アルコニックスはモミ合い上放れ、23年3月期減益予想だが上振れ余地

 アルコニックス<3036>(東証プライム)は非鉄金属、電子材料、金属加工部品などを取り扱う商社で、商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」を目指している。23年3月期は生産・出荷の一時的な落ち込みなど事業環境の不透明感を考慮して減益予想としている。ただし第2四半期累計の進捗率が高水準だったことを勘案すれば、通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化も影響して上値が重く小幅レンジでモミ合う形だったが、調整一巡して上放れの動きを強めている。低PER、高配当利回り、低PBRという指標面の割安感も評価して上値を試す展開を期待したい。なお2月8日に23年3月期第3四半期決算発表を予定している。

■商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」

 非鉄金属、電子材料、金属加工部品などを取り扱う商社である。さらに商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」を目指し、M&Aも積極活用して、非鉄金属の周辺分野も含めた川上(製造)~川中(流通)~川下(問屋)を網羅するビジネス展開を推進している。

 18年12月に摩擦調整材カシューパーティクル製造販売の東北化工を子会社化、19年2月にカーボンブラシ製造販売の富士カーボン製造所を子会社化、19年7月にメキシコFUJI ALCONIXがメキシコFNA社の自動車部品用精密金属プレス部品事業を譲り受け、19年10月に香港でリチウムイオン電池材料事業の合弁会社を設立、19年11月に中国で建設用仮設資材の輸入・製造・販売の合弁会社を設立した。

 20年3月に子会社の平和金属を完全子会社化、20年8月に子会社のアドバンストマテリアルジャパン(AMJ社)がタングステン化合物メーカーの台湾・Lianyou Metals社に出資、20年12月に空調機器向け配管部品製造販売の富士根産業を子会社化、21年3月にメキシコFUJI ALCONIXがメキシコFNA社から工場用地・建物を取得した。

 22年4月には精密コネクタ金属端子部品プレス加工のジュピター工業を子会社化した。また、商社流通セグメントに所属する国内関係子会社(平和金属、林金属、アルコニックス・三高、アルミ銅センター)の財務・経理・総務・労務等の管理業務を集約して行うシェアードサービスの子会社ACメタルズを設立した。22年7月には各種レーザー機器・装置の製造・販売を手掛ける金門光波を子会社化した。

 22年11月には金属加工メーカーでリチウムイオン電池用機構部品の製造に強みを持つソーデナガノを子会社化した。EV用バッテリー向けの需要拡大が期待されるほか、グループ内のプレス専業子会社と「総合プレス加工グループ」を形成して多種多様な顧客ニーズに対応する戦略だ。また22年11月にはDKSHマーケットエクスパンションサービスジャパンの金属製品部の事業(チタン展伸材の欧州向け輸出など)の全てを取得した。

 なお21年12月には、投資事業(アルコニックスグローバルイノベーション投資事業有限責任組合、21年8月設立の子会社アルコニックスベンチャーズが運用)を開始した。先端材料・高成長事業および素材・モノづくりに関連のあるベンチャー企業または事業を投資先として成長支援し、投資先が生み出すアイデアや技術を取り込んで新規事業開拓と更なる業容拡大を目指す方針だ。

■製造も収益柱に成長

 報告セグメント区分は、商社流通の電子機能材事業(化合物半導体、電子材料、チタン製品、ニッケル製品、レアメタルなど)、商社流通のアルミ銅事業(アルミニウム製品、伸銅品、非鉄スクラップ、各種配管機材など)、製造の装置材料事業(非破壊検査装置、マーキング装置、カシュー樹脂、カーボンブラシなど)、製造の金属加工事業(精密機構部品、精密研削加工部品、精密金属プレス部品、金属加工部品など)としている。

 22年3月期のセグメント別売上高構成比は商社流通60%(電子機能材22%、アルミ銅38%)で製造40%(装置材料22%、金属加工17%)だが、経常利益構成比は商社流通57%(電子機能材39%、アルミ銅18%)で製造43%(装置材料11%、金属加工31%)だった。レアメタル・レアアースの取り扱いが特徴とされているが、M&Aも積極活用して「非鉄金属の総合企業」を目指す成長戦略により、製造(特に金属加工)も収益柱に成長している。

■高水準の投資を継続

 中期経営計画(23年3月期~25年3月期、1年ごとに見直すローリング方式)では、25年3月期の目標値に売上高2100億円、営業利益131億円超、経常利益130億円超、当期純利益100億円超、EBITDA175億円超、ROE(株主資本利益率)15%超、ROIC(投下資本利益率)7%以上、DOE(株主資本配当率)3.0%以上を掲げた。セグメント別経常利益は、商社流通が52億円(電子材料37億円、アルミ銅15億円)で製造が78億円(装置材料24億円、金属加工54億円)としている。製造が全体の60%を占める計画だ。

 商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」を目指し、財務体質の強化、人的資源の強化、ガバナンスの強化、ESG・SDGsへの取り組み強化を推進し、高水準の投資も継続する方針だ。

