2009年5月
アニメ産業銘柄特集
文化発信と重要な輸出産業として、いっそうの価値高まる
「anime」として世界に定着する日本のアニメ

主なアニメ産業関連銘柄
アニメ制作銘柄 東映アニメーション<4816>、トムス・エンタテイメント<3585>、バンダイナムコホールディングス<7832>、創通<3711>、タカラトミー<7867>、ブロッコリー<2706>、IGポート<3791>、スクウェア・エニックス・ホールディングス<9684>
アニメゲースソフト銘柄 アトラス<7866>、マーベラスエンターテイメント<7844>、スクウェア・エニックス・ホールディングス<9684>、タカラトミー<7867>、バンダイナムコホールディングス<7832>、セガサミーホールディングス<6460>、ブロッコリー<2706>
アニメグッズ銘柄 セガサミーホールディングス<6460>、セガトイズ<7842>、バンダイナムコホールディングス<7832>、創通<3711>、スクウェア・エニックス・ホールディングス<9684>、東映アニメーション<4816>
アニメプロデュース銘柄 東宝<9602>、バンダイナムコホールディングス<7832>、創通<3711>、エイベックス・グループ・ホールディングス<7860>、博報堂DYホールディングス<2433>、アサツー ディ・ケイ<9747>、電通<4324>
テレビ局銘柄 フジ・メディア・ホールディングス<4676>、テレビ朝日<9409>、朝日放送<9405>、日本テレビ放送網<9404>、東京放送ホールディングス<9401>、テレビ東京<9411>
 今年2月22日に発表・授賞式が行われた第81回アカデミー賞で、日本の加藤久仁生監督の「つみきのいえ」が短編映画賞に輝いた(同作品はこの他にも国内外10の映画祭で14の賞を受賞している)。遡って見ても、国内において「風の谷のナウシカ」、「天空の城ラピュタ」など、「宮崎アニメ」と呼ばれる一つのジャンルを生み出した宮崎駿監督「千と千尋の神隠し」が日本における映画史上第1位の新記録を作ったほか、2002年の第52回ベルリン国際映画祭で日本としては39年ぶり、アニメーションとしては史上初の金熊賞を受賞。さらに2003年には第75回アカデミー賞長編アニメーション部門作品賞を受賞した。興行的にもさることながら、日本のアニメが持つ技術力・芸術性が世界から評価される時代が到来している。
 このように世界各国で評価される日本のアニメは、単なる映像の領域を飛び越え、ゲームコンテンツ・映画実写版などへその題材を提供しているほか、「コスプレ」と呼ばれる、日本のアニメの登場人物を模した仮装が世界的な一大ムーブメントにまで発展するなど、もはやその広がりは留まるところを知らない日本の一大「文化装置」にまで成長している。今や、「anime」が世界共通語として定着するほど、日本アニメの海外競争力は高く、国内外のアニメコレクターの集う秋葉原にある「秋葉原クロスフィールド」内には「東京アニメセンター」が開設され、世界に向けて日本アニメの情報発信を行っている。
 最近ではアニメの実写映画化において、ハリウッドでも関心が寄せられるなど、日本のアニメは自動車・電機といった、日本を代表する輸出産業と肩を並べる存在にまで成長したと言っても過言ではない。また同時に日本の文化を世界に発信するという重要な役割も担うようになっている。ここではそうした日本の文化・経済双方への貢献が期待される日本のアニメ関連企業に着目してみたい。

【目次】
・アニメ制作にしのぎを削る企業
・ゲームソフトにも広がるアニメの魅力
・アニメ人気と共に市場拡大する関連商品
・アニメ人気を左右するプロデュース企業
・放送に関わるテレビ局の重要な役割

 

