【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ジャパンフーズの第1四半期は過去最高益、猛暑が追い風で低PBRに依然として評価余地

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ジャパンフーズ<2599>(東1)は飲料受託生産の最大手である。第1四半期(4月~6月)は受託製造量増加や生産性向上効果で過去最高益を記録した。これを好感して株価は7月27日に年初来高値1210円まで急伸する場面があった。その後は上げ一服の形だが、猛暑も追い風として16年3月期の営業損益は改善基調だ。0.8倍近辺の低PBRに依然として評価余地があり、上値を試す展開だろう。

■飲料受託生産の国内最大手、フレキシブルで効率的な生産に強み

 伊藤忠商事<8001>系で飲料受託生産(OEM)の国内最大手である。品目別には炭酸飲料と茶系飲料を主力として、コーヒー飲料、果汁飲料、機能性飲料、酒類飲料、ファーストフード店のディスペンサーでサービスされる業務用濃縮飲料(ウーロン茶、アイスコーヒーなど)を製造している。

 主要得意先はアサヒ飲料、キリンビバレッジ、伊藤園<2593>サントリー食品インターナショナル<2587>などの大手飲料メーカーである。容器別にはペットボトル飲料を主力として、缶飲料は戦略的に減少させている。

 さまざまな容器(ペットボトル、瓶、缶)の飲料を世界最大級の本社1工場で生産するため、市場環境や顧客ニーズの変化に対応したフレキシブルで効率的な生産を強みとしている。容器のコストダウンなどにも積極的に取り組んでいる。また本社工場のある千葉県長柄町は、首都圏に近いロケーションという競争優位性に加えて、表層地盤の揺れやすさが0.4~0.6と安定しているため災害優位性にも優れている。

■16年3月期第1四半期は大幅増益で過去最高益

 なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)89億32百万円、第2四半期(7月~9月)67億28百万円、第3四半期(10月~12月)45億49百万円、第4四半期(1月~3月)46億53百万円、営業利益は第1四半期6億37百万円、第2四半期1億54百万円、第3四半期4億67百万円の赤字、第4四半期2億65百万円の赤字だった。

 15年3月期は夏場に消費増税や天候不順の影響も受けたが、冬場の第3四半期と第4四半期は飲料業界全体の不需要期となるため生産量が減少して、営業損益が赤字となる収益構造である。ただし15年3月期の第4四半期は第3四半期に比べて赤字幅が縮小し改善基調となった。第4四半期の受託製造数量は前年同期比3.3%増の9万5799キロリットル、同1.4%増の926万ケースと増加に転じた。

 7月27日に発表した今期(16年3月期)第1四半期(4月~6月)の非連結業績は、売上高が前年同期比38.1%減の55億28百万円だったが、営業利益が同65.5%増の10億54百万円、経常利益が同66.7%増の10億53百万円、純利益が同75.3%増の7億03百万円だった。

 一部取引形態の変更(大手取引先の1社が有償支給から無償支給に変更)に伴って減収の形だが、飲料業界全体の販売数量が消費増税後の落ち込みの反動で同3%増加(飲料総研調べ)したことに加えて、積極的な受注活動を行った結果、受託製造量は同2.2%増の14万3030キロリットル、同4.5%増の1405.7万ケースと増加した。

 受託製造量の増加、新ラインの稼働率上昇、さらに生産性向上効果などで、売上総利益は同35.5%増の16億04百万円と大幅増加した。一方で販管費は0.5%増にとどまり、営業利益、経常利益、純利益は大幅増益で、いずれも過去最高を記録した。

 通期の非連結業績予想は前回予想(4月24日公表)を据え置いて、売上高が前期比32.8%減の167億円、営業利益が同11.5倍の6億80百万円、経常利益が同11.6倍の7億円、純利益が3億90百万円(前期は24百万円の赤字)としている。なお固定資産の減価償却方法を定率法から定額法に変更する。

 16年3月期は一部取引形態の変更に伴って減収の形だが、消費増税や天候不順の影響が一巡し、新規受託案件も寄与して受託製造数量が回復基調となる。受託製造数量は同11.2%増の4529万6千ケース、加工賃収入は同9.6%増の106億29百万円の計画としている。

