【アナリスト水田雅展の銘柄分析】三洋貿易の第3四半期累計は大幅増益、指標面の割安感強く6月高値試す

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 三洋貿易<3176>(東1)は自動車関連向けのゴム・化学関連商品を主力とする専門商社である。6日に発表した第3四半期累計(10月~6月)業績は大幅増益だった。これを好感して株価は6月の上場来高値1830円に接近している。1桁台の予想PER、2%台後半の予想配当利回りなど指標面には依然として割安感が強く、15年9月期連結業績再増額の可能性も評価して6月高値を試す展開だろう。

■自動車向けゴム・化学関連製品が主力の専門商社

 ゴム関連商品、化学品関連商品、産業資材関連商品、科学機器関連商品、機械・資材関連商品の5分野に事業展開する専門商社である。メーカー並みの技術サポート力に加えて、財務面で実質無借金経営であることも特徴だ。

 主力の自動車関連向けは、各種合成ゴム・添加剤、タイヤ用特殊クレー、防振ゴム・ホース原料、自動車用シート部品(レザーシート、シートヒーター、ランバーサポート、シートセンサーなど)といった高付加価値品を中心に展開している。シートヒーターはカーボンファイバー仕様の市場を独占し、ランバーサポートは世界市場6割を占有している。

 飼料・エネルギー・リサイクル関連では飼料や固定燃料などを製造するペレットミルが高シェアだ。国内子会社のコスモス商事は地熱・海洋資源開発関連分野で掘削用機材の輸入販売・レンタルを手掛けている。

 なお15年3月には、エレクトロニクス関連商品卸売の連結子会社アロマンの株式をタクミ商事に譲渡した。グループとして重点志向する事業領域へ経営資源集中を進める方針だ。

 海外は米国、メキシコ、タイ、中国(上海、香港)、インド、ベトナム、インドネシアに展開し、15年7月にはアジア展開強化策の一環として、シンガポールの工業用フィルム販社であるBPS社を子会社化(シンガポール三洋貿易に社名変更)した。北米、中国に加えて、アセアン市場における当社既存事業との相乗効果が期待される。

■15年9月期第3四半期累計は大幅増益、通期は再増額の可能性

 8月6日に発表した今期(15年9月期)第3四半期累計(14年10月~15年6月)連結業績は、売上高が前年同期比8.0%増の466億84百万円、営業利益が同24.9%増の31億04百万円、経常利益が同25.8%増の34億04百万円、純利益が同51.6%増の23億80百万円だった。

 ゴム・化学品事業における化学品関連商品が第3四半期(4月~6月)にやや減速したが、機械資材事業における自動車用各種部品が好調に推移して増収増益だった。売上総利益率は15.8%で同1.0ポイント上昇した。経常利益は営業外での為替差益の増加、純利益はアロマンの株式譲渡に伴う法人税負担額の減少も寄与した。

 セグメント別(連結調整前)の動向を見ると、ゴム・化学品事業は売上高が同2.3%減の177億89百万円、営業利益が同5.3%増の8億89百万円だった。円安も影響して化学関連商品で各種ワックスなどの輸入商材が低調だったが、ゴム関連製品で主力の自動車向け合成ゴムなどが堅調に推移した。

 機械資材事業は売上高が同15.0%増の134億04百万円、営業利益が同36.4%増の16億09百万円だった。産業資材関連商品で自動車用各種部品が好調に推移し、科学機器関連商品で各種分析・試験機器も堅調だった。機械・資材関連商品では大型木質バイオマス関連機器を納入した。

 海外現地法人は売上高が同11.9%増の96億92百万円、営業利益が同52.5%増の3億97百万円だった。米国、上海、タイで、ゴム関連商品が概ね好調に推移した。国内子会社は売上高が同24.9%増の56億28百万円、営業利益が同33.9%増の5億88百万円だった。コスモス商事において海洋・船舶関連事業が回復し、ケムインターの化学品や機械・電子部品も好調だった。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(10月~12月)153億86百万円、第2四半期(1月~3月)156億16百万円、第3四半期(4月~6月)156億82百万円、営業利益は第1四半期9億82百万円、第2四半期10億54百万円、第3四半期10億68百万円だった。順調に推移しているようだ。

 通期の連結業績予想は前回予想(4月27日に利益を増額修正)を据え置いて売上高が前期比5.8%増の620億円、営業利益が同16.4%増の37億円、経常利益が同10.9%増の39億円、純利益が同38.7%増の27億50百万円としている。

 配当予想(4月27日に増額修正)は同14円増配の年間48円(第2四半期末24円、期末24円)で予想配当性向は25.0%となる。配当の基本方針は連結配当性向25%を下限の目途としている。

 主力のゴム関連商品や自動車用各種部品が好調に推移し、環境関連機械の伸長も期待される。セグメント別売上高の計画はゴム・化学品事業が同4.5%増の252億円、機械資材事業が同7.4%増の169億円、海外現地法人が同8.3%増の136億50百万円、国内子会社が同1.7%増の60億50百万円、その他が同14.5%減の2億円としている。なお売上総利益率は同0.5ポイント上昇の15.3%の計画としている。

 通期予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が75.3%、営業利益が83.9%、経常利益が87.3%、純利益が86.6%である。当社の第2四半期が3月期決算企業の期末にあたるため、設備投資関連の構成比が高まる傾向があることを考慮しても、利益の進捗率は高水準だ。

 自動車関連の合成ゴム商材や自動車シート用部品など、高付加価値の主力商材が国内外で好調に推移して、第3四半期累計の売上総利益率は計画を上回る水準で推移している。また、円安による輸入コスト上昇に対応した国内市場における輸入材料の価格見直しを進める一方で、円安を利用して化学品の輸出も強化している。通期業績の会社予想は再増額の可能性があるだろう。

■中期成長に向けて新規ビジネスやM&A戦略も推進

 中期成長に向けた戦略として、新規ビジネスのグリーンイノベーション領域(地熱発電・海洋資源開発・CO2地中貯留、木質バイオマス加工・ガス化熱電併給装置、太陽電池部材などの環境・資源エネルギー関連分野)の強化、ライフイノベーション領域(医薬中間体・原体、食品・バイオ関連向け各種分析機器、医療関連原材料などの生活関連分野)の強化、ASEAN地域や北中米地域などグローバル展開の強化、そしてM&A・アライアンス戦略の推進を強化する方針だ。

 中期目標数値として掲げていた15年9月期の売上高610億円、営業利益30億円のうち、営業利益目標は14年9月期に前倒しで達成している。中期的にも収益は拡大基調だろう。なお15年秋に次期中期経営計画を発表予定としている。

■株価は第3四半期累計の大幅増益を評価して6月高値に接近

 株価の動きを見ると、6月19日の上場来高値1830円後の上げ一服局面だったが、8月7日は1795円まで上伸して6月高値に接近してきた。短期調整が一巡して、6日発表の第3四半期累計の大幅増益を評価する動きだ。

 8月7日の終値1775円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS192円26銭で算出)は9~10倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間48円で算出)は2.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1148円88銭で算出)は1.5倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線を回復して上伸した。また週足チャートで見ると13週移動平均線を明確に回復した。強基調に回帰した形だ。1桁台の予想PER、2%台後半の予想配当利回りなど指標面には依然として割安感が強い。15年9月期連結業績再増額の可能性も評価して6月高値を試す展開だろう。

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