アニメ制作にしのぎを削る企業

 「アニメ」の氾濫する国、日本。我が日本の首相も「マンガ好き」を公言してはばからない程、日本人に浸透している映像ジャンルであると同時に、その嗜好レベルの高さから、生半可な内容・技術では最早、注目に値しない厳しい分野にまで成長している。また昨今では、世界の人々に支持されるような普遍性、倫理観も要求されるようになってきている。そのため、アニメ制作に携わる各企業は、高度化するニーズに応えるため、内容・技術力をさらに向上させるべく、お互いしのぎを削っている。
 東映アニメーション<4816>はアニメ制作における、国内の代表的な企業であり、古くは「宇宙戦艦ヤマト」、「銀河鉄道999」や、「一休さん」、「キャンディ・キャンディ」、「ゲゲゲの鬼太郎」と言ったアニメ史に残る、数え切れないほどの名作を手掛けてきた。また現在放送中のアニメでも「ワンピース」、「ドラゴンボール改」、「フレッシュプリキュア!」等は高視聴率を誇る作品となっている。特に劇場版の制作に強みを発揮しており、その技術・制作力は業界随一と言える。
 一方、「東京ムービー」ブランドでアニメファンにはその知名度も高い、トムス・エンタテインメント<3585>もアニメ制作の老舗であり、古くは「天才バカボン」、「おばけのQ太郎」、「巨人の星」、「ルパン三世」、「キャッツ・アイ」から、現在放映中の「それいけ!アンパンマン」、「名探偵コナン」まで、世代を超えた人気アニメを多数手掛けている。同社が制作した「聖闘士星矢」は世界的な人気を博したことでも知られている。
 また、バンダイナムコホールディングス<7832>の持分法適用会社である創通<3711>は、子会社を通して企画制作に積極的に関わっており、「機動戦士ガンダム」及びそのシリーズや「ゴルゴ13」は世代を超えたヒット商品となった。
 その他、玩具メーカーで有名なタカラトミー<7867>、マニア向けゲーム用アニメが特徴のブロッコリー<2706>、子会社のプロダクション・アイジー<非上場>が多くの人気アニメに制作協力しているIGポート<3791>、グループ会社がオンラインゲームソフトの開発を積極的に進めているスクウェア・エニックス・ホールディングス<9684>等、それぞれの強みと特徴を生かし、日本のアニメーション制作に貢献している。

ゲームソフトにも広がるアニメの魅力

 日本が世界に誇るゲームソフト技術。そのゲームソフトコンテンツの魅力アップに、やはり世界に誇る日本のアニメーションが大きく貢献しており、最近では反対にゲームコンテンツアニメが一般アニメとして人気に火がつくケースも珍しくない。
 アトラス<7866>はプレイステーション・ポータブル、ニンテンドーDSといった様々な人気プラットフォーム(ゲーム機)向けアニメゲームソフトを多数手掛けている。プレイヤーがアニメの主人公となってゲームを楽しむコンセプトは、同時にアニメに対する新しい魅力を発掘したとも言え、「救急救命カドゥケウス2」など、現在もヒット作を多数発表している。
 マーベラスエンターテイメント<7844>は人気アニメのDVDソフトを多数手掛けるほか、主要プラットフォーム(ゲーム機)対応のアニメゲームソフト開発を主力としており、今年6月18日には人気アニメを題材とした「ゴルゴ13 ファイル13を追え」をニンテンドーDS向けソフトとして発売を予定するなど、人気アニメを題材にしたゲームソフト開発に力を注いでいる。
 またスクウェア・エニックス・ホールディングス<9684>はグループ会社が手掛けるアニメゲームソフト「ドラゴン・クエストシリーズ」、「ファイナルファンタジーシリーズ」がゲーマーでない人種にも、その知名度が浸透するほどの大ヒット商品となり、その派生商品も含め、安定した収益基盤を築いている。
 タカラトミー<7867>もニンテンドーDS向けを主力に、アニメゲームソフトに強みを発揮しており、人気アニメ「ヤッターマン」、「NARUTO−ナルトー疾風伝」、「家庭教師ヒットマン REBORN!」などを題材にしたゲームソフトは、何れもヒット商品となっている。
 また同じ玩具メーカーが出発点であるバンダイナムコホールディングス<7832>セガサミーホールディングス<6460>も主要プラットフォーム(ゲーム機)対応のアニメゲームコンテンツを開発・提供しているほか、カードゲームの開発に強みを発揮するブロッコリー<2706>も、一方でゲームソフト開発にも力を注いでいる。