 受託製造数量の回復と稼働率上昇の効果、無菌充填2ラインの本格稼働に伴う生産性向上の効果、経費削減の効果なども寄与して営業損益が大幅に改善する。

 なお第2四半期累計(4月~9月)予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が53.7%、営業利益が65.1%、経常利益が64.2%、そして純利益が71.7%と高水準である。7月下旬以降の猛暑も考慮すれば第2四半期累計業績予想の増額に対する期待が高まる。そして通期ベースでも好業績が期待される。

 配当予想(4月24日公表)については前期と同額の年間27円(第2四半期末10円、期末17円)としている。予想配当性向は33.4%となる。健全な財務体質を目指し、将来の事業発展に備えた設備投資等のための内部留保を確保する一方、業績に応じた安定かつ継続的な配当を行うことを基本方針としている。

■コア事業の収益拡大に向けた投資と新規ビジネスの拡大を推進

 中期成長戦略については、コアビジネス(国内飲料受託製造事業)の収益拡大に向けて将来を見据えた投資の着実な推進、低重心経営の実践、新規商材への取り組み強化、および新規ビジネス(海外飲料受託製造事業、国内水宅配事業、自社ブランド商品、その他)の着実な推進と事業収益の拡大、そして成長戦略を支える経営基盤の強化としている。

 コアビジネス(国内飲料受託製造事業)では積極投資を推進し、12年7月に本社工場で世界最新鋭の炭酸・非炭酸兼用無菌充填ライン(Eライン)が稼動した。14年3月には既存の大型ペットボトルライン(Tライン)もリバイタライズ(機能増強)で炭酸・非炭酸兼用無菌充填ライン化した。

 新規ビジネス分野では、国内で水宅配事業を展開するウォーターネット、および中国で飲料受託製造事業を展開する東洋飲料(常熱)有限公司(東洋製罐との合弁)への出資比率を引き上げている。ウォーターネットの販売数量、東洋飲料(常熱)の受託製造数量とも順調に増加しているようだ。

 東洋飲料(常熱)は中国における日系初の飲料受託製造会社で、国際的な認証規格「FSSC22000」も取得している。第1期として2ライン(12年8月、9月)、第2期として2ライン(13年5月、8月)が稼働し、15年は中国系メーカーを中心に取引先が大幅に増加する見込みだ。

 自社ブランド商品に関しては、本社工場がある千葉県産の農林水産物を使用した商品「おいしい房総サイダー」シリーズなどを、千葉県を中心に販売している。

 15年6月には「千葉のおいしいお茶」を「千葉のおいしいお茶 房総(ふさ)みどり」としてリニューアル販売を開始した。千葉県大網白里市にある河野製茶工場で自家栽培され、千葉県の「ちばエコ農産物」に指定された茶葉のみを使用している。

 15年4月に4ヵ年中期経営計画「JUMP2015」のレビューと見直しを発表した。3年度目の15年3月期が消費マインドの低迷や全国的な天候不順の影響を受けて計画を下回ったため、最終年度16年3月期の計画を見直した。ただし経営方針および方向性を堅持し、成長戦略を着実に推進するとしており、新規ビジネスの連結収益化目標は17年3月期以降としている。

■株価は第1四半期業績を好感、依然として低PBRに評価余地

 株主優待制度については毎年3月末時点の1単元(100株)以上所有株主に対して自社製品詰め合わせセットを贈呈している。15年3月期末は「房総のおいしい水24本」「サイダー バラエティセット30本」「千葉のおいしい麦茶24本」「愛犬のためのPREMIUM MILK+10袋」の中からいずれかを選択する優待内容だった。

 株価の動きを見ると、1120円近辺の小幅レンジでのモミ合いから上放れて、7月27日には年初来高値となる1210円まで急伸する場面があった。第1四半期の大幅増益を好感した形だ。その後は上げ一服の形だが急伸前の水準に戻ることなく、1160円近辺で堅調に推移している。

 8月7日の終値1167円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS80円86銭で算出)は14~15倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間27円で算出)は2.3%近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS1464円85銭で算出)は0.8倍近辺である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線に続いて26週移動平均線を突破した。また13週移動平均線、26週移動平均線とも上向きに転じた。下値固めが完了して強基調に転換した形だ。猛暑も追い風として16年3月期の営業損益は改善基調だ。0.8倍近辺の低PBRに依然として評価余地があり、上値を試す展開だろう。

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