デジタルカメラ主要銘柄診断 |
■販売計画・戦略・新製品の動向を分析
世界首位のキヤノン<7751>の計画は、前期比7%減の2390万台、このうち一眼レフは前期比3%増の390万台である。高付加価値の一眼レフに重点を置く収益性重視の戦略だ。09年1〜3月の販売台数は、コンパクト型が前年同期比10%減だったが、一眼レフは前年同期比10%増と順調で通期計画を上回る可能性も浮上している。新製品では4月に、普及機種で初めてフルハイビジョン動画の撮影機能を搭載した一眼レフ「EOSキスX3」を発売した。また、延期していた長崎県の新工場を7月に着工し、10年4月に操業開始することを発表した。年間生産能力は約400万台で、コンパクト型と一眼レフの生産を同時に始める計画だ。
世界2位のソニー<6758>の計画は、一眼レフ(台数非公表)を除いて前期比9%減の2000万台である。コンパクト型の台数が減少しても、好採算の一眼レフに重点を置き、収益性を重視する戦略だ。新製品では、操作が簡単な一眼レフの入門機「α380」を、6月25日に発売予定である。
ニコン<7731>の計画は、前期比3%減の1340万台、このうち一眼レフは前期比1%減の340万台である。保守的な計画だが、足元の販売状況は想定を上回っている模様だ。新製品では5月に、動画撮影機能や可動式液晶モニターを搭載した一眼レフの入門機「D5000」を発売した。
オリンパス<7733>の計画は、前期比3%増の1030万台、このうち一眼レフが前期比25%増の50万台である。新製品投入などの効果で営業黒字化を目指している。新製品では、新規格「マイクロフォーサーズ」に準拠した、世界最小・最軽量の一眼レフ「オリンパス・ペンE−P1」を、7月3日に発売予定だ。新市場を創出する新世代機という位置付けである。
パナソニック<6752>の計画は、前期比10%増の1000万台(一眼レフは非公表)である。新製品投入の効果で拡販を見込んでいる。新製品では4月に、新規格「マイクロフォーサーズ」に準拠した、一眼レフの入門機「LUMIX GH1」を発売した。フルハイビジョン動画撮影時に自動で焦点を合わせ続ける、世界初のフルタイムAF機能を搭載し、販売が好調な模様である。
富士フイルムホールディングス<4901>の計画は、前期比1%増の830万台(一眼レフは非公表)である。100ドル以下の新興国市場向け専用機の投入、構造改革による固定費削減効果などで、営業黒字化を目指している。新製品では、液晶モニターに映る被写体に指で触れるだけでシャッターも切れる、タッチショット機能を搭載したコンパクト型「ファインピックス Z300」を6月に発売する。
カシオ計算機<6952>の計画は、前期比23%増の700万台である。コンパクト型に特化し、8社の中では最も強気の計画である。高速速写や動画合成など、新機能を搭載した新世代機の拡販で、営業黒字化を目指している。
HOYA<7741>のペンタックス事業の計画は、前期比5%増の237万台、このうち一眼レフが前期比48%増の34万台である。大手と競合しない分野で、独自のポジションを確保する戦略を打ち出している。新製品では、屋外での撮影に便利な一眼レフの中級機「ペンタックスK−7」を6月末に発売する。
■主要8社:採算改善が重要な課題
主要8社合計では9527万台となり、前期の9660万台に比べて133万台、1・4%減少する見通しだ。上位メーカーは一眼レフの好調を見込み、下位メーカーはコンパクト型の拡販を計画している構図だろう。部門営業損益で見れば、前期はオリンパス<7733>、富士フイルムホールディングス<4901>、カシオ計算機<6952>、HOYA<7741>の4社が赤字だったが、今期はHOYA<7741>を除く7社が黒字を見込んでいる。ただし為替の円高影響もマイナス要因となり、キヤノン<7751>は前期比58%減益、ニコン<7731>は37%減益の見込みである。市場の成熟感も強いだけに、計画の達成には不透明感が強く、特に採算改善が重要な課題である。
潜在需要発掘と新市場創出に期待 |