アニメ人気と共に市場拡大する関連商品

 ジャンルを問わない凝りに凝ったストーリー、高い映像力で世界中のファンを魅了する日本のアニメは、映像分野だけでなく、キャラクターグッズ・関連商品分野においてもその魅力の幅を拡げている。
 セガサミーホールディングス<6460>の子会社であるセガトイズ<7842>は人気アニメ「それいけ!アンパンマン」のぬいぐるみ・フィギュア、「ジュエルペット」のおしゃれアイテムなど、アニメ関連グッズ・玩具を手掛けており、大変人気の高いキャラクター商品となっている。
 バンダイナムコホールディングス<7832>もやはり「それいけ!アンパンマン」の玩具・グッズを取り扱うほか、「ドラゴンボールシリーズ」の玩具、「機動戦士ガンダムシリーズ」のフィギュア、「ゲゲゲの鬼太郎」の妖怪ハウス、「フレッシュプリキュア!」の変身ケータイ手帳など、多くの人気アニメ関連グッズを手掛ける。
 そのバンダイナムコホールディングスの持分法適用会社である創通<3711>も自社が版権管理している「ガンダムシリーズ」のフィギュア、「ひぐらしのなく頃に」シリーズのフィギュアや、カードなど関連グッズ商品を手掛けている。
 一方、ゲームソフトから人気を得たアニメのキャラクターグッズも人気商品となっており、スクウェア・エニックス・ホールディングス<9684>のグループ会社が「ドラゴン・クエストシリーズ」のカードファイルや関連グッズ、「ファイナルファンタジーシリーズ」登場人物のフィギュアなどを発売している。
 また、前述したアニメ制作会社自らが、キャラクター商品を手掛けているケースも見られ、東映アニメーション<4816>は自社製作のアニメをプリントした「オリジナルTシャツ」を扱うほか、各人気アニメのフィギュアや関連グッズを手掛ける。数え切れない多くの人気アニメを制作してきたこともあり、キャラクター商品の幅も広いのが強みである。

アニメ人気を左右するプロデュース企業

 一つのアニメ作品を如何にヒット商品として市場に売り出すか、制作と並んで重要な役割を果たすのが、「プロデュース(製作)」、「流通(版権管理)」に関わる企業である。この「プロデュース・流通」戦略を誤ると、制作レベルで如何に優れた作品を創作しても、いざ市場に投入した時にはヒットしない、という事例が数多く見られるからである。
 国内を代表する映画会社である東宝<9602>は、数多くの名作アニメのプロデュースを手掛けてきており、「タッチ」、「ときめきトゥナイト」などは大ヒットした。因みに不動の人気を誇る映画版「ドラえもん」、「ルパン三世」各シリーズの配給会社でもある。最近ではスタジオジブリ<非上場>制作の「宮崎アニメ」映画の配給を行っている点も大きな強みとなっている。
 一方、バンダイナムコホールディングス<7832>の持分法適用会社である創通<3711>はアニメーションの流通に関わる代表的な広告代理店であり、子会社が数多くのアニメ作品のプロデュースを行っていることで知られ、「機動戦士ガンダム」及びその一連のシリーズは大ヒット作品となった。現在オンエアの作品としては「それいけ!アンパンマン」、「咲―SAKI−」。「クブ〜!!まめゴマ!」などの人気作品の版権管理に関わっている。
 また音楽コンテンツ制作、芸能事務所で有名なエイベックス・グループ・ホールディングス<7860>も「銀河鉄道999」、「サイボーグ009」と言った名作から、「聖闘士星矢」、「ワンピース」、「頭文字[イニシャル]D」といった人気アニメ作品を版権管理している。
 博報堂DYホールディングス<2433>は傘下の読売広告社<非上場>がかつてより、アニメコンテンツのプロデュース分野でリーディングポジションを築いていたこともあり、現在でも数多くの人気アニメ番組のプロデュースを手掛けている。現在、子会社の博報堂DYメディアパートナーズ<非上場>がその業務を引き継ぎ、現在も放映中の「ジュエルペット」はヒットアニメとなっている。
 その同社とアニメコンテンツプロデュース分野でシェアを二分する存在がアサツーディ・ケイ<9747>。「ドラえもん」、「忍者ハットリくん」などの藤子アニメのプロデュースを多く手掛けてきたほか、東映アニメーション<4816>が制作した多くのアニメコンテンツのプロデュースにも関わっており、過去から培ったノウハウは燦然としたものがある。
 また、90年代以降、同じ広告代理店業界から最大手の電通<4324>がアニメコンテンツのプロデュース分野に進出。知名度・組織力を生かして急速にシェアを拡大している。特にスタジオジブリ<非上場>制作の、世界的な人気作品となっている「宮崎アニメ」(例:もののけ姫、千と千尋の神隠し、ゲド戦記など)のプロデュースにも多数参画しているのは大きな強みとなっている。

