新エネルギー導入の優遇政策強化で注目の銘柄は? |
米国オバマ政権の「グリーン・ニューディール」政策など、各国政府による新エネルギー導入の優遇政策強化も背景として、再生可能エネルギー関連の市場拡大が期待され、風力発電関連銘柄も注目されている。
GWEC(世界風力エネルギー協議会)によると、2008年末の世界の風力発電累積導入量は、07年末から2705万KW増加して1億2079万KWとなった。累積導入量で見ると、1位は米国の2517万KW、2位はドイツの2390万KW、3位はスペインの1675万KW、4位は中国の1221万KW、5位はインドの965万KWだった。これまで1位を維持してきたドイツを抜いて、米国がトップに立った。
さらに08年の1年間の増加量で見ると、1位は米国の836万KW、2位は中国の630万KW、3位はインドの180万KW、4位はドイツの167万KW、5位はスペインの161万KWだった。
日本は08年の1年間に33万KW増加し、08年末の累積導入量は188万KWとなった。しかし累積導入量で世界13位にとどまり、世界市場シェアも1・6%に過ぎない。欧米での市場急拡大に比べると、日本国内では風力発電所の建設が伸び悩んでいる。
日本では、03年に施行された新エネルギー等利用特別措置法(RPS法)で、電力会社に対して、風力などで発電した電気を一定量販売するように義務付けた。しかし、自然条件に左右されやすい風力発電は、風の吹き方によって発電量が大きく変動するという欠点がある。そして、最大能力で連続して運転することは稀であり、設備利用率は約20%にとどまるという指摘もある。安定供給という点では不安が大きいため、電力会社が風力発電からの購入に慎重な姿勢であることが市場伸び悩みの要因とされている。
さらに国内の風力発電所に関しては、発電機の倒壊や羽根の破損・落下などの事故が相次いだこと、建築基準法改正で耐震性や安全対策の項目が増えて建設コストが上昇していること、生態系保全、騒音問題、低周波音による健康被害への懸念などで、地域住民の反対運動が見られること、風力や風向きの面で風力発電に適した地点が減っていることなども、伸び悩みの要因として指摘されている。
国内の大手風力発電事業者を見ると、1位は東京電力<9501>と豊田通商<8015>が出資するユーラスエナジーホールディングス、2位がJパワー(電源開発)<9513>、3位が日本風力開発<2766>である。各社ともに、国内での新規立地が進まないこともあり、欧州や米国を中心に海外での事業を拡大する方針を打ち出している。国内最大手のユーラスエナジーは、すでにスペインで国内を上回る風力発電能力を保有し、今年1月には米国テキサス州で、国内最大級の約3倍規模となる風力発電所を稼働したことを発表している。
>>風力発電関連銘柄一覧
スマート・グリッドという新インフラ技術に注目! |
世界の風力発電機メーカーの状況を見ると、風力発電の歴史や市場規模を反映する形で、欧米のメーカーが上位を占めている。世界1位はデンマークのヴェスタスで、2位グループには米国のゼネラル・エレクトリック(GE)、ドイツのシーメンス、ドイツのエネルコン、スペインのガメサなどが続いている。日本のメーカーでは、三菱重工業<7011>、富士重工業<7270>、日本製鋼所<5631>などが大型の風力発電機市場に参入しているが、国内最大手の三菱重工業<7011>でも、世界市場シェアは3%弱にとどまっている模様だ。
しかし、政府が風力発電の買い取り制度導入の検討を開始するなど、伸び悩んでいた風力発電の国内市場にも、追い風が吹き始めたようだ。欧州では太陽光発電に限定せず、風力発電についても固定価格での買い取り制度を導入しており、買い取り制度の拡充は世界的な流れとなっている。国内でも同様の制度が導入されれば、風力発電の普及が進む可能性があると見られている。