■グローバル市場で勝ち組目指すにはコスト競争力が不可欠
内閣府の消費動向調査によると、2008年度にデジタルカメラを買い替えた一般世帯(2人以上)の平均使用年数は3・8年で、05年度に比べると0・6年延びている。買い替え理由でも「上位品目への移行」は、05年度には61%だったが、08年度には54%に低下した。コンパクト型でも顔認識、手ぶれ補正、高画素などの機能が標準的となり、カメラ付き携帯電話でも1000万画素という高機能を備えた機種が登場している状況で、高額の上位機種へ移行する魅力が薄れている可能性も考えられる。
日本のメーカーは、高額の一眼レフで、潜在需要掘り起こしや新市場創出を期待している。しかし一眼レフ市場がグローバルに拡大するためには、やはり価格がポイントになるだろう。動画と静止画を同時撮影できる1台2役型の機種が登場し、カメラメーカーと電機メーカーの差異化が難しくなっている。また海外では、韓国のサムスンが世界市場シェアで3位まで躍進し、存在感を増している。機能の成熟感が増せば製品の差異化が難しくなり、価格競争が激化する可能性も高まる。
中期的に、グローバル市場で新興国市場の比率が高まることは間違いなく、そうしたグローバル市場では、単なる高機能だけでは販売台数の大幅な増加は望めないだろう。そして、日本のメーカーが得意とする「高付加価値」に対する思い込みが、高額を維持するための「過剰機能」につながり、グローバル市場のニーズに逆行する危険性も秘めている。その場合は、日本のメーカーの優位性が揺らぐどころか、生き残りさえ難しくなる。価格が下落しても収益性を維持し、グローバル市場で勝ち組となるには、やはりコスト競争力が重要なポイントだろう。
【参考:主なデジタル家電関連銘柄一覧】
富士フイルムHD<4901><4901>(東1・化学)=フィルム、電子映像、ペーパー・薬品等
東芝<6502>(東1・電気機器)=テレビ、HDD・DVDレコーダー、パソコン等を販売
三菱電機<6503>(東1・電気機器)=重電、メカトロ機器、情報通信システム・家電等
日立製作所<6501>(東1・電気機器)=情報エレクトロニクス、電力S、家電等の製造販売
マブチモーター<6592>(東1・電気機器)=ヘアドライヤー、シェーバー、歯ブラシ等のモータ
日本電産<6594>(東1・電気機器)=パソコンのHDD用スピンドルモータ、ファン
NEC<6701>(東1・電気機器)=PC・周辺機器、ソフト、携帯電話、ネット総合サービス
富士通<6702>(東1・電気機器)=情報処理機器、ソフトウエアS、通信機器、電子デバイス等
パナソニック<6752>(東1・電気機器)=TV・ビデオ・カメラ・オーディア等の家電製造販売
シャープ<6753>(東1・電気機器)=AV・情報通信機器、冷蔵庫、エアコン等の家電製造販売
ソニー<6758>(東1・電気機器)=PC・周辺機器、映像、カメラ、オーディオ、AV関連
ミツミ電機<6767>(東1・電気機器)=IC、コンポーネント、センサ、電源、高周波等
ヒロセ電機<6806>(東1・電気機器)=コネクタの専業メーカー
船井電機<6839>(東1・電気機器)=映像機器、プリンター、情報通信機器等製造販売
カシオ計算機<6952>(東1・電気機器)=情報、映像機器、電子時計、通信、デバイス等製造
浜松ホトニクス<6965>(東1・電気機器)=光電子増倍管、映像、画像処理、計測装置等製造
ニコン<7731>(東1・精密機器)=カメラ、めがね、画像機器、半導体製造装置等製造販売
オリンパス<7733>(東1・精密機器)=映像・情報関連事業、医療・バイオ関連事業、半導体等
タムロン<7740>(東1・精密機器)=カメラ用レンズ、各種光学機器、超精密光学部品等
HOYA<7741>(東1・精密機器)=レンズ、液晶パネル等の光学ガラス専門メーカー
キヤノン<7751>(東1・電気機器)=カメラ、複写機、PC周辺機器、情報・通信・光学機器
リコー<7752>(東1・電気機器)=複写機器、情報機器、光学機器等のOA機器メーカー