東京大学・ソフトバンク・小田急電鉄、「次世代AI都市シミュレーター」の実証実験を加速・拡大

■人流×デジタルツインによる都市の課題解決の手法の確立を目指す

 国立大学法人東京大学、ソフトバンク<9434>(東証プライム)と小田急電鉄<9007>(東証プライム)は1月17日、「次世代AI都市シミュレーター」の実証実験の対象エリアを、2022年12月から、小田急線海老名駅周辺の一部の商業施設から同駅周辺エリアまで拡大して開始したと発表。

 「次世代AI都市シミュレーター」は、東京大学とソフトバンクがBeyond AI研究推進機構の研究テーマの一つとして、2021年4月から小田急電鉄と協力して研究開発に取り組んでいるものである。これまでの研究開発では、現実空間での人流・交通・購買・来訪者などの匿名化された属性データとデジタルツインの技術を用いて、デジタル空間上に海老名駅周辺エリアを再現し、インセンティブ(動機付け)が行動変容を促す効果を検証している。

 これまでの実証実験では、商業施設「ViNAWALK(ビナウォーク)」内に設置したビーコンやデジタルサイネージなどを活用し、行動変容への動機付けとして施設の来館者に役立つ情報などをタイムリーに配信し、効果を検証してきた。この検証結果を基に、商業施設への来館者数や売り上げ向上の効果を予測し、複数の店舗での購買やイベント後の購買などの行動変容を促す人流誘導アルゴリズムの開発、デジタルツインを活用したシミュレーション結果の可視化などを実現した。

 同実証実験では、「次世代AI都市シミュレーター」のデータなどを活用し、イベントの集客や購買、店舗運営の効率化を促進することで、都市全体の暮らしやすさの向上や地域経済の活性化を図る他、フードロスの削減や省エネルギーなど、サステナブルな都市づくりに向けた課題解決も目指していく。

 同実証実験の新たな取り組みとして、人流誘導の効果のさらなる向上を目指して、実証実験の対象地域を、海老名駅周辺を含めた地域に拡大するとともに、この地域を訪問する人、居住者や勤務者なども対象にする。対象エリア内にある商業施設への来館者には優待やイベント情報を、マンションの居住者には買い物に使えるクーポンなど日々の生活に密着した情報を、オフィスビルの勤務者向けには飲食店の混雑予測情報などを、それぞれ提供する。ユーザーの属性に合わせて最適な情報を提供することで、食事や買い物をより快適にお楽しみいただける仕組みを構築する。情報提供は、商業施設のLINE公式アカウントやサイネージなどを通して行いる。海老名駅周辺エリアは、小田急電鉄が掲げる「職、住、商、学・遊」の生活シーンが充実することで、暮らしやすさの向上や地域経済の活性化を推進している。日々進化する海老名駅周辺エリアにおいて、都市に関わる多様な人々へのアプローチを行っていく。

 また、予測情報の提供の対象者を拡大し、「ViNA GARDENS(ビナガーデンズ)」の商業施設に入居中のテナントに対して、人流の予測情報を本実証実験専用のLINEアカウントで提供する。テナント側はこの情報を基に、スタッフの勤務シフトや配置の最適化、商品や材料の仕入れや在庫管理、空調の管理などを効果的に行うことができる。これにより、飲食店におけるフードロス対策や施設の節電などにつなげていく。提供情報などについて、テナント側の感想を簡単にフィードバックできる仕組みを構築し、その結果を基に、より有益な情報を配信するサイクルを確立する。

 今後、東京大学とソフトバンクは、「次世代AI都市シミュレーター」をさらに発展させ、実用性と汎用性が高いスマートシティソリューションの開発とデジタルツインの精度の向上を図り、さまざまな都市での活用を目指す。小田急電鉄は、さらなる賑わいの創出による「ViNA GARDENS プロジェクト」の進展に加え、研究の成果の小田急沿線での活用により、地域の新しい価値の創造を目指す。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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