また次世代型の送電網として、スマート・グリッドというインフラ技術が注目され始めている。スマート・グリッドというのは、電力供給者(発電所など)と電力消費者(企業や家庭など)を通信で結び、送電網に組み込んだ通信・制御システムが、蓄電装置などとも連携して、電力の供給量と需要量を把握・需給調整して、最適な電力供給体制を築く仕組みである。刻々と変化する電力需要に対応して、送電と蓄電を効率的に繰り返すには、スマート・グリッドというインフラ技術が欠かせないとされている。スマート・グリッドの整備が進めば、発電量の変動を吸収しやすくなるため、発電量の不安定な風力発電や太陽光発電の普及を後押しすることが予想されている。米国ではオバマ政権が、環境・エネルギー対策の一環として110億ドルを送電網構築に投入する計画であり、GEやグーグルがスマート・グリッドの普及に向けて活動を活発化させている模様だ。
今から仕込む=注目の大本命銘柄はこれだ! |
注目される関連銘柄としては、風力発電事業者では、ユーラスエナジーホールディングスに出資する東京電力<9501>と豊田通商<8015>、Jパワー(電源開発)<9513>、日本風力開発<2766>がある。また出光興産<5019>は、日本風力開発<2766>と風力発電所を共同運営することで合意した。今後は総合商社の参入も活発になるだろう。
注目される関連銘柄としては、風力発電事業者では、ユーラスエナジーホールディングスに出資する東京電力<9501>と豊田通商<8015>、Jパワー(電源開発)<9513>、日本風力開発<2766>がある。また出光興産<5019>は、日本風力開発と風力発電所を共同運営することで合意した。今後は総合商社の参入も活発になるだろう。
大型風力発電機メーカーとしては、三菱重工業<7011>、富士重工業<7270>、日本製鋼所<5631>が参入している。三菱重工業<7011>は米国向けの拡販を推進している。富士重工業は日立製作所<6501>と共同で、日本特有の風に対応するため、羽根の向きを逆にした独特な設計の風力発電機を開発した。
また工場、港湾、都市部などに適した小型風力発電装置の分野では、シンフォニアテクノロジー(旧神鋼電機)<6507>、川崎重工業<7012>の子会社である日本飛行機などが参入している。その他の風力発電機関連では、大手軸受けメーカーの日本精工<6471>、NTN<6472>、ジェイテクト<6473>が、風力発電機向け大型軸受けの需要拡大を見込んでいる。風力発電機の羽根に使用される炭素繊維では、帝人<3401>、東レ<3402>、三菱レイヨン<3404>の3社が大手である。さらに、世界の風力発電機市場では今後、海上風力発電用の超大型機の時代が始まるとも言われ、耐久性の確保など技術力が一段と問われることが予想されている。
電力の安定供給という課題に対しては、風力発電所に蓄電池を併設する動きが始まっており、風力発電用にナトリウム硫黄(NAS)電池を量産化している日本ガイシ<5333>などが注目されるだろう。またスマート・グリッド関連の動きとして、日本風力開発<2766>は日本ガイシと組んで、スマート・グリッドの実証実験を始める米国の電力大手エクセルエナジー社に対して、風力発電の送電量を蓄電池で調節する技術を提供する。国内では関西電力<9503>が昨年から、通信回線を備えた電力メーターの設置を開始している。さらに電力制御機器関連で日立製作所<6501>、東芝<6502>、三菱電機<6503>、富士電機ホールディングス<6504>、安川電機<6506>、明電舎<6508>、送電線ケーブル関連で古河電気工業<5801>、住友電気工業<5802>、フジクラ<5803>、日立電線<5812>などが考えられるだろう。
●風力発電関連銘柄一覧
コード | 銘柄名 | 市場 | 業種 | 内容 |
---|---|---|---|---|
1721 | コムシスホールディングス | 東1 | 建設業 | 発電システム |
1734 | 北弘電社 | 札幌 | 建設業 | 電気工事・施工 |
