フライトホールディングスは調整一巡、23年3月期大幅増益予想、Tapionを複数店舗でパイロット運用

 フライトホールディングス<3753>(東証スタンダード)は電子決済ソリューションを主力としてシステム開発・保守なども展開している。国内初となるAndroid携帯でタッチ決済する小・中規模事業者向け決済ソリューションTapion(タピオン)については、本格サービスインに先駆けて複数店舗でパイロット運用を開始している。23年3月期は前期計上したプロジェクト損失の一巡も寄与して大幅増益予想としている。キャッシュレス関連、マイナンバーカード関連、無人自動精算機関連など有望案件が目白押しであり、積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は急伸した22年10月の昨年来高値圏から反落して安値圏に回帰の形となったが調整一巡感を強めている。出直りを期待したい。

■電子決済ソリューションが主力

 システム開発・保守などのコンサルティング&ソリューション(C&S)事業、および電子決済ソリューションなどのサービス事業、B2B(企業間取引)ECサイト構築システムのECソリューション事業を展開している。なお23年1月1日付で、C&S事業および電子決済ソリューション事業を展開する子会社のフライトシステムコンサルティングが、同じく子会社でECサイト構築システムを展開するイーシー・ライダーを吸収合併した。ECソリューション事業の強化に向けて組織体制を再構築する。

 22年3月期のセグメント別売上高構成比はC&S事業が28%、サービス事業が66%、ECソリューション事業が6%、利益(全社費用等調整前営業利益)構成比はC&S事業が20%、サービス事業が98%、ECソリューション事業が▲18%だった。収益はサービス事業の大型案件によって変動する傾向が強い。

■サービス事業は電子決済ソリューションを展開

 サービス事業は電子決済ソリューション分野で、スマートデバイス決済専用アプリのペイメント・マイスターと、スマートデバイス決済専用マルチ電子決済端末のIncredistシリーズを主力として展開している。

 ペイメント・マイスターは、iPhoneやiPadをクレジットカード決済端末として利用する大企業向けBtoB決済ソリューションである。ホテル・レストランなどに幅広く導入されている。

 Incredistシリーズでは、戦略製品として据置・モバイル兼用型のマルチ決済装置Incredist TrinityおよびIncredist Trinity Miniの販売を推進している。またIncredist Premiumの後継機として、マイナンバーカード読取に対応した次世代型マルチ決済装置Incredist Premium Ⅱを21年1月から販売開始した。

 EMV(接触型ICクレジットカード)決済、コンタクトレスEMV(非接触型ICクレジットカード)決済に対応し、コンタクトレスEMVはMastercardなど国際6ブランドに認定されている。

 国内電子マネー決済では、19年7月にSuicaなど10種類の交通系ICカード決済への対応が完了している。さらに交通系ICカード対応では、19年7月にディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>のタクシー配車アプリMOV(現、Mobility Technologiesが提供するタクシーアプリGO)の車内決済システムとして、incredist Premiumが採用されている。スルッとKANSAI協議会が近畿圏を中心に展開しているポストペイ型IC決済サービス「PiTaPa」にも22年春から順次対応している。

 市販のAndroid携帯を使ってカードのタッチ決済を実現する小・中規模事業者向けの決済ソリューションTapion(タピオン)については、22年4月にTapionにおいて推奨Android携帯を選定する独自認定制度Tapion検定の作成と運用開始を発表、22年6月に第1回目のTapion検定認定合格機種を公式サイトに開示した。自社決済センターを構築し、NTTデータ<9613>の拡張性の高い決済伝送サービス「GAFIS GlobalGEAR」に接続して運用する。ハードウェア製造に依存しないビジネスとして注力し、カフェ、カジュアルレストラン、キッチンカー、屋台、朝市などの小・中規模事業者などの加盟店に向けて、キャッシュレス決済およびタッチ決済の普及拡大に努める方針だ。

 本格サービスインに向けて22年10月よりTapionのパイロット運用を開始した。パイロット運用加盟店第1弾実施店舗は「ロールアイスクリームファクトリー渋谷・TOHOシネタワー店」(店舗に設置されているPOSレジと併用する形のTapionスタンダードバージョン)である。さらにTapionのPOS機能を使ったTapionプラチナバージョンでのパイロット運用として、22年12月にパイロット運用2店舗目となる「白金台生花店rhythm」、3店舗目となる「ばくだん焼本舗池袋本店」においてパイロット運用を開始した。

 自動精算機分野では、米国ID TECH社製VP6800を国内の飲料自動販売機や駐車場無人自動精算機などに接続するため、マルチ決済端末VP6800・IFCを製品化している。19年6月にはGMOフィナンシャルゲート(GMO-FG)と接続開始し、GMO-FGを通じた決済ソリューションとして自動精算機向けVP6800・IFCの拡販を推進している。

