【新春相場展望】「株を枕に越年」の121銘柄のめでたさは割安、割高を決め手に宝船も泥船も

相場展望

 『めでたさも 中くらいなり おらが春』と吟じたのは、小林一茶である。一方、あの一休さんは、『めでたくもあり めでたくもなし』と詠じた。このように年が改まった年頭のめでたさは、それぞれ各人各様である。ではこの年末年始、正月休みを「株を枕に越年」した投資家の新春相場のめでたさはどのくらいだろうか?

 「株を枕に越年」した投資家は、引かれ玉を損切りもできずに塩漬けを覚悟した投資家を除けば、多くがブル投資家だろう。その先高期待でみる初夢は、吉兆の「一富士二鷹三茄」でなければならず、夢のなかでは枕にした株の株価が、富士山の頂より高く上昇し初日の出を浴びて光り輝いていたに違いない。そう想定しなければ、前年2022年の大納会の日経平均株価が、4年ぶりに前々年の大納会の終値を下回って引けたなかで「株を枕に越年」などできない相談だからだ。

 この越年銘柄のおおよそは、察しがつく。一つは、昨年の大納会で年初来高値を更新した銘柄だろう。新春相場での一段高を期待して高値まで買い上がった銘柄で、全市場合計で71銘柄となった。もう一つは、年間上昇率ランキングで上位にランクインした銘柄に違いない。そのトップ50では、第1位のキャンバス<4575>(東証グロース)は、6.4倍の大化けを演じ、第50位の東洋証券<8614>(東証プライム)でも97.2%の上昇をした。ランクインした銘柄のなかにはライフドリンクカンパニー<2585>(東証スタンダード)、円谷フィールズホールディングス<2767>(東証プライム)、八千代工業<7298>(東証スタンダード)、マミヤ・オーピー<7991>(東証スタンダード)のように大納会の取引時間中に年初来高値を更新した銘柄も含まれた。

 問題は、冒頭にも提示したようにこの二つを合計した121銘柄の越年銘柄の2023年の株価パフォーマンス、めでたさ具合となる。新年相場は、相変わらず米国の金融引き締め策の長期化、景気のリセンション入りを懸念して先行き不安定なままで、日経平均株価は、前週末6日に反発して引けたものの前年大納会終値より120円安と下げ、6日に700ドル高と急反発した米国のダウ工業株30種平均(NYダウ)も、東京市場が休場の10日には112ドル安と反落した。何とも気掛かりな船出で、越年投資家の初夢が正夢となるか逆夢となるか、新春相場に漕ぎ出した小舟が、金銀財宝満載をして無事に帰港する宝船となるか、荒波に揉まれて傾く泥船となるかは不透明である。

 というのも、例えば年間上昇率ランキングのトップ50銘柄でも、前々の2021年にランクインした50銘柄のうち、2022年大納会に向けて株価が続伸した銘柄は2割強にとどまったからだ。なかでも特徴的だったのは海運大手3社であった。日本郵船<9101>(東証プライム)は、2021年年間上昇率が3.65倍でランク7位にランクインしたが、2022年も、相次ぐ業績上方修正、増配などがサポート材料となって続伸して2022年大納会の終値は、昨年9月に実施した株式分割を勘案して2021年大納会を上回った。新年2023年は、コンテナ船運賃の下落で急落したものの、前週末6日はリバウンドして2021年大納会終値を上回っており、下値抵抗力を発揮した。

 このほか2021年年間上昇率ランキングの上位にランクインした銘柄も、壽屋<7809>(東証スタンダード)、NIPON EXPRESSホールディング<9147>(東証プライム)、伯東<7433>(東証プライム)などが、同じように業績上方修正、増配などを手掛かりに続伸した。このことは、越年銘柄の翌年相場での株高継続力の決め手となったのは、業績ファンダメンタルズが基本で、割安か割高かが正夢か逆夢か、宝船か泥船かの分岐点になることを示唆しているといえそうだ。

 足元の合計121銘柄の越年銘柄からこの基準で有望銘柄をスクリーニングすると、大納会新高値銘柄からは高値時点での低PERベスト20銘柄、年間上昇率上位銘柄からは、ベスト10銘柄がセレクトされた。卯年相場での一跳ね、二跳ね、三跳ねを期待してトライするのも一法となりそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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