1813 | 不動テトラ | 東1 | 建設業 | 電気工事・施工 |
1821 | 三井住友建設 | 東1 | 建設業 | 電気工事・施工 |
1832 | 北海電気工事 | 札幌 | 建設業 | 電気工事・施工 |
1893 | 五洋建設 | 東1 | 建設業 | 電気工事・施工 |
1942 | 関電工 | 東1 | 建設業 | 電気工事・施工 |
1944 | きんでん | 東1 | 建設業 | 発電システム |
1949 | 住友電設 | 東1 | 建設業 | 電気工事・施工 |
1959 | 九電工 | 東1 | 建設業 | 発電所 |
2766 | 日本風力開発 | 東マ | 卸売業 | 発電所 |
3401 | 帝人 | 東1 | 繊維製品 | 発電機器 |
3402 | 東レ | 東1 | 繊維製品 | ブレード |
4063 | 信越化学工業 | 東1 | 化学 | 部品他 |
4217 | 日立化成工業 | 東1 | 化学 | 部品他 |
4675 | エヌエス環境 | JQ | サービス業 | 調査他 |
4739 | 伊藤忠テクノソリューションズ | 東1 | 情報・通信業 | 調査他 |
5001 | 新日本石油 | 東1 | 石油・石炭製品 | 発電所 |
5007 | コスモ石油 | 東1 | 石油・石炭製品 | 発電所 |
5310 | 東洋炭素 | 東1 | ガラス・土石製品 | 部品他 |
5333 | 日本ガイシ | 東1 | ガラス・土石製品 | 蓄電池 |
5343 | ニッコー | 名証 | ガラス・土石製品 | 発電機器 |
5401 | 新日本製鐵 | 東1 | 鉄鋼 | 電気工事・施工 |
5411 | ジェイ エフ イー HD | 東1 | 鉄鋼 | 電気工事・施工 |
5631 | 日本製鋼所 | 東1 | 機械 | ブレード |
5913 | 松尾橋梁 | 東1 | 金属製品 | 電気工事・施工 |
5915 | 駒井鉄工 | 東1 | 金属製品 | 発電システム |
5922 | 那須電機鉄工 | 東2 | 金属製品 | 発電機器 |
6147 | ヤマザキ | JQ | 機械 | 発電システム |
6268 | ナブテスコ | 東1 | 機械 | 部品他 |
6361 | 荏原 | 東1 | 機械 | 発電所 |
6363 | 酉島製作所 | 東1 | 機械 | 発電機器 |
6471 | 日本精工 | 東1 | 機械 | ベアリング |
6472 | NTN | 東1 | 機械 | ベアリング |
6473 | ジェイテクト | 東1 | 機械 | ベアリング |
6507 | 神鋼電機 | 東1 | 電気機器 | 発電システム |
6508 | 明電舎 | 東1 | 電気機器 | 発電所 |
7004 | 日立造船 | 東1 | 機械 | 電気工事・施工 |
7011 | 三菱重工業 | 東1 | 機械 | 発電機器 |
7012 | 川崎重工業 | 東1 | 輸送用機器 | 発電システム |
7013 | IHI | 東1 | 機械 | 電気工事・施工 |
7270 | 富士重工業 | 東1 | 輸送用機器 | 発電システム、発電機器 |
8015 | 豊田通商 | 東1 | 卸売業 | 発電所 |
8088 | 岩谷産業 | 東1 | 卸売業 | 電気工事・施工 |
8131 | ミツウロコ | 東1 | 卸売業 | 発電所 |
8894 | 原弘産 | 大証 | 不動産業 | 発電機器 |
9501 | 東京電力 | 東1 | 電気・ガス業 | 発電所 |
9504 | 中国電力 | 東1 | 電気・ガス業 | 発電所 |
9511 | 沖縄電力 | 東1 | 電気・ガス業 | 発電所 |
9513 | J−POWER | 東1 | 電気・ガス業 | 発電所 |
9532 | 大阪ガス | 東1 | 電気・ガス業 | 発電所 |
提供 日本インタビュ新聞 Media-IR 2009.05 |特集