放送に関わるテレビ局の重要な役割

 漫画・コミック本から人気を博し、それがアニメ化されることでさらに人気が高まるというケースが多く見られるが、その人気向上に貢献しているのが、「放送」を担当するテレビ局である。そのため、アニメの制作は制作専門会社だけでなく、放送するテレビ局自体も関わっているケースが数多く見られる。
 フジ・メディア・ホールディングス<4676>傘下のフジテレビジョン<非上場>は前身時代には「民放一のアニメ放送局」との異名をとるほど、アニメ番組の放送が充実しているテレビ局であった。「ゲゲゲの鬼太郎」、「世界名作劇場」、「ドラゴンボール」シリーズはその時代を生きた世代なら誰でも知っている名作アニメである。これらの作品の多くに、同社が制作・プロデュースとして関わっている。
一方、テレビ朝日<9409>は古くは「魔法使いサリー」から、「一休さん」、「キャンディ・キャンディ」、「キューティーハニー」などが高視聴率を誇り、また意欲作も多かったことで知られる。究極は国民的アニメ「ドラえもん」の放送であろう。この大成功で「藤子アニメ」の多くが同局ネットで放送された。この「ドラえもん」や、現在も放送中の「クレヨンしんちゃん」、「あたしんち」は同社がプロデュースも担当している。
 そのテレビ朝日の系列局である朝日放送(ABC)<9405>も上記の作品を同様に放送しているほか、古くは「ど根性ガエル」、「はじめ人間ギャートルズ」、最近では「フレッシュプリキュア!」の制作にも関わっている。
 日本テレビ放送網<9404>の場合は、やはり系列局の讀賣テレビ放送<非上場>が多数の人気アニメ制作を手掛けてきており、古くは「巨人の星」、「タイガーマスク」から「シティハンター」、「YAWARA!」、最近では「名探偵コナン」、「エンジェル・ハート」などが代表作である。また日本テレビ放送網自体も「それいけ!アンパンマン」のプロデュースを手掛けている。
 また東京放送ホールディングス<9401>傘下のTBSテレビ<非上場>も系列局の毎日放送(MBS)<非上場>制作のアニメを多数放送しており、「まんが日本昔話」は、1975年の放送開始から30年余り続いた超ロングランアニメ番組となったほか、「じゃりん子チエ」、「超時空要塞マクロス」、「機動戦士ガンダムSEED」などは人気を博した。
 さらにアニメ番組を多数放送・制作しているテレビ局として忘れてはならないのがテレビ東京<9411>である。制作やプロデュースを手掛けた「キャプテン翼」、「ミスター味っ子」、「ポケットモンスター」は大ヒットアニメとなった。現在も「家庭教師ヒットマン REBORN」のプロデュースを手掛けるほか、系列局のテレビ大阪<非上場>が「ジュエルペット」のプロデュースを手掛けている。



<最後に>

 このように日本のアニメは、そのジャンルのバリエーション、ストーリー性、映像・技術力どれをとっても、今や世界最高水準であり、「アニメ」が「anime」として国際共通語になるほど日本のアニメは世界に知れ渡った。
 国内においては国民のテレビ離れ、少子化など逆風要因も見られるが、良質な作品を提供していくことで、国民を再びテレビに戻すことは可能であろうし、逆に今ではインターネット・モバイルという新たな情報通信手段が生まれたことで、そうした媒体に適した新しいカタチのアニメ作品というジャンルも生まれ、確実に市場規模は拡大している。またこうした媒体は世界共通の媒体であることから、限定的な国内市場に捉われない、地球規模でのマーケティングも可能であり、その潜在市場規模は計り知れない。
 これから日本の「アニメ」は「anime」として、さらにその世界シェアを拡大していくことで「貿易立国」の日本を支える重要な輸出産業として育っていくことを願い、また関わる企業の努力・発展を期待したい。