■23年3月期減益予想だが上振れ余地

 23年3月期の連結業績予想は、売上高が22年3月期比8.8%増の1700億円、営業利益が17.4%減の91億円、経常利益が18.3%減の90億円、親会社株主帰属当期純利益が9.4%減の68億円としている。配当予想は22年3月期と同額の52円(第2四半期末26円、期末26円)としている。

 第2四半期累計は、売上高が前年同期比23.7%増の922億14百万円、営業利益が1.1%増の56億82百万円、経常利益が0.7%増の61億05百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が8.5%減の41億41百万円だった。

 売上面は取扱数量増加や市況上昇効果で大幅増収だが、利益面はスマートフォン需要減速や自動車減産の影響、円安に伴う仕入・調達コスト上昇、新規連結(ジュピター工業の損益を第2四半期から取り込み)に伴う販管費の増加などで営業・経常利益横ばいだった。営業外収益では為替差益が減少(前年同期は1億17百万円、今期は32百万円)したが、デリバティブ評価益が増加(前年同期は1億11百万円、今期は3億22百万円)した。特別利益では投資有価証券売却益が減少(前年同期は2億68百万円、今期は87百万円)したが、負ののれん発生益1億84百万円を計上した。

 セグメント別利益(経常利益)は、商社流通の電子機能材が32.5%増の25億69百万円、商社流通のアルミ銅が21.7%減の11億47百万円、製造の装置材料が38.3%増の10億21百万円、製造の金属加工が26.3%減の14億01百万円だった。

 商社流通の電子機能材は、二次電池材料が減少したが、電子部品や半導体材料向けを中心にニッケル製品の取扱高が増加し、レアメタル・レアアースの市況上昇も寄与した。商社流通のアルミ銅は、製品分野でアルミ圧延品や伸銅品が増加したが、自動車減産の影響で原料分野の銅・アルミスクラップおよびアルミ再生塊の取扱数量が減少した。製造の装置材料は、材料分野のカーボンブラシや装置分野の非破壊検査などが減少したが、材料分野で米国および中国のめっき材料の出荷が大幅に増加した。製造の金属加工は、金属精密加工部品が堅調だったが、半導体実装装置向け精密切削加工部品がスマートフォン向け需要の冷え込みで低調となり、金属精密プレス部品も自動車減産の影響で低調だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が468億37百万円、営業利益が39億31百万円、経常利益が42億51百万円、第2四半期は売上高が453億77百万円、営業利益が17億51百万円、経常利益が18億54百万円だった。

 通期予想は据え置いている。セグメント別利益(経常利益)計画は商社流通の電子機能材が34.5%減の28億円、商社流通のアルミ銅が41.0%減の12億円、製造の装置材料が3.7%減の12億円、製造の金属加工が10.2%増の38億円としている。電子機能材は半導体不足によるIT機器や自動車の生産調整の影響で減益、アルミ銅は前期の市況価格上昇の影響が剥落して減益、装置材料は原材料高の影響で減益、金属加工は半導体製造装置向けを中心とする出荷増で増益の見込みとしている。

 23年3月期はコロナ禍や地政学リスクに起因する物流の混乱、原材料の供給不足などによる生産・出荷の一時的な落ち込みなど、事業環境の不透明感を考慮して期初時点で減益予想としている。ただし通期予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が54.2%、営業利益が62.4%、経常利益が67.8%、親会社株主に帰属する当期純利益が60.9%と高水準だった。この点を勘案すれば、通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は3月末の株主対象

 株主優待制度は、毎年3月末時点の株主を対象として、保有株式数および保有期間に応じて優待商品を贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価はモミ合い上放れ

 株価は地合い悪化も影響して上値が重く小幅レンジでモミ合う形だったが、調整一巡して上放れの動きを強めている。低PER、高配当利回り、低PBRという指標面の割安感も評価して上値を試す展開を期待したい。1月24日の終値は1393円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS226円14銭で算出)は約6倍、今期予想配当利回り(会社予想の52円で算出)は約3.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1889円53銭で算出)は約0.7倍、時価総額は約432億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■グローバルモデルに匹敵する日本語対応の高性能生成AIを4月から順次提供  ELYZAとKDDI<…
  2. ■優勝への軌跡と名将の言葉  学研ホールディングス<9470>(東証プライム)は3月14日、阪神タ…
  3. ■新たな映画プロジェクトを発表  任天堂は3月10日、イルミネーション(本社:米国カリフォルニア州…
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■金先物と原油価格、史上最高値に迫る―地政学リスクが市場に与える影響  今週のコラムは、異例中の異…
  2. ■「虎」と「狼」の挟撃を振り切り地政学リスク関連株で「ピンチはチャンス」に再度トライ  東京市場は…
  3. ■海運株と防衛関連株、原油価格の動向に注目集まる  地政学リスクによる市場の不安定さが増す中、安全…
  4. ■中東緊張と市場動向:投資家の選択は?  「遠い戦争は買い」とするのが、投資セオリーとされてきた。…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る