■電子決済ソリューションはキャッシュレス化や非接触が追い風

 電子決済ソリューションはキャッシュレス化の流れが追い風となり、非接触が新型コロナウイルス対策としても注目されている。改正割賦販売法施行によって磁気カード対応からICカード対応に移行することが義務付けられ、一般の店舗、タクシーや電車の券売機、屋外に設置されている自動販売機やコインパーキング精算機など、クレジットカードを取り扱う全ての業種で対応が必要となっている。また国策として非接触クレジットカード決済(正式名称コンタクトレスEMV、通称NFC決済)やマイナンバーカードへの統合等の普及促進が図られている。

 こうした状況も背景として、決済種類・ブランドの拡大、電子マネーブランドの拡大、決済端末製品ラインアップの拡充と拡販、決済パートナーの拡大、ストック型ビジネスモデルの拡大など、電子決済ソリューションの展開を加速している。

 18年5月には三井住友カードと包括加盟店契約を締結した。三井住友カードの代行として加盟店開拓・契約締結・管理を行い、継続的に手数料収入が得られるストック型収益となる。そして22年3月には三菱UFJニコスとクレジットカード決済における包括的加盟店契約を締結、22年6月にはジェーシービー(JCB)と各種クレジットカード決済および電子マネー決済における包括代理店加盟契約を締結、さらに22年8月にはSBペイメントサービスと包括代理店加盟店契約を締結したと発表している。製品販売に加えて決済代行事業も推進する。

 またキャッシュレス決済需要が高まっている中小店舗・商店街への対応として、各地の商店街連合会や各種団体と連携して決済代行事業を行っているJASPASと資本提携し、決済ソリューションの展開を加速している。

 22年3月には、電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律の規定に基づき、マイナンバーカードを活用した公的個人認証サービスのプラットフォーム事業者として、主務大臣認定(本認定においては総務大臣と内閣総理大臣)を取得した。そして22年5月には、iPadとIncredist Premium Ⅱを活用したマイナンバーカード読取によるシンクライアント型公的個人認証サービスmyVerifist(マイ・ベリフィスト)を開始した。

■ロボット関連も強化

 C&S事業は、公共系・音楽配信系・金融系・物流系・放送系などのシステム開発を展開している。サービス事業との融合でロボット関連も強化している。ジエナ社と共同開発したロボットコンテンツ制作サービスScenariaは、簡単にコンテンツ更新できるソリューションとして、ソフトバンクロボティクスの人型ロボットPepperや、NTT東日本のデスクトップ型ロボットSotaに対応している。

 ECソリューション事業のEC-Rider B2Bは、卸売・企業間取引に特化したECサイト構築システムである。また伝票処理自動化ソリューションの新製品OCRiderの拡販も推進する。

■23年3月期2Q累計は反動で赤字だが通期大幅増益予想据え置き

 23年3月期の連結業績予想は、売上高が22年3月期比7.7%増の35億円、営業利益が39.4%増の2億20百万円、経常利益が29.4%増の2億円、親会社株主帰属当期純利益が31.5%増の1億50百万円としている。

 C&S事業は既存顧客向けシステム開発・保守、DX推進支援、クラウドサービスを活用したシステム開発支援に注力する。サービス事業はマイナンバーカード対応の決済ソリューションIncredist Premium Ⅱや無人精算機向けVP6800/IFCの拡販、マイナンバーカードを用いた公的個人認証サービス、Android携帯を活用したタッチ決済ソリューションTapionの開発・拡販に注力する。ECソリューション事業は開発スケジュールが遅延している大型開発案件の収束、既存顧客向けECサイト構築パッケージEC-Rider B2Bのカスタマイズ対応に注力する。

 第2四半期累計は、売上高が前年同期比18.2%減の12億95百万円、営業利益が71百万円の赤字(前年同期は46百万円の黒字)、経常利益が75百万円の赤字(同41百万円の黒字)、親会社株主帰属四半期純利益が78百万円の赤字(同40百万円の黒字)だった。サービス事業の前期大型案件の反動で減収・赤字だった

 C&S事業は、売上高が26.0%増の4億95百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が63百万円の黒字(前年同期は14百万円の赤字)だった。物流企業からの売上増加などで増収となり、前期計上したプロジェクト損失の一巡も寄与して増益(黒字転換)だった。

 サービス事業は、売上高が30.0%減の7億49百万円、利益が82.2%減の39百万円だった。前期に電子決済ソリューション「Incredist」の大型納品があった反動で大幅減収減益だった。

 ECソリューション事業は、売上高が57.7%減の50百万円、営業利益が26百万円の赤字(同15百万円の赤字)だった。大型開発案件の開発スケジュール遅延で受注損失引当金を計上したため減収・減益(赤字拡大)だった。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が6億62百万円で営業利益が24百万円の赤字、第2四半期は売上高が6億33百万円で営業利益が47百万円の赤字だった。

 通期の連結業績予想は据え置いている。第2四半期累計は大型案件の反動で赤字だったが、キャッシュレス関連、マイナンバーカード関連、無人自動精算機関連など有望案件が目白押しであり、積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。

■株価は調整一巡

 株価は急伸した22年10月の昨年来高値圏から反落して安値圏に回帰の形となったが調整一巡感を強めている。出直りを期待したい。1月20日の終値は491円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS15円86銭で算出)は約31倍、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS56円50銭で算出)は約8.7倍、時価総額は約46億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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