防災・減災対策、電力不足・節電関連の省エネ促進策 |
今回の東京都知事選は、3月11日に発生した東日本大震災後の被災者救援・支援活動や、東京電力福島第一原子力発電所の事故という非常事態下での選挙となった。このため各候補者ともに、被災地や首都圏の計画停電に配慮して、選挙カーや街頭演説を自粛するなどしたため、盛り上がりを欠いた選挙戦となった。さらに各候補者が公約として、大震災に関連した「防災都市」や「安心・安全」などを打ち出したため、候補者独自の公約が見えにくくなったことも特徴と言えるだろう。
石原慎太郎東京都知事も選挙戦では、公約として「シニアハローワーク設置」や「介護付き住宅の大量供給」などの高齢者・社会福祉関連の政策に加えて、大震災関連として「震災対策」や「危機管理」の重要性を前面に打ち出していた。そして当選の速報を受けて、次の4年間の政策については「これまでと同じことをやるしかない、プラスアルファは災害対策」と述べている。
防災関連については、11日の会見でも「東京が防災都市としてどれだけ強度を持っているのか」との懸念を示し、4期目の課題として建物の耐震化促進など、防災都市機能の強化に取り組む考えを示した。また電力不足・節電問題に対しては、パチンコと自動販売機は大きな電力を使うとして、大量の電力を消費している生活を見直すべきだとの考えを示した。
こうした状況を勘案すると、従来からの政策テーマである教育、少子化、介護、医療、社会福祉、セーフティネットの充実など「安心・安全な社会と暮らし」をキーワードとする政策、さらに東京や首都圏の国際競争力強化、中小企業対策、商店街活性化対策などに加えて、4期目の重点政策課題としては、震災関連の防災・減災対策、電力不足・節電関連の省エネ促進策や太陽光発電の普及促進策などが想定されるだろう。新銀行東京の再建問題、築地市場の移転問題などの課題も残されている。3期目で失敗したオリンピック招致については、復興の成り行き、政府の力量、国民の情熱にかかっているとしたが、日本の復興を世界に示すためにも、再挑戦の可能性があるだろう。
首都圏広域防災計画へ |
なお、東京都が06年5月に作成した「首都直下地震による東京の被害想定」(東京都のホームページ参照)によると、地震発生の震源地、規模、季節、時間帯、風速によって想定被害の規模は異なるが、震源を東京湾北部、地震の規模をマグニチュード7.3、発生時間帯を冬の午後6時、風速を6m/Sと想定した場合には、建物被害は都内建物約270万棟のうち、ゆれ・液状化・急傾斜地崩壊で約12.7万棟が全壊、約34.6万棟が半壊、火災で約31万棟が焼失すると想定している。
人的被害については約5600人が死亡し、約15.9万人が負傷すると想定している。帰宅困難者は、都全体で外出者(都内滞留者)約1144万人のうち約392万人とし、国内・海外からの観光やビジネスでの東京訪問者も含めると、約448万人の帰宅困難者が発生すると想定している。避難者は、発生直後には建物の被災を原因として約287万人、1日後にはエレベーター運転停止や上下水道などの被害により生活支障の影響が大きくなるため約390万人と想定している。
また、東京都は「防災都市づくり推進計画」(95年度策定、03年度改定、10年1月改定)(東京都のホームページ参照)で、市街火災の延焼を防止する延焼遮断帯の整備、緊急輸送道路沿道の建築物や整備地域内の木造住宅の耐震化促進などについて、整備目標と整備方針を定めるとともに、具体的な整備プログラムを定めている。ただし、耐震改修には多額の自己負担を要するなど課題も多いだけに、整備の進捗は遅れている模様である。
また、今回の東日本大震災の地震の規模や被害の大きさが想定以上だったことから、上記の想定より規模の大きい地震の発生に備えて、被害の想定や防災計画の見直しが必要になり、神奈川県、千葉県、埼玉県と連携した首都圏広域防災計画も考えられるだろう。
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関連テーマは防災関連、省エネ関連、高齢者関連が中心 |
石原慎太郎東京都知事の4期目の政策関連テーマとしては、防災・減災対策関連、省エネ・電力対策関連、高齢者対策関連が中心となるだろう。
防災・減災対策関連では、建物の耐震化、東京湾沿岸の浸水対策などが重点となり、国際都市としての競争力を高めるためのインフラ構築なども考慮されるだろう。津波・浸水対策については防潮堤強化よりも、緊急避難場所や緊急避難経路の整備・拡充に重点が置かれるだろう。関連セクターとしては、大手ゼネコン、住宅メーカー、免振・制振装置関連、消防関連などが考えられる。ショーボンドホールディングス(1414)、ミサワホーム(1722)、大成建設(1801)、大林組(1802)、清水建設(1803)、鹿島(1812)、戸田建設(1860)、パナホーム(1924)、大和ハウス工業(1925)、積水ハウス(1928)、日本ERI(2419)、積水化学(4204)、構造計画研究所(4748)、ニッタ(5186)、オイレス工業(6282)、モリタホールディングス(6455)、能美防災(6744)、ホーチキ(6745)、新コスモス電機(6824)などがある。
省エネ・電力対策関連では、省エネ住宅、省エネ家電、太陽光発電などの普及促進策が重点になるだろう。関連セクターとしては、素材や部品を含めれば多岐にわたるが、最終製品段階で見れば、省エネ住宅・住宅建材・住宅設備、省エネ家電、LED照明、太陽光発電、蓄電池、スマートグリッド関連などのセクターが考えられる。ウエストホールディングス(1407)、ミサワホーム(1722)、大和ハウス工業(1925)、積水ハウス(1928)、パナホーム(1924)、積水化学(4204)、TOTO(5332)、住生活グループ(5938)、エヌ・ピー・シー(6255)、東芝(6502)、三菱電機(6503)、大崎電気工業(6644)、ジーエス・ユアサコーポレーション(6674)、パナソニック(6752)、シャープ(6753)、フェローテック(6890)、東光電気(6921)、京セラ(6971)、新神戸電機(6934)、古河電池(6937)などがある。
高齢者対策関連の関連セクターとしては、訪問介護・介護施設事業、介護用器具などが考えられる。やまねメディカル(2144)、セントケア・ホールディング(2374)、日本ケアサプライ(2393)、ツクイ(2398)、メッセージ(2400)、ケアサービス(2425)、メディカル・ケア・サービス(2494)、ワタミ(7522)、ジャパンケアサービスグループ(7566)、フランスベッドホールディングス(7840)、パラマウントベッド(7960)、ベネッセホールディングス(9783)、ニチイ学館(9792)などがある。
提供 日本インタビュ新聞 Media-IR 2011.04 |特集