【アナリスト水田雅展の銘柄分析】キーウェアソリューションズの第1四半期は赤字縮小、収益改善基調を見直し

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 キーウェアソリューションズ<3799>(東2)はシステム開発事業やSI事業を展開している。株価は第1四半期(4月~6月)の赤字を嫌気する形で年初来高値圏から反落したが、売られ過ぎ感を強めている。第1四半期は赤字が縮小して16年3月期は大幅増益・復元配予想だ。マイナンバー制度関連やサイバーセキュリティ関連のシステム開発需要も期待される。収益改善基調を見直して切り返し展開だろう。

■NEC向け主力にシステム開発事業やSI事業を展開

 公共システムやネットワークシステムなどのシステム開発事業、SI(システムインテグレーション)事業、プラットフォーム事業、その他事業(運用・保守、機器販売、フロンティア事業など)を展開している。

 主要顧客は、筆頭株主であるNEC<6701>グループ向けが約4割を占め、NTT<9432>グループ、JR東日本<9020>グループ、三菱商事<8058>グループ、日本ヒューレット・パッカードなどが続いている。

 ERP(統合業務パッケージ)関連やセキュリティ関連を一段と強化するとともに、NECと連携して医療分野や流通・サービス業分野にも事業領域を広げ、さらに農業ICT化分野にも参入している。

 15年1月には経済産業省「平成26年度健康寿命延伸産業創出推進事業」の「職場における健康投資に関する効果指標および投資環境整備(健康データのオープン化・小規模事業所)」に、職域健康投資コンソーシアムとして参画した。また総務省「新たなワークスタイルの実現に資するテレワークモデルの実証」プロジェクトにモデル企業として選ばれ、15年1月から実証を開始している。

 15年3月には、自治体向けに農作物の品質・生産性向上や栽培技能の継承を支援する農業ICTサービス「OGAL(オーガル)」シリーズの提供を開始した。圃場に設置した各種センサーから収集した環境情報を遠隔からリアルタイムでモニタリングできるクラウド型サービスで、14年6月に宮城県亘理町いちごファームが導入して研究利用が開始されている。

 また慶応義塾大学SFC研究所が農業ICTの普及と農業情報標準化に向けて設立したアグリプラットフォームコンソーシアムに参画した。政府が取り組む農業分野IT施策方針「農業情報創成・流通促進戦略」などを踏まえて、産学連携により国の農業IT施策の実地検証を行うとしている。

 7月31日には地方創生に向けた新規就農者育成を支援するため、農業ICTサービス「OGAL(オーガル)」にNECソリューションイノベータの「NEC営農指導支援システム」との連携機能を実装し、自治体・JA・農業法人に対して提供開始すると発表した。

■16年3月期第1四半期は赤字縮小、通期は大幅増益・復元配予想

 15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)33億34百万円、第2四半期(7月~9月)39億19百万円、第3四半期(10月~12月)40億67百万円、第4四半期(1月~3月)50億62百万円、営業利益は第1四半期3億24百万円の赤字、第2四半期1億95百万円の赤字、第3四半期70百万円の黒字、第4四半期4億51百万円の黒字だった。第4四半期の構成比が高い収益構造だ。そして不採算案件が一巡して営業損益は改善基調だ。

 7月31日に発表した今期(16年3月期)第1四半期(4月~6月)連結業績は、売上高が前年同期比3.1%減の32億31百万円、営業利益が2億91百万円の赤字(前年同期は3億24百万円の赤字)、経常利益が2億94百万円の赤字(同3億32百万円の赤字)、純利益が2億98百万円の赤字(同3億85百万円の赤字)だった。主力のシステム開発が減収だったが、プロジェクト管理徹底などの効果で赤字が縮小した。

 セグメント別に見ると、システム開発事業は受注高が同23.3%減の22億18百万円、売上高が同11.1%減の20億02百万円、営業利益(全社費用等調整前)が1億97百万円の赤字(同2億13百万円の赤字)だった。官公庁の継続案件の縮小や運輸系のリプレイス案件の終息で受注高、売上高とも減少したが、プロジェクト管理の徹底で営業赤字が縮小した。

 SI事業は受注高が同7.9%減の3億81百万円、売上高が同0.7%減の4億85百万円、営業利益が同93.9%増の47百万円だった。ERP系の継続案件の縮小で受注高、売上高とも減少したが、好採算案件の増加で営業増益だった。

 プラットフォーム事業は受注高が同5.0倍の14億62百万円、売上高が同76.7%増の3億33百万円、営業利益が51百万円の赤字(前年同期は67百万円の赤字)だった。インフラ構築系の大型案件が寄与して受注高、売上高とも大幅増となり、営業赤字も縮小した。

 その他は受注高が同19.8%減の3億34百万円、売上高が同1.3%増の4億09百万円、営業利益が53百万円の赤字(同41百万円の赤字)だった。Webメディア系の継続案件や運用・保守系の継続案件の縮小で受注高は減少したが、機器販売やライセンス販売が堅調に推移して増収だった。

 通期の連結業績予想は前回予想(5月12日公表)を据え置いて、売上高が前期比8.0%増の177億円、営業利益が5億円(前期は2百万円)、経常利益が4億20百万円(同65百万円)、純利益が3億70百万円(同78百万円の赤字)としている。配当予想は年間10円(期末一括)の復元配で、予想配当性向は22.5%となる。

 不採算案件の一巡、マイナンバー制度(社会保障・税番号制度)関連のシステム開発需要、および販管費の抑制などの効果で収益が大幅に改善する見込みだ。さらに国・地方を通じた行政情報システムの改革、20年東京夏季五輪に向けたITインフラ投資需要なども寄与して受注拡大が期待される。

■中期計画で18年3月期営業利益10億円目標

 16年3月期を初年度とする新中期経営計画では長期基本方針を、既存事業の収益性向上と安定化、ポートフォリオの多様化、経営基盤の整備・改革としている。

 既存事業のシステム開発事業では収益性の高い案件へのリソースシフト、SI事業ではSAPビジネスの拡大やコンサルティングファームとの連携推進などによるERP事業の売上・利益の拡大、またフロンティア事業(新規事業)ではスマートアグリやヘルスケア・医療分野でのビジネスチャンス創出を推進する。

 経営目標値としては18年3月期売上高190億円、営業利益10億円、売上高営業利益率5.3%を掲げた。プロジェクト横断機能のさらなる強化や、マイナンバー制度から派遣するビジネスの取り込みも推進する方針であり、中期的に収益拡大が期待される。

■株価は売られ過ぎ感、16年3月期大幅増益・復元配予想を見直し

 株価の動きを見ると、7月7日の年初来高値914円後は高値圏800円~900円近辺でモミ合う展開だったが、7月31日発表の第1四半期の赤字を嫌気する形で急反落した。そして8月10日には660円まで調整した。ただし売られ過ぎ感を強めている。

 8月10日の終値661円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS44円47銭で算出)は14~15倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は1.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS702円85銭で算出)は0.9倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が16%程度に拡大して売られ過ぎ感を強めている。また週足チャートで見ると26週移動平均線に接近して反発のタイミングだ。16年3月期は大幅増益・復元配予想であり、マイナンバー制度関連やサイバーセキュリティ関連のシステム開発需要も期待される。収益改善基調を見直して切り返し展開だろう。

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