動平均線突破の動きを強めている。調整が一巡して強基調に転換する動きのようだ。15年12月期増収増益予想であり、指標面の割安感も見直して出直り展開